2018 1/19

IoTソリューション

アジャイル開発でビジネスの変革を支える自社で培ったノウハウと実績で、日本のシステム開発をもっと俊敏に

めまぐるしく変化する市場動向に迅速に対応するシステム開発の手法として、またたく間に世界中に広がった「アジャイル開発」。日本で早くもその手法を導入したKDDIは、蓄積されたアジャイル開発のノウハウを惜しみなく活用し、俊敏な製品開発やサービスの立ち上げを実践している。その全貌に迫る。

KDDI株式会社 技術統括本部 プラットフォーム開発本部 アジャイル開発センター長 上田 茂広

たった3人から始まったKDDIのアジャイルへの取組み

いまやシステム開発における新しい世界標準としての地位を確立した「アジャイル開発」。「アジャイル」(俊敏)という言葉の通り、短い期間でサービスをリリースし、社内外からフィードバックをもらいながら、素早く改善を繰り返していくことでサービスを仕上げていくことが特徴だ。要件定義から開発に着手するまでに大きく時間を要する従来のウォーターフォール型のシステム開発に比べ、期間、費用ともに半分から3分の1程度まで圧縮できるケースもあるという。

また、継続的な技術革新により、エンドユーザーに対して新しいサービス、新しい機能を継続的に提供することが勝敗を分ける時代となっている。サービスを提供する企業も、ソフトウエアの更新によって製品にどんどん新機能を付加していかなければ、コモディティ化は免れない。

その点、サービスを小さくリリースし、改善を重ねながらソフトウエアを開発できるアジャイル開発なら、ユーザーが直接操作するアプリの更新頻度を格段に高められる。UI(ユーザーインターフェース)やUX(ユーザーエクスペリエンス)の向上など、サービス品質を改善し続けることによって顧客満足を上げることも可能だ。世界中のシステム開発の潮流がアジャイル開発に向かっているのも納得である。

KDDIは早くから方針転換をし、2013年にアジャイル開発をスタートした。

プロジェクトリーダーとして名乗りを上げたのは、当時、法人向けのクラウドサービス開発を担当していた現・技術統括本部 プラットフォーム開発本部 アジャイル開発センター長の上田 茂広である。

「当時、海外ではすでにクラウドサービスを提供する多くの企業がアジャイル開発を採用していました。この流れに乗り遅れたら、今後ますます熾烈化するグローバル競争に勝ち残れなくなるのではないかと強い焦りを感じたのです」と上田は振り返る。

とりあえず自分たちも始めてみよう。上田の強い思いのもと、たった3名の社員でプロジェクトは始動する。だが、実際に手掛けてみると、アジャイル開発は想像以上に困難な取り組みであることが分かった。

そもそも、アジャイル開発が短い期間でのリリースと改善を実現できるのは、作業を外部委託するのではなく、要件定義から設計、プログラミング、テストに至るまでを社内で行うからだ。加えて、外部委託を主流としていた企業文化がその取り組みをより困難にしていった。

「一般に外部委託するシステム開発では、一度発注すると完成に至るまでの途中経過をほとんど確認できません。そのため、成果物が提出された時点で大きな問題が発覚すると、工程をかなり後戻りして作り直さなければならなくなることが多いのです。その点、開発を社内で行えば、細かく分けた工程ごとに自分たちで問題をチェックしながら先に進めることができます。結果的に大きな手戻りが減り、開発期間やコストを大幅に圧縮できるわけです。また、開発を外部委託する企業文化であった当社においては、内製化へ舵を切ることは大きな変革でした。社内から内製化についての反発もありましたが、「とりあえずやってみよう」の精神で、3人という小さなチームでの取組から始めていったのです」(上田)

開発期間と費用が3分の1へ。システム開発の常識が変わる

だが、そうしたアジャイル開発のメリットを発揮させるには、社内にシステム開発ができる人材がいなければならない。上田らが苦労したのは、まさにその点であった。

「最初に集まった3人も、システムの設計や、プログラミングを専門としてきた人材というわけではありませんでした。外部から招き入れたエンジニアの力も借りて、プログラミングなどの基本をいちから学びつつ、同時に開発も進めるというやり方で、半年後にどうにか最初のシステムを完成させました」と上田は振り返る。

それから約4年。上田が率いるプロジェクトは2016年10月に「アジャイル開発センター」に改名し、当初の3名から、現在では約16チーム、パートナー含めると国内180名、オフショア(※)20名という陣容にまで拡大した。

同センターはKDDIの各事業部門から依頼を受けたシステム開発を行っている。「当初は社内の法人事業向けのシステム開発が中心でしたが、現在はauユーザーに向けたスマートフォン用アプリなど一般消費者向けの開発も増えています。小さく早くリリースと改善を繰り返すことでサービス品質を向上させるアジャイル開発に対する認識が、社内で広がっていることを実感します」と上田は語る。

スマートフォン用アプリのひとつとしてアジャイル開発センターが手掛けたのが、携帯電話と電気のサービス料金をセットにした『auでんき』の専用アプリである。通常、同様のアプリの開発には約1年を要していたが、アジャイル開発センターはこれをわずか3カ月余りで完成。しかも、開発費と開発のためのインフラコストは従来の約3分の1にまで圧縮できたという。

現在は開発部門のみならず、バックオフィス部門の業務においてもアジャイル開発手法を取り入れ始めているという。KDDIの中では、アジャイル開発の考え方が確実に広がっているようだ。

※オフショア:海外のパートナーとアジャイルチームを組み、リモートで開発を進める手法。

自社で構築した開発ノウハウをもってさまざまな形で法人のお客さまに還元

KDDIは、同センターで蓄積したアジャイル開発のノウハウを、社内で活用するだけでなく、法人のお客さま向けにも提供している。「これまでに10社以上のお客さまをセンターにお迎えし、アジャイル開発についてのレクチャーを行ったり、実際の開発現場をご覧いただいたりしています。また、アジャイル開発を成功させるためには、開発プロセスや企業文化を変革することに加え、何よりも人材育成が重要であると痛感したことも踏まえて、法人のお客さま向けのアジャイル開発セミナーを定期的に開催していますし、KDDIからスタッフを派遣し、お客さま組織内におけるアジャイル開発実践を支援するアジャイル開発教育プログラムも提供しています」と上田は語る。KDDIは自社が蓄積してきたノウハウを惜しみなく社外に提供することで、日本におけるアジャイル開発の活用を側面支援していきたいと考えているようだ。

「例えば自動車や家電など、あらゆるモノをインターネットでつなぐIoT関連のソリューションには、変化のめまぐるしい消費者ニーズに応じて新機能を追加し、UIやUXを改善できる俊敏なシステム開発力が求められます。お客さまがそのようなサービスの開発に着手される場合は、当社も何らかのお手伝いができるのでは、と考えています」と上田は説明する。

法人向けサービス開発においては、KDDIは「お客さま目線」を意識し、法人のお客さまが本当に求めているサービスを提供することで、ビジネスを支援していくという。

「当社では、法人のお客さまに提供するサービスの開発において、お客さまにプロトタイプをお見せし、フィードバックをもらいながら開発を進めています。お客さまからの生の声を伺いながらサービスへと反映させることで、お客さまが本当に必要としているサービスを提供し、お客さまに喜んでいただけることを目標としています。今後も、アジャイル開発センターで培ったノウハウや実績を持って、お客さまの挑戦を全力で支援していきます」

既存のソリューション提供だけにとどまらず、社内サービス開発手法の変革や、開発スキームのノウハウ提供を実践しているKDDI。通信サービスの枠を越えたKDDIのビジネス支援は、着実に広がっている。

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