デザインシンキングを駆使して「DX推進の真の課題」に迫る

国内企業のデジタルトランスフォーメーションへの取り組み状況

Q.貴社におけるDXの状況について、
最も当てはまるものは以下のどれですか?
正社員数500人以上の企業/組織の経営者
管理職を対象
「分からない」とした回答者を除く
出典: IDC Japan, October 2018

デジタルトランスフォーメーション(DX)の成否は、企業の存続をも左右しかねない重要なテーマとなっている。IDC Japanの調査によると、国内企業(正社員/職員数500人以上の、中規模以上の企業/組織)でDXに取り組む企業は、「検討」段階を含めると67%に上る。デジタルを活用してビジネスモデルの抜本的な転換を遂げる事例も増えてきており、DXは全盛期を迎えようとしている、といっても過言ではないだろう。

その一方、PoC(概念実証)の段階で二の足を踏み、実践段階に進めない企業が多いことも明らかになっている。いわゆる“PoC地獄”から抜け出し、DXを推進するためには、越えるべき壁が存在しているのだ。

同社の調査によると、DX推進にあたっての「推進力」とDX実現に対する「抵抗勢力」、いずれの回答でもミドルマネジメントがトップに挙げられており、彼らがDX推進の重要な役割を担っていることが分かる。では、この背景にはどのような要因があるのだろうか。そして、DX推進における真の課題とは何だろうか。

去る3月18日、『DIAMOND Quarterly』(ダイヤモンド社)の主催で、「KDDI DIGITAL GATE」で実施されているデザインシンキングの中の一部の手法を用いて、「DX推進における真の課題」を発見するためのワークショップが行われた。今回は、その様子をご紹介したい。

デザインシンキングを駆使して、DX推進の課題に迫る

KDDI DIGITAL GATEのワークショップの特徴は、デザインシンキングを体系化したプログラムを体験できることにある。KDDI DIGITAL GATEでは、このデザインシンキングを実践するための手法として「デザインスプリント(※1)」を採用し、短期間で潜在課題の発見から仮説構築、プロトタイピング、検証までを実践できる。具体的には下図のとおり、3段階のステップが用意されており、デザインスプリントの手法を用いたワークショップは、「STEP2:Explore(ユーザー体験のデザイン)」に含まれる。

(※1) 米・Google Venturesが開発したスタートアップ向けの商品開発フレームワーク。
デザインシンキングをベースに、5日間でサービスデザインから試作・検証まで行う。

STEP2は、次の5つのステージから構成されており、通常では合計5日間のワークショップに、約1、2カ月間かけて取り組む

【Day1 :理解】ビジョンを共有し、ユーザーに対する理解を深める
【Day2 :発散】ユーザーが抱く不満(ペインポイント)を特定し、ソリューション案をスケッチする
【Day3 :決定】深掘りしたいソリューション案を決定する
【Day4 :試作】ソリューション案のうち、検証したい部分のプロトタイプを作る
【Day5 :検証】ソリューション案で策定した価値がユーザーに伝わるか、検証する

このたび開催された『DIAMOND Quarterly』主催のワークショップでは、上記のうち【Day2 :発散】を中心にデザインシンキングの一端を体験できるプログラムが組まれており、DX推進における自社の課題を見つけ出すことがテーマに設定された。

なお、今回は従業員1,000名以上を擁する大企業の役員・本部長クラスの方と部長クラス(ミドルマネジメント)の方が二人一組で参加する形式が推奨された。日常の業務シーンにおいて、異なる役職間でそれぞれの課題を共有し、お互いの理解を深めることが狙いだ。

潜在課題を見いだすための「3つの問い」

イベント冒頭の基調講演では、一橋大学大学院 国際企業戦略研究科 客員教授の名和 高司氏が登壇。DXの先進事例に対する洞察を述べた上で、「デジタルを使えば何でもできてしまう。だからこそDXを実践するためには、自社の存在意義に立ち返った上で、北極星に当たるMTP(Massive Transformative Purpose)を決めることが欠かせない」と語った。

続いて行われたワークショップでは、3つのフェーズごとに「問い」が用意され、デザインシンキングの手法を用いた議論が行われた。序盤こそ硬さが見られた参加者だったが、ウォームアップの自己紹介などを通じて徐々にリラックスした雰囲気が広がり、議論が活発化していく様子が見て取れた。

1つ目のフェーズで行われたのは「課題の共有」だ。ここでは「あなたにとってのDXとは?」という問いに対して、各自が付箋に意見を書き出し、共有していく。思考する時間と議論する時間を短時間で繰り返す中で、解決すべき課題への理解が深まる仕掛けだ。実際に出された意見には「顧客体験の刷新」や「バリューチェーンの可視化と継続改善」といったコメントが挙げられ、自社とは異なる視点から出された意見に驚きの表情を浮かべる参加者も見られた。

2つ目のフェーズでは「課題の深掘り」を行うべく「DX推進における自社の課題は何か?」という問いが投げかけられた。この問いの狙いは、参加者同士で共有した課題を自社が抱える課題に置き換えて発想することだ。ここでは「トップから現場に浸透していない、現場からトップに上がっていない」や、「リーダーシップの不足」、「社内専門人材・社内推進人材の不足」、「適切なパートナーを見つけられていない」、「失敗を許容する文化ではない」、「導入効果が説明できない」といった意見が出され、各社が直面する壁が浮かび上がってきた。

3つ目のフェーズでは「“答えるべき問い”の発散」という観点で議論が進められ、前のフェーズで出された課題を基に「解決すべき真の課題」についてディスカッションされた。「どうしたら我々は~できるのか?」、という形で問いを言語化し、課題の本質に迫ることが目的だ。ここでは、「どうしたら我々はミドルマネジメント層の意識改革ができるのか?」や「どうしたら我々はDXの必要性を上層部に理解してもらえるのか?」、「どうしたら我々はDXにフィットした組織体制をつくれるのか?」、「どうしたら我々は失敗を恐れることなくトライ&エラーができるのか?」というように、当初とは異なる視点からの意見が目立った。

3つ目の問いを経て明らかになったことは、DXの実現に向けては「複数領域の変革」が不可欠ということである。

この結果を見てのとおり、DX推進の課題は経営レイヤーから現場に至るまで点在している。だからこそ、トップとビジネスの現場をつなぐミドルマネジメントによる、各課題の統合的な解決に向けたアクションが欠かせない。まさに、日本企業特有の「ミドルアップダウン」こそが、DXを強力に推し進めるカギとなる。今回の結果からは、そのような見方ができるのではないだろうか。

DX推進の課題を明確化し、共創の実現へ

数あるワークショップの中でも、今回のようにトップとミドルマネジメントの両者に働きかける取り組みは珍しい。参加者へのアンケートを見ても、ワークショップ全体の評価を「満足」とした参加者が90%を占め、DX推進における課題への認識についても、86%の参加者がより明確になったと回答するなど、ポジティブな評価が目立つ。

アンケートの結果から見ても、デザインシンキングをDX推進の課題設定に応用するアプローチは、課題の背景に迫る上で有効な手法だといえるだろう。

今回のワークショップではDX推進の課題に焦点を当てたが、実際のDXは、机上の空論では進まない。課題の本質を見極め、仮説を基に最小限のプロトタイプを短期間で創り、検証・改善するサイクルを素早く繰り返す、トライ&エラーを実践する場がDX推進には欠かせないのだ。

5G/IoT時代のビジネス開発拠点であるKDDI DIGITAL GATEは、まさにそのトライ&エラーを実践できる場である。ワークショップの開催にとどまらず、先進的なテクノロジーを持つプロフェッショナル集団との共創や、高速通信を担うインフラはもちろん、さまざまな技術要件が求められるビジネスソリューションの構築をワンストップで支援する体制を整えている。受注前の段階で、価値仮説の構築、プロトタイプ開発、レビューまでを1日で行う「1 Day Sprint」という試みも始めている。DXを一歩前進させるための場所として、KDDI DIGITAL GATEを活用してほしい。

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