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MaaS×5Gで観光にDXを起こす「沖縄CLIPトリップ」
~ResorTech Okinawa (おきなわ国際IT見本市) レポート~

MaaS×5Gで観光にDXを起こす「沖縄CLIPトリップ」

2020年2月5~6日に沖縄県那覇市で開催された「ResorTech Okinawa おきなわ国際IT見本市」。「リゾート×IT」をコンセプトに、観光産業とICT関連産業の活力を成長エンジンとして、全産業の発展、そして豊かな地域社会実現を目的として開催される見本市で、ここにKDDIブースを出展。モビリティーを単なる移動手段ではなく、ICTを活用した新たなサービスとして捉える考え方「MaaS(Mobility as a Service)」の具現化を示した。

「UNLIMITED WORLD」に寄せる期待

プレゼンテーションに登壇した次世代基盤整備室 前田大輔は、5G時代を「UNLIMITED WORLD」と表現した。速度や通信容量の制限がない世界で、新しいサービス、価値を創造するためのプラットフォームを提供することを使命としている。

「5Gは日本の産業を変革するIT基盤(インフラ)であり、あらゆるデバイス、モジュール、センサーをつなぐことで、様々な業界にDXを起こすことが出来ます。我々が特に注力している領域の一つが交通、物流。MaaS×5Gで、イノベーションを創造するお手伝いをしていきたいと考えています」(前田)

KDDI株式会社 経営戦略本部 次世代基盤整備室長 前田 大輔 (2020年3月時点)
KDDI株式会社 経営戦略本部
次世代基盤整備室長
(2020年3月時点)

 前田 大輔

KDDI株式会社 経営戦略本部 次世代基盤整備室 グループリーダー 松浦 年晃 (2020年3月時点)
KDDI株式会社 経営戦略本部
次世代基盤整備室 グループリーダー
(2020年3月時点)

松浦 年晃

では、MaaS×5Gでモビリティーはどう進化するのか。担当する松浦年晃は「あくまでも1つの未来予測」と前置きした上で、次のように述べた。

「5Gのネットワークが構築されると、今、路上を走っているクルマから様々な情報を得ることができます。例えば、ドライブレコーダーの画像を集約することで“リアルタイムのグーグルマップ”ができるかもしれません。渋滞しているといっても、リアルタイムの画像を確認して右車線の混雑具合が穏やかだったら、そちらに誘導できるでしょう。超高速・超低遅延・多数同時接続の5Gでモビリティーは大きく変わり、特に超低遅延という特性は自動運転を実用化するために欠かせないもの。当社もいろいろなチャレンジを計画しています」

観光型MaaSアプリ「沖縄CLIPトリップ」

KDDIが2月4日からリリースを開始したアプリ「沖縄CLIPトリップ」は、モーダルシフト(注1)を含めた観光MaaSの実装に向けた社会実験の一つ。

インバウンド需要の高まりを背景に、沖縄への観光客は年々増加し、2019年度には1000万人に達した。一方で、観光客増に伴い、空港から観光地までの渋滞、観光地の混雑などの課題が浮き彫りになっている。この課題解決につながる観光型MaaSの実用性を実証するのが本アプリの狙いだ。

このアプリの特徴は、マルチモーダルルート探索(注2)に加え、沖縄観光記事と交通機関、観光施設、飲食店などの情報を連携させ、アプリ1つで移動と観光がシームレスにつながるところにある。従来は、観光情報の検索と経路探索、決済を別々に行っていたが、「沖縄CLIPトリップ」アプリではワンストップでOKになる。そのスキームはどのようなものか、松浦が説明する。

「アプリ内の観光記事を見て、行きたい施設、アクティビティがあればその場で予約。そのままルート探索もでき、徒歩、ゆいレール(沖縄都市モノレール)、タクシーを含めた複数の移動ルートが表示されます。ゆいレールならデジタルチケットが購入でき、タクシーならボタンを押せば配車が完了し、支払いはクレジットカードで行われるためキャッシュレスです。食べログとも連携しており、近隣の飲食店情報にルートがセットで提供されるため、お店選びの幅が広がります。シームレス、キャッシュレスがポイントです」

  • 注1) モーダルシフト: 貨物や旅客の輸送手段転換を図ること。
    注2) マルチモーダルルート探索: 性質の異なる移動手段を組み合わせ、出発地から目的地まで最適なルート探索をすること。

写真から直感的に行ってみたい場所・やってみたいアクティビティを選択して予約可能。
その場所までの移動手段の検索から予約、決済までシームレスに行うことができる。
検索・予約だけでなく、決済までアプリで可能になれば利便性は格段に上がるはずだ。
現在は日本語対応のみだが、今後は多言語対応を進め、外国人旅行者の快適な旅のサポートを目指す。

沖縄から全国へ、観光型MaaSを「拡張」させていく

こうした観光型MaaSが5Gでどのように変わるのか。松浦はその1つの例として、「渋滞、混雑の緩和」を挙げた。道路の渋滞、観光地の混雑情報をリアルタイムに把握できれば、別ルートの提案だけでなく、目的地までの間に別の観光情報をプッシュ通知して、既に混雑しているところを避けた周遊を提案できる。

今後を予見する上でのヒントが、KDDIが5G時代のキーワードに掲げる「AUGMENT」。「拡張・増大」を意味する言葉で、超高速・超低遅延・多数同時接続のネットワークによる、観光型MaaSの拡張をイメージしている。沖縄で効果が実証されたプラットフォームの他地域への応用はもちろん、各観光地のプラットフォームをシームレスにつなぎ、人の移動とともにサービスも自動で切り替わるような仕組みを構築できれば、全国の観光地でベネフィットを提供できるようになる。

観光型MaaSは、課題解決だけでなく新たな価値創造につなげていく日本版MaaSとして1つの方向性を示している。