日経BP総研 イノベーションICTラボ主催セミナー/デジタル変革フォーラム IoT活用で未来を拓け IoTで新たなビジネス/サービスを創出するには - 2/2

飯田 遠隔監視や自動農機の分野では5Gへの期待も大きいですね。現状の2.4GHz Wi-Fiは100~200m程度しか電波を飛ばせない。広範囲の遠隔監視や制御を確実に行うためには、低遅延で高速にデータを流す5Gが不可欠になります。自動運転では前方に人や障害物がいるという判断をAIと5Gを組み合わせてリアルタイムに制御できますし、リモートセンシングドローンでも、スペクトルカメラで広範囲の生育情報を短時間で収集・分析するため、AIをエッジ(現場にあるパソコン)で動かして画像認識するといった仕組みも構築できます。

KDDI株式会社
ビジネスIoT推進本部 ビジネスIoT企画部長
原田 圭悟

原田 確かにIoTとAIは非常に親和性が高いですね。今後は5Gの進展で動画像データのAI活用がどんどん進んできます。LTEによるテキストデータの分析も合わせながら、あらゆる産業でIoTソリューションの可能性が広がってきているかと思います。

桔梗原 セキュリティの確保も成功に向けて避けて通れないポイントですね。

金谷 数年前からIoT機器に感染するマルウェア攻撃が世界各地で発生し、大手企業のサービスが妨害されたり、組織のシステムがダウンしたりするなど深刻な被害が相次いでいます。IoTによってセンサーのデータが大量に得られるようになると、誰がその情報にアクセスでき、誰が所有権を持つのかといった議論も出てきます。

飯田 農業データの取り扱いに関して昨年、農林水産省が「農業分野におけるデータ契約ガイドライン」を策定しました。当社でもそれに基づいたセキュリティ強化に力を入れています。自社データとお客さまデータを確実に守ることは、IoT活用を進めるあらゆる企業に課せられた課題です。

原田 セキュリティ強化では、IoTデバイスからの暗号化に加え、クラウドとも連携できる閉域網を使ったセキュアなネットワーク接続が重要なポイントになります。KDDIでも、お客さまのIoT活用シーンに合わせた高信頼の閉域網サービスを提供しています。

桔梗 もう1つ、IoT導入を成功させるための重要なファクターとして「人材」もあると思います。

株式会社アイ・ティ・アール
取締役 リサーチ統括ディレクター
プリンシパル・アナリスト IoTエキスパート
金谷 敏尊氏

金谷 当社の調査でも同様の結果が出ています。「IoTに関する社内スキルの不足」「市場のソリューションが十分に把握できていない」「社内制度や組織の壁によりイノベーションを進めにくい」といった回答が非常に多くなっています。

飯田 IoT人材の確保は当社にとっても課題の1つです。新しくできたIoT部門では、キャリア採用も含めて強化しています。とはいえIoTの知識だけでは即戦力とはなりません。前職のビジネスモデルと当社のビジネスモデルが全く違うケースが多いため、お客さまニーズの細部にこだわった提案や開発がすぐには行えないからです。そこで現場とのコラボレーションを強化するとともに若手のワイガヤ研修や、業務ローテーションを考慮した育成プログラムも組んでいます。

原田 KDDIも多様なお客さまの課題と向き合い、その課題解決を一緒に考えるパートナーとなるために、ソリューション提案力に磨きをかける人材育成に取り組んでいます。IoT先進国のノウハウを取り入れた研修などに加え、各部門から集まったメンバーが、お客さまへのDX提案事例、成功事例などを共有し議論を重ね、どのような形でお客さまのデジタル変革に貢献できるのか、一人一人の意識改革も含めてチャレンジしています。

新ビジネス・サービスを生み出すにはどうすればよいか

桔梗 これから企業が新しいビジネスやサービスを生み出すにはどうしたらいいのか、何かアドバイスをいただけますか。

金谷 やはりリーンスタートアップを行いやすい組織に変革していくことが必要です。最小限の機能に絞ったプロトタイプで仮説検証を繰り返すアジャイル的な手法でないと、革新的なビジネスモデルは生み出せません。また限られたメンバーでいくらアイデア出しのブレストをしても、周りを気にして型にはまった意見しか出てこない。外部の知見も取り入れた新しい発想の場を設けることが大切です。

飯田 これからの企業は「イノベーションなくして成功なし」だと常々考えています。新しい技術が世の中にどんどん生まれ、常に進化し、海外企業はそれを積極的に活用してイノベーションを起こしています。欧米や豪州では既に「精密農業がなければ農業はできない」と農家の皆さんは実感しています。そうした海外の成功事例は、多少形態は違っても日本の農業にも必ず当てはまります。お客さまが何に悩んでいるか、何を望んでいるのかをしっかり見据え、その中でどう新しい価値を提供していくかを議論することが、ビジネス変革の第一歩になるはずです。

原田 日本企業はどうしても既存ビジネスのコスト削減などに目を向けがちですが、やはり新しいビジネス創出にこそ目を向けないとグローバル競争では勝ち抜けません。もともと日本には強い技術を持った製造業が多い。IoTやAIを使って、もう一押ししたら、必ず世界で通用するものが生まれてきます。そういった新しい競争力のある製品、ビジネスをお客さまと一緒に生み出していきたいというのが、われわれの強い想いです。

桔梗 日本企業が市場変化に機敏に対応し、新たな可能性にチャレンジしていくには、やはりデジタル変革が欠かせない要件となりそうですね。本日は、ありがとうございました。

【Column1】クボタが挑む「次世代スマート農業」

株式会社クボタ
特別技術顧問 工学博士
飯田 聡氏

農機メーカーである当社は、食料・水・環境に関する地球規模の課題解決と新たな価値創造に向け、ICT・IoTを活用したイノベーションを積極的に推進しています。その1つが「スマート農業」です。日本では農業人口が大幅に減少・高齢化する一方で、10ha以上のプロ農家(担い手農家)が増加しています。担い手農家の課題は、多数圃場の管理と生産コストの削減、高付加価値なブランド化が中心です。そこで、求められる作物を必要量だけ収穫できるデータ活用の「精密農業」と、自動化による超省力化を実現する「スマート農業」が必要になります。

その基盤となるのが「KSAS(クボタ スマートアグリシステム)」です。KSASは農業機械とICT・IoTを利用して“儲かるPDCA型農業”を実現するためのサービス。具体的には収量や食味などの情報を収集できる「KSAS農機」、その情報から作業日誌を作成する「KSASモバイル」、農作業情報を蓄積・分析する「KSASクラウド」で構成されます。このサービスによって、稲作機械と圃場地図とのデータ連携による精密農業が実現可能です。実際、新潟県における3年間のモニターテストでは15%の増収効果と品質向上を達成しました。また、機械の稼働情報をリアルタイムに把握したメンテナンス提案で作業停止リスクを最小化するサービスにも役立てています。

一方、自動化による超省力化では、2015年にステアリングを自動化する大型トラクタ、2016年にはGPS直進キープ機能付きの田植機、2017年には他社に先がけて有人監視の下での無人運転トラクタ(アグリロボ)をリリースし、現場の省力化と効率化に貢献しています。現在は広範囲の生育データを取得するドローンによるリモートセンシングやAIによる高度営農支援システムの構築に加え、KSASと連携した完全自動・無人化農機の開発を進めています。

【Column2】5G・IoTが実現するビジネスインパクト

KDDI株式会社
ビジネスIoT推進本部 ビジネスIoT企画部長
原田 圭悟

KDDIは通信キャリアとしての事業を展開しつつ、IoT分野でも先行的な取り組みを進めてきました。その歴史は2001年以来15年に及びます。まだIoTという言葉が使われる前のM2Mと呼ばれていた時代から、セキュリティサービスやテレマティクス、ホームセキュリティ、スマートメーターなど数多くの分野で実績を重ねてきました。ここで培ったノウハウと新技術で企業のIoTビジネスをサポートしていきます。

KDDIではさまざまな業種の企業のDXを支援するため、「クラウド・データ活用」「通信ネットワーク」「センサー・デバイス」という3つのレイヤーでワンストップのIoTソリューションを展開しています。中核となる通信ネットワークでは従来のLTEに加え、「高速・大容量」「低遅延」「多接続」という特長を備えた5Gの登場が間近に迫っています。IoTではテキストデータがメインでしたが、5Gでは高精細な動画データのやりとりが可能となります。これにより自由視点のVRや自動運転、遠隔操作といったソリューションが実現可能となり、ビジネスへの適用範囲が格段に広がります。当社でも既に、高精細映像のリアルタイム伝送による建機の遠隔操作など、5G活用の実証実験も進めています。

こうした5G・IoTソリューションの迅速な提供に向け、2000種類ものセンサーに対応し、収集したデータをクラウドで分析・可視化する「KDDI IoTクラウド Standard」、アジャイル開発を支援する「KDDI IoTクラウド Creator」、多彩な5GアプリケーションやAIなども一括して支援できるのがKDDIの大きな強みです。今後もKDDIは5G・IoTビジネスに必要な技術要素を網羅し、短期間・低コストでの開発と事業化を支援していきます。

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