このページはJavaScriptを使用しています。JavaScriptを有効にして、または対応ブラウザでご覧下さい。

先が分からない時代だからこそワクワクする未来をともに創りたい
5Gの幕開けが告げるビジネスのこれから

先が分からない時代だからこそワクワクする未来をともに創りたい

さまざまなビジネス分野でデジタルトランスフォーメーション ( DX ) が加速している。2020年からは、5Gが加わることによって、そのスピードと可能性がさらに広がっていくと期待されている。5Gによって社会やビジネスはどう変わり、KDDIは自治体や企業の取り組みをどう支援していくのか。5G・IoTのサービスを企画する野口 一宙に、5G時代の新しいビジネスモデルの可能性、共創のビジョンなどについて話を聞いた。

社会やビジネスを大きく変える 5GやIoT/AIのポテンシャル

――いよいよ5G時代が到来します。5Gが浸透していくことで、社会やビジネスにどのようなインパクトを与えるのでしょうか。

5Gは街中の広告や行きたい店舗の情報がARによって、よりリッチな価値をもたらす取り組みや、スタジアムでのxR ( 拡張現実や仮想現実の技術 )やビッグデータを活用したスポーツ観戦などコンシューマ分野での活用もありますが、Society 5.0やDXの実現を支える社会変革のキーテクノロジーとしても重要な意味を持っています。5Gは10年に一度の通信規格の大革新であると同時に、AIやIoT、ビッグデータといった技術革新とも結びつき、従来では不可能だったさまざまな社会課題の解決や、ライフスタイルを一変させるポテンシャルを秘めているからです。

例えば、AIによる画像解析やxRは、ここ数年で飛躍的な進化を見せました。既に、画像解析による人の動態監視、マーケティング、工場などでの部品の検品、xRによる作業支援などへの活用が進んでいますが、現状では処理速度を担保するため、有線の通信回線もしくはローカル環境に設置されているサーバーを活用するケースが多かったと思います。しかし5Gによる通信環境が実現すれば、大容量の高解像度画像データをワイヤレスでクラウドへ送り、その分析結果をリアルタイムに返すことが可能となります。画像解析をクラウド側で処理することで、今まで以上に精度の高い解析ソリューションを広範囲かつ低コストに提供できるようになるのです。さらには、危険な作業現場で建機を無人で操る遠隔操作やクルマの自動運転など低遅延性を活用したソリューションも、5G時代には飛躍的に実用性を高めていくと考えられます。

KDDI株式会社 ソリューション事業企画本部 5G・IoTサービス企画部長 野口 一宙
KDDI株式会社
ソリューション事業企画本部
5G・IoTサービス企画部長

野口 一宙

――5GとクラウドやAIなどの周辺技術が結びつくことで、より多くの企業に恩恵をもたらすことができるわけですね。

これは企業システムがオンプレミス ( 自社保有型システム ) からクラウドへ移行する際に起こった議論とも少し似ていますが、高度な性能や機能を持つエンジンやプロダクトを皆でシェアして使える環境となるのは、経済合理性という意味でも大きな効果があります。

例えば、一般的な監視カメラの情報を5G経由でクラウドのAIエンジンで処理すれば、大企業でなくても最新の画像解析ソリューションを容易に活用できるようになります。いわば5Gの進展は“テクノロジーの民主化”さらにはその先にある“イノベーションの民主化”を支える役割も果たしていくのです。

お客さまが求めるアセットを トータルに提供できる強み

――そうした5G時代において、KDDIは顧客のビジネスやDXをサポートするパートナーとして、どのような強みを持っているのでしょうか。

5Gはあくまでも通信の一手段にすぎません。
5Gを主語にするのではなく、あくまでもお客さまの課題解決、DXを主語に取り組むべきと考えています。

一方、お客さまがIoTやAIを活用して新しいビジネスやDXを推進しようとすると、通信インフラだけでなく、カメラやセンサーなどのデバイス、クラウド、分析用アプリケーションといった要素を全て自社で企画、調達、設計しなければなりません。ところが、この企画や設計に要する負担がお客さまにとっては非常に大きい。そのため、「どこから手を付けていいのかわからない」「やりたいことがあってもなかなか前に進めない」という声を聞きます。

KDDIは、IoTがまだM2Mと呼ばれていた20年ほど前から、お客さまのビジネス革新や課題解決を支援するため、多様なIoTのソリューションを提供してきましたが、「どこから手を付けていいのか分からない」というお客さまの声にお応えするために、通信のみならず、お客さまニーズに対応した各種デバイスやアプリケーション、IaaS/PaaS/DaaSといったクラウドなどのアセットを、一括して提供する準備を進めてきました。その一方で、複数のパートナー企業と連携した幅広いサービス開発と運用を行いながら、豊富なナレッジやノウハウも蓄積しています。だからこそ、これから5GやIoT、AIでビジネスを変革したいというお客さまと一緒に議論しながら、戦略の立案から構想、デバイスやクラウドの選定・導入も含めたトータルソリューションをワンストップで提案することができるのです。これが当社ならではの大きな強みと考えています。

――お客さまの負担を最小化し、やりたいことに集中できる環境を用意しているわけですね。

はい。さらにもう1つ、5G時代ではビジネス共創が非常に重要なポイントになってきます。
市場ニーズが多様化する中、1社で全ての技術やソリューション、サービスをカバーすることは現実的ではないからです。そこでKDDIは、スタートアップや大企業、自治体などが集う5G/IoT時代のビジネス開発拠点「KDDI DIGITAL GATE」 ( 以下、DIGITAL GATE ) を開設しています。ここではKDDIのアジャイル企画開発専門チームに加え、IoTプラットフォームサービスの「ソラコム」、AWSのクラウドベースのインフラ設計・構築・運用監視を行う「アイレット」、AIとアナリティクスでデータ活用を推進する「ARISE analytics」など、先進的なテクノロジーを持つKDDIのグループ企業も含めた多様なパートナー企業との連携を通じて、お客さまのDXを支援します。

机上の空論で終わらせるのではなく、実際にプロトタイプをつくり上げた上で、それが本当に価値提供につながるか否かを検証したり、DIGITAL GATEに集まるさまざまな企業同士の交流を通して新しい共創の芽を育てたりしていく――こうした環境の提供も、必ずやお客さまのDX推進に役立てていただけると考えています。
 

図「価値創造」のプロセスとKDDIのケイパビリティ

図「価値創造」のプロセスとKDDIのケイパビリティ

――KDDI自身の経験から来るノウハウや知見、グループ企業などのアセットが強みとなっているわけですね。

長年にわたるIoTソリューションの提供や社内のデジタル変革を通じて培ってきたナレッジがベースにあるのはもちろんですが、ベンチャー企業との協業であったり、フロントに立つ営業やSEも専門領域にとどまらない幅広いテクノロジーや業務の知見を学び、ソリューション提案力に磨きをかける人材育成に取り組んでいます。一方で、複雑な技術要素が絡み合うIoTのビジネスでは、優れた人材を社外に求めることも必要です。先ほどお話ししたグループ企業やスタートアップのノウハウなども積極的に活用しながら、お客さまに新しい価値やイノベーションを提供していきたいと思います。

パートナー企業との共創で課題解決に向けた5G実証を推進

――5GとIoT、AIなどを組み合わせることで、具体的にどんなことが可能になるのでしょうか。KDDIが関わっている実証事例などを紹介していただけますか。

まずは九州工業大学様、デンソー様などと行った、5Gによる産業用ロボットの高精度な制御が挙げられます。産業用ロボットを使う工場において、製造工程の変更を行う際にロボットの配置換えや、ロボットを制御する通信回線の敷設変更作業が発生しますが、これが工場の稼働を長時間停止する原因となっていました。そこで工場内の有線回線を5Gで無線化することで、配置換えに伴う回線敷設作業をなくし、また、3次元計測センサーの情報を5Gで高速にやりとりすることで、配置換え後のロボットの動作調整作業を迅速かつ容易に行えるようにしました。これにより、工場内レイアウトの柔軟性が向上し、製造工程の変更に伴う稼働停止時間も短縮できると期待されています。

もう1つが、セコム様と行った5GとAI、ドローンなどを活用したスタジアム警備の実証実験です。国際的なスポーツ大会や会議など大規模なイベントにおいては、不測の事態に対する警備が非常に重要であり、より厳重なセキュリティ対策が求められます。そのため、死角を減らしながら広域を監視できる警備システムや、高精細なカメラ映像を用いたリアルタイムな監視体制の構築など、異常の早期発見を可能とする警備に期待が高まっています。従来の無線に代えて、ドローンや警備員、警備ロボットに装着した4Kカメラの鮮明な映像を5Gでリアルタイムにセンターと共有しながら、AIで異常行動を自動的に検知できる仕組みを作りました。これにより、人だけでは難しい広範囲なエリアの映像監視、トラブルが起こった場所へのピンポイントな駆けつけ、映像による詳細な現場把握などを実現し、異常事態の検知から補捉、安全確保までの時間や効率を大幅に向上させることが可能となります。

さらに大林組様とは、5Gを使った臨場感ある高精細映像の伝送により、建機の遠隔操作の作業効率を従来に比べ15%~25%改善させる実証にも成功しました。建設現場などでは今後、熟練したベテラン作業員がどんどん減ってくることが予想されますが、高いスキルを持った人材をセンターに集め、複数の現場作業を効率的に行うことができるようになれば、生産性は飛躍的に向上し、危険エリアにおける作業の安全性も高まると考えています。

ご紹介した事例以外にも、さまざまなお客さま、パートナー企業とともに5Gを活用してどのようなビジネスができるかをディスカッションしています。

リカーリングモデルの実現で日本のDXをさらに加速させていく

――今後、5Gのエリアにおいて、どのような事業展開を考えていらっしゃるのか、ロードマップについてお聞かせください。

2020年春に商用サービスが始まる5Gは、NSA ( Non Stand Alone ) という方式で、既存の4Gネットワークと5Gネットワークのハイブリッドネットワークとなりますが、xRによる作業支援や映像AIの分析活用など大容量性を活かした5Gソリューションによりさまざまな企業でDX推進が加速するでしょう。

さらにその先には、5Gの機能をフルに活かせるSA ( Stand Alone ) 方式の導入が始まります。これによって、IoT、リアルタイム伝送などさまざまな利用シーンごとに最適なネットワークが使い分けられるネットワークスライシングが適用できるようになります。また、端末の近くにエッジサーバーを配置し、スマートフォンやIoTデバイスとの通信時間を短縮させる「マルチアクセス エッジ コンピューティング ( MEC ) 」という技術も注目を集めています。映像解析をしてすぐにアクションを起こすことが必要なシーンではよりエッジ側で処理した方が遅延時間を小さくできるからです。そこでKDDIではMECを用いた低遅延サービスの提供についても準備を進めています。 KDDIではもともとお客さま向けにマルチクラウド基盤を提供してきました。MECもそうしたクラウド基盤の一部と捉えて、自社クラウドの展開だけでなく、AWSなどのパブリッククラウドとも連携して、お客さま環境に導入しやすい選択肢を増やし、5Gビジネスの進展に寄与していくつもりです。

――最後に、今後KDDIが5G時代のビジネスパートナーとして目指していきたい姿についてお話しいただけますか。

5G時代には、IoTで集まったデータを5G経由でAIによって分析することで、お客さまへの付加価値提供が連鎖的に拡大、循環していく「リカーリングモデル」を実現していきたいと考えています。その際に重要となるのは、5G/IoTのプラットフォームに加え、お客さま企業、パートナー企業とKDDIが一緒に新しい価値を連鎖させていく共創のあり方です。こうした“ビジネスエコシステム”を積極的に創造し、5G活用の共創ユースケースを積み上げ、日本発のDXをさらに加速させていくことが、われわれの使命だと考えています。