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3つの「勝ちパターン」の作り方
5Gビジネスでマネタイズする

3つの「勝ちパターン」の作り方

5G/IoT時代のビジネスは、ビッグデータを集めるだけでなく、そのデータをどのように利活用して収益につなげるかがカギになる。「超高速」「低遅延」「多接続」という5Gの特長を活かしたマネタイズへの道筋とは何か。新たな収益モデルを立ち上げる際の企業の課題と解決策も含めて、KDDI ビジネスIoT推進本部 ビジネスIoT企画部 部長の原田圭悟に話を聞いた。


5Gで急増するデータをビジネスに結び付けるには

──5G時代の到来が目前に迫ってきました。IoTのビジネスでは4G時代と比べ、より多くのデータが収集できるようになるといわれていますが、具体的にはどのような変化が起こるのでしょうか。

原田 4G時代のIoTでやりとりされるのはテキストデータが中心でした。しかし通信速度が約100倍となり、遅延が少なくなる5G時代では、より大量のテキストデータに加え、高精細な映像データのリアルタイムなやりとりが可能となります。これにより、自由視点のVRや自動運転、遠隔医療、遠隔操作、そして映像データを分析して価値を見出す新たなソリューションなどが実現でき、ビジネスへの適用範囲が格段に広がります。

KDDI株式会社
ビジネスIoT推進本部
ビジネスIoT企画部 部長

原田 圭悟

──BtoB、BtoC領域に与えるインパクトが非常に大きくなるわけですね。

原田 ただし、5GとIoTが産業や社会のインフラとなっていく時代では、単にビッグデータを集めるだけでなく、それを使ってどのように収益に結び付けていくかが重要です。国内外でマネタイズに成功している事例を分類すると、「故障抑止や効率化など自社業務の改革とコストダウンによる利益創出」「商品・サービスの価値向上による売り上げ・利益の創出」「収集したデータの外販による売り上げ・利益の創出」という、大きく3つのパターンに分けられます。

──それぞれのパターンで、企業がどのように収益を上げることができるのでしょうか。

原田 まずベーシックな収益モデルとなるのが「自社業務の改革とコストダウン」です。例えば製造業なら、工場の製造機器にセンサーを付け、稼働状況をデータで把握・分析することで、機器や部品の交換時期などを早期に予測するような施策です。特に5Gでは従来以上にAIの映像/画像分析が使いやすくなり、カメラ映像から工場の異常検知を行うことなども容易になります。これによりラインの稼働率を上げ、収益ロスや修理コストを最小化し、工場の無人化にも貢献できるようになります。

次に「商品・サービスの価値向上」ですが、これはメーカーからエンドユーザーまでのサプライチェーン上で、自社商材の稼働状況や在庫・欠品などをリアルタイムに把握し、売上や利益を創出する取り組みとなります。例えば、ある空調メーカーのお客さまでは、納品した業務用エアコンを遠隔から監視し、消し忘れはないか、省エネ運転ができているかといった運転状況の見守りに加え、異常発生時のメール通知と迅速な修理対応などを行い、ユーザーに新たな価値を提供しています。これはKDDIとお客さまとの共創で、従来の売り切りモデルをリカーリングモデルへ進化させた事例の1つで、買い替え需要や売上の大幅アップにつながっています。またタクシーの配車支援システムにおいてもau人口動態データを組み合わせることで、乗車需要が大きい場所を予測でき、乗車率の向上と利用者の待ち時間低減につなげることが可能です。

3つ目の「データの外販」は、お客さまが保有するIoTデータと、その潜在的ニーズを持つ企業をマッチングさせ、KDDIのデータ分析などを加味することで売上や利益を創出する取り組みです。例えば、デジタルタコグラフや車載カメラを提供する車載器メーカーさまとKDDIの共創では、もともと路面の速度表示と大型車の実速度を比較してオーバースピードを検知するために取得していた情報を、「KDDI IoTクラウド Data Market」によって交通事故の潜在的な危険箇所を把握できる情報へと加工し、工事箇所の選定に活用できる情報を求めていた自治体に外販しています。このようにIoTデータは工夫次第で、異業種のお客さま同士をマッチングさせながら、新たな気付きや付加価値を生むエコシステムを構築することができます。

──そのような収益モデルを立ち上げる際、企業の課題となるのはどのようなことでしょうか。

原田 日本企業がIoTに取り組む際には、センサーからデータを収集するまでの部分に力を入れすぎて、「収益をどう上げていくか」の視点がないがしろにされているケースが少なくありません。そのためPoCまで進んでも、本格的な商用化に至らないことが多いのです。欧米ではIoTをビジネスモデルの変革や製品・サービスの強化といった“攻めのIT”と捉えますが、日本では業務改善やコスト削減といった“守りのIT”に目を向けがちです。ビジネスチャンスが広がる5G時代に向け、どうやったらIoTで収益を上げられるのか、しっかりと考える視点を持つことが重要な課題になるでしょう。

あらゆるニーズに対応する5G/IoTソリューションを展開

──その課題解決に向けて、KDDIではどのような価値を提供できるのでしょうか。

原田 先ほどもいくつかの共創事例をご紹介しましたが、KDDIはお客さまと一緒にデジタル変革への課題を洗い出し、新しい収益モデルを創造、推進していくパートナーになりたいと考えています。そこで、IoTに関する専門部隊を設置し、お客さまのビジネスモデル策定から事業化までを一気通貫で支援できる体制を整えています。5G/IoT時代のビジネス開発拠点として2018年5月に設立した「KDDI DIGITAL GATE」は、既に200社を超える企業にご利用いただき、数多くの課題解決や新規ビジネスの創出をサポートしています。また、さまざまな業種のお客さまが新しいビジネスをスムーズに展開できるように、「データ活用クラウド」「通信ネットワーク」「センサー・デバイス」という3つのレイヤーで構成されるトータルな5G/IoTソリューションを展開しています。

──5G/IoTソリューションの全体像について教えてください。

原田 まず上位レイヤーの「データ活用クラウド」では、豊富な種類のセンサーから収集したデータをクラウドで分析・可視化する「KDDI IoTクラウド Standard」、アジャイル開発を支援する「KDDI IoTクラウド Creator」、「KDDI IoTクラウド Data Market」などをラインアップしています。中核となる「通信ネットワーク」では、これまでのLTEやLPWA、IoT世界基盤に加え、「au5G」サービスを2020年3月から開始する予定です。5Gを活用したビジネスに備え、実証実験も積極的に進めています。

例えば、駅ホームに設置した防犯カメラと見回りロボットから集めた映像をAIで分析し、従来の低画質映像では発見できなかった刃物や不審者の動きを検知する「危険予知支援システム」、高精度な3次元計測センサーで取得した大量データを5Gで伝送する「産業用ロボットの制御実験」、また、大林組さまとは高精細映像の伝送によって「建機の遠隔施工」の作業性を向上させることにも成功しました。IoTでは、多様なモノのデータを収集するセンシング環境の整備も重要なポイントですが、何をどう選べばよいかでお悩みになるお客さまが非常に多い。そこで「センサー・デバイス」のレイヤーでは、温湿度や位置情報、振動計、騒音計、熱感知、監視カメラなど2000種類以上のセンサー機器を取り揃え、すぐにビジネスを開始していただくことができようにしています。

──通信を核に、トータルにIoTのビジネスをカバレッジしているわけですね。

原田 はい。さらにIoT活用の敷居を下げるため、この3つのレイヤーを組み合わせ、すぐに使っていただける「用途別パッケージ」も提供しています。例えば「KDDI IoTクラウド ~工場パッケージ~」は、収益モデルの1つである「自社業務の改革とコストダウン」を製造業向けに提供するものです。工場の生産設備の状態をセンサーデータとして収集し、AI分析することで、点検に関わる作業工数の削減や、設備故障を未然に防ぐことによる生産性向上など、一気通貫でのスマートファクトリー化を支援します。また、あらゆる業種で効果を発揮するのが「KDDI IoTクラウド ~トイレ空室管理~」と「KDDI IoTクラウド ~トイレ節水管理~」です。オフィスや工場のトイレの空き状況をスマートフォンなどからリアルタイムに確認できるほか、正確な水量調整によって40~50%の節水が可能となり、地球環境にも優しい大幅なコスト削減が図れます。

5G/IoT時代のビジネス変革を常にリードしていく

──どうしてKDDIは、このように全方位的なIoTビジネスを展開できるのでしょうか。

原田 KDDIは20年ほど前から、さまざまなお客さまのビジネス革新を支援するため、多様なM2M/IoTのソリューションを提供してきました。そこで培ってきたナレッジやノウハウがベースにあるのはもちろんですが、IoT先進国のノウハウを取り入れた研修やベンチャーとの協業、さらにフロントに立つ営業やSEにも専門領域に止まらない幅広いテクノロジーや業務の知見を学ばせることで、多様なお客さまの課題と向き合い、ソリューション提案力に磨きをかける人材育成に取り組んできた成果も大きいと思います。これからもKDDIは、パートナー企業と一体となったソリューション開発や、データ活用による新たなイノベーションを支援するエコシステムによって、5G/IoT時代のビジネス変革を常にリードしていく存在でありたいと考えています。