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デザインシンキングを駆使して「DX推進の真の課題」に迫る

デザインシンキングを駆使して「DX推進の真の課題」に迫る

国内企業のデジタルトランスフォーメーションへの取り組み状況

デジタルトランスフォーメーション (DX) の成否は、企業存続をも左右しかねない重要テーマとなっている。IDC Japanの調査によると、国内企業 (正社員職員数500人以上の、中規模以上企業組織) でDXに取り組む企業は、「検討段階を含めると67%に上る。デジタル活用してビジネスモデル抜本的転換を遂げる事例も増えてきており、DXは全盛期を迎えようとしている、といっても過言ではないだろう。

その一方、PoC (概念実証) の段階で二の足を踏み、実践段階に進めない企業が多いことも明らかになっている。いわゆる“PoC地獄”から抜け出し、DXを推進するためには、越えるべき壁が存在しているのだ。

同社調査によると、DX推進にあたっての「推進力」とDX実現に対する「抵抗勢力」、いずれの回答でもミドルマネジメントトップに挙げられており、彼らがDX推進重要役割を担っていることが分かる。では、この背景にはどのような要因があるのだろうか。そして、DX推進における真の課題とは何だろうか。

去る3月18日、『DIAMOND Quarterly』 (ダイヤモンド社) の主催で、「KDDI DIGITAL GATE」で実施されているデザインシンキングの中の一部手法を用いて、「DX推進における真の課題」を発見するためのワークショップが行われた。今回は、その様子をご紹介したい。

全社的な戦略テーマとしてすでに実践 (17.8%) 部門単位ですでに実践 (16.3%) 全社的な戦略テーマとして試験的実施 (9.2%) 部門単位で試験的に実施 (12.1%) 検討中 (11.7%) 情報収集中 (7.9%) 特に何も行われていない (25.0.%)

Q.貴社におけるDXの状況について、
最も当てはまるものは以下のどれですか?

正社員数500人以上の企業/組織の経営者
管理職を対象
「分からない」とした回答者を除く
出典: IDC Japan, October 2018

デザインシンキングを駆使して「DX推進の真の課題」に迫る

KDDI DIGITAL GATEのワークショップ特徴は、デザインシンキング体系化したプログラム体験できることにある。KDDI DIGITAL GATEでは、このデザインシンキング実践するための手法として「デザインスプリント (※1) 」を採用し、短期間潜在課題発見から仮説構築プロトタイピング検証までを実践できる。具体的には下図のとおり、3段階ステップ用意されており、デザインスプリント手法を用いたワークショップは、「STEP2:Explore (ユーザー体験デザイン) 」に含まれる。

図表:KDDI DIGITAL GATEでベースとなる3つのステップ。 STEP1:Learn (1、2時間) 気づく・体感する。デモや最新のテクノロジーを実際に見ることで、発想を拡大させ、サービスイメージを醸成する。 STEP2:Explore (4~6週) ユーザー体験をデザインするMVPを決定する。ユーザーインタビューやワークショップを通じて、課題を解決する顧客価値やソリューション仮説 (MVP:Minimum Viable Product) を決定。検証可能なプロトタイプをつくり、実際のユーザーを対象に評価を行う。 STEP3:Build/Validate (8~12週) プロトタイプを構築する検証と改良を繰り返す。バックエンドやCI/CD (継続的統合およびデリバリー) 環境などのインフラも含め、実際に動作するプロトタイプを構築。技術的実現性、顧客価値、ビジネス性について評価を行う。
(※1) 米・Google Ventures が開発したスタートアップ向けの商品開発フレームワーク。
デザインシンキングをベースに、5日間でサービスデザインから試作・検証まで行う。

STEP2は、次の5つのステージから構成されており、通常では合計5日間ワークショップに、約1、2カ月間かけて取り組む

【Day1 :理解ビジョン共有し、ユーザーに対する理解を深める
【Day2 :発散ユーザーが抱く不満 (ペインポイント) を特定し、ソリューション案をスケッチする
【Day3 :決定深掘りしたいソリューション案を決定する
【Day4 :試作ソリューション案のうち、検証したい部分プロトタイプを作る
【Day5 :検証ソリューション案で策定した価値ユーザーに伝わるか、検証する

このたび開催された『DIAMOND Quarterly』主催ワークショップでは、上記のうち【Day2 :発散】を中心デザインシンキング一端体験できるプログラムが組まれており、DX推進における自社課題を見つけ出すことがテーマ設定された。

なお、今回従業員1,000名以上を擁する大企業役員本部長クラスの方と部長クラス (ミドルマネジメント) の方が二人一組参加する形式推奨された。日常業務シーンにおいて、異なる役職間でそれぞれの課題共有し、お互いの理解を深めることが狙いだ。

潜在課題を見いだすための「3つの問い」

イベント冒頭基調講演では、一橋大学大学院 国際企業戦略研究科 客員教授名和 高司氏登壇。DXの先進事例に対する洞察を述べた上で、「デジタルを使えば何でもできてしまう。だからこそDXを実践するためには、自社存在意義に立ち返った上で、北極星に当たるMTP (Massive Transformative Purpose) を決めることが欠かせない」と語った。

続いて行われたワークショップでは、3つのフェーズごとに「問い」が用意され、デザインシンキング手法を用いた議論が行われた。序盤こそ硬さが見られた参加者だったが、ウォームアップ自己紹介などを通じて徐々にリラックスした雰囲気が広がり、議論活発化していく様子が見て取れた。

1つ目のフェーズで行われたのは「課題共有」だ。ここでは「あなたにとってのDXとは?」という問いに対して、各自付箋意見を書き出し、共有していく。思考する時間議論する時間短時間で繰り返す中で、解決すべき課題への理解が深まる仕掛けだ。実際に出された意見には「顧客体験刷新」や「バリューチェーン可視化継続改善」といったコメントが挙げられ、自社とは異なる視点から出された意見に驚きの表情を浮かべる参加者も見られた。

2つ目のフェーズでは「課題深掘り」を行うべく「DX推進における自社課題は何か?」という問いが投げかけられた。この問いの狙いは、参加者同士共有した課題自社が抱える課題に置き換えて発想することだ。ここでは「トップから現場浸透していない、現場からトップに上がっていない」や、「リーダーシップ不足」、「社内専門人材社内推進人材不足」、「適切パートナーを見つけられていない」、「失敗許容する文化ではない」、「導入効果説明できない」といった意見が出され、各社直面する壁が浮かび上がってきた。

3つ目のフェーズでは「“答えるべき問い”の発散」という観点議論が進められ、前のフェーズで出された課題を基に「解決すべき真の課題」についてディスカッションされた。「どうしたら我々は~できるのか?」、という形で問いを言語化し、課題本質に迫ることが目的だ。ここでは、「どうしたら我々はミドルマネジメント層の意識改革ができるのか?」や「どうしたら我々はDXの必要性上層部理解してもらえるのか?」、「どうしたら我々はDXにフィットした組織体制をつくれるのか?」、「どうしたら我々は失敗を恐れることなくトライ&エラーができるのか?」というように、当初とは異なる視点からの意見目立った。

3つ目の問いを経て明らかになったことは、DXの実現に向けては「複数領域変革」が不可欠ということである。

この結果を見てのとおり、DX推進課題経営レイヤーから現場に至るまで点在している。だからこそ、トップビジネス現場をつなぐミドルマネジメントによる、各課題統合的解決に向けたアクションが欠かせない。まさに、日本企業特有の「ミドルアップダウン」こそが、DXを強力に推し進めるカギとなる。今回結果からは、そのような見方ができるのではないだろうか。

DX推進の課題を明確化し、共創の実現へ

数あるワークショップの中でも、今回のようにトップミドルマネジメント両者に働きかける取り組みは珍しい。参加者へのアンケートを見ても、ワークショップ全体評価を「満足」とした参加者が90%を占め、DX推進における課題への認識についても、86%の参加者がより明確になったと回答するなど、ポジティブ評価目立つ。

「セミナー全体の「満足度」をお聞かせください」という質問に対して、「満足」と回答した参加者が全体の90%。「セミナーを通して、 DX推進における課題は参加前よりも明確になりましたか?」には86%の参加者がより明確になった、と回答した。

アンケート結果から見ても、デザインシンキングをDX推進課題設定応用するアプローチは、課題背景に迫る上で有効手法だといえるだろう。

今回ワークショップではDX推進課題焦点を当てたが、実際のDXは、机上空論では進まない。課題本質見極め、仮説を基に最小限プロトタイプ短期間で創り、検証改善するサイクル素早く繰り返す、トライ&エラー実践する場がDX推進には欠かせないのだ。

5G/IoT時代ビジネス開発拠点であるKDDI DIGITAL GATEは、まさにそのトライエラー実践できる場である。ワークショップ開催にとどまらず、先進的テクノロジーを持つプロフェッショナル集団との共創や、高速通信を担うインフラはもちろん、さまざまな技術要件が求められるビジネスソリューション構築ワンストップ支援する体制を整えている。受注前段階で、価値仮説構築プロトタイプ開発レビューまでを1日で行う「1 Day Sprint」という試みも始めている。DXを一歩前進させるための場所として、KDDI DIGITAL GATEを活用してほしい。

記事内部署名役職取材当時のものです。