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「テレキューブ」のスピード実現・普及を支えたKDDIとの連携体制とは
コストと工数を75%削減!

「テレキューブ」のスピード実現・普及を支えたKDDIとの連携体制とは

働き方改革が進み、オープン化が推進される一方で、セキュリティ対策への要求は高まり、多くの企業が課題としている。そんな中で注目されているのが、オフィスビルや商業施設、駅構内に「セキュリティ・プライバシーが確保された個室空間」を設置する『テレキューブ』サービスだ。コロナ禍以前からパーソナルスペースに着目していたのは一体なぜか。KDDIが提供するプラットフォームを活用し、スピード実現・普及に至った道のりを聞いた。


テレワークの空間課題を解決する『テレキューブ』

「自宅や屋外などでテレワークをすると、音漏れなどでセキュリティ上、不安がある」「Web会議をしているとき、周囲の音が入り込んでしまう」など、テレワーク時の空間的課題が生じている昨今。テレワークに最適な作業空間として、話題を呼んでいるのが『テレキューブ』だ。

東京を中心とした関東圏、大阪・兵庫を中心とした関西圏、愛知県名古屋市などで、企業向けに約2,000台、公共空間に約100台を展開している。会社設立は2018年12月。コロナ禍以前から街中にパーソナルスペースをつくる計画を進めていたのは、テレキューブ 代表取締役社長 間下 浩之氏の、個人的な課題感があったからだという。

発端は2016年。間下氏は当時、テレビ会議・Web会議市場で長年シェアNo.1を誇る株式会社ブイキューブ様の執行役員を務めていた。「社内ではテレワークを頻繁に活用していました。ところが困ったのが、Web会議をする空間です。社内では、ほかの人の声が入り込んでしまう。屋外では音が漏れてしまい、セキュリティ上の問題がある。安心してWeb会議ができる空間が、社会に存在しないことに気付いたのです。そこで、電話ボックスのような、音が入り込まない・漏れない空間をつくり、社内に設置したいと考えました」(間下氏)

テレキューブ株式会社
代表取締役社長

間下 浩之氏

天井のある防音の個室空間を設置するため、オーダーメイドの家具店に発注したり、消防法の問題をクリアしたりと、構想を実現するため奮闘した。2018年11月より、東京・丸の内エリアにおけるオフィスビル3物件の共用部への『テレキューブ』設置を皮切りに、順次エリアを拡大していった。

当初はオフィスビル内の設置で、利用者は特定の企業に所属する人に限定されていた。しかし、間下氏が描いていたのは、『テレキューブ』を街中に設置するというビジョンだった。公共空間への設置を進めるにあたり、「施錠・解錠」と、「予約や認証、支払い」を無人で行う必要がある。間下氏は鍵メーカーや、サーバー管理をするネットワーク系の企業などをあたったが、コスト面や開発期間など、どれも芳しくない返答だった。

そうこうするうちに、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)様のシェアオフィス事業「STATION WORK」に『テレキューブ』が採用されることに。JR東日本の求める仕様や、高いセキュリティ基準を満たした別タイプの開発が、急ぎ必要になった。

多くの機能を実装しながら、スピードとコストを抑えられた理由

さまざまな開発課題を抱えたテレキューブ社が、協業パートナーに選定したのが、KDDIだった。「鍵(遠隔開閉)、予約や認証・支払いの仕組み、セキュリティ対策。この3つの課題を同時に解決できるのは、通信キャリアしかないと思っていました」と間下氏。

そこでKDDIが『テレキューブ』に提供したのが、予約やQR認証、スマートロックなどの機能型プラットフォームと、通信のサービスである。対象物と鍵IoT制御BOXを接続しクラウドと通信することで、対象物の会員に限定した、予約による制御を可能にし、決済機能も実現した。

製作期間を1年半、費用を2億円と見積もった企業もあった中、KDDIによる開発は、わずか2〜3カ月、コストも4分の1以下に抑えることに成功した。一体なぜ、スピーディーな開発が可能だったのか。技術開発を担当したIoTイノベーション推進部の菰岡 真人は、その理由を二つ挙げる。

一つは、別の案件で、遠隔でロッカーを予約・開閉制御する仕組みを共同開発していた知見があったため。「もともと予約のプラットフォームをつくっていた経験から得られたコスト感やノウハウを、『テレキューブ』での開発に活かすことができました」(菰岡)

もう一つは、IoTイノベーション推進部が持っていた人的ネットワークである。「私たちが主に手がけているのは、通信モジュールを組み込んだ製品の開発サポートです。モジュールは単体で活用するものではなく、モジュールを製品に組み込む必要があるため、製品メーカーやそこに所属する設計者と、密に関わりがあります。間下社長の要望を受けて、相談先の心当たりが多数あったことは、開発期間やコストの圧縮につながったと思います」と菰岡。

KDDI株式会社
IoTイノベーション推進部

菰岡 真人

JR東日本様が『テレキューブ』のワークブースを利用し、自社サービスとして展開する「STATION WORK」のための追加開発も、KDDIが担当した。駅構内で活用するために、交通系IC端末への対応や電動ラウンド型扉、利用状況が一目で分かるライトなどの仕様が加わることに。「扉の形が変わると、その開閉を制御する仕組みが変わるため、メーカーに出向いて情報を集めるなど、細かな設計が求められました。一人で作業するための狭い空間の中で、どう機能を増やしていくか。難題もありましたが、一つ一つ解決していきました」(菰岡)

スピード重視の開発現場では「融通性」あるパートナーが必要だ

スマートフォン一つで予約・ロック解錠できる『テレキューブ』は、オフィスビル内に限らず、公共空間へと設置場所が広がっていった。2019年8月1日には「STATION WORK」のサービスが開始し、東京駅・新宿駅・池袋駅・立川駅を皮切りに、設置の拡大が進んでいる。

“働き方改革の象徴”として設置拡大を目指していたが、新型コロナウイルスの感染拡大で、テレワークの需要が急上昇した。大事なWeb会議に合わせて『テレキューブ』を予約するなど、利用状況も切実になってきているため、トラブル対応など運用面でもKDDIがサポートしている。

KDDI株式会社
IoTイノベーション推進部
営業3グループ

原 彩夏

間下氏は、協業パートナーとしてのKDDIの強みを「柔軟性」と語る。「会社とは、たとえ経営層の人間がやると決めても、現場で働く方たちが動いてくれなければ、実現には長い時間がかかってしまうものです。『テレキューブ』事業はスピード重視で、さまざまな仕様変更・追加が発生しましたが、KDDIは現場の方が非常に柔軟に対応してくれました。だからこそ、短期間で『テレキューブ』普及が実現したと考えています」(間下氏)

IoTイノベーション推進部 営業3グループの原 彩夏は、「間下社長からは『5Gで何かできないか』などの相談も受けています。目下の課題をクリアするだけではなく、未来につながる要望に応えていきたいと、こちらからもさまざまな提案をさせていただいています」と話す。

今後『テレキューブ』は、家でも会社でもない「プライベート空間」としての価値を、テレワークに限らずさまざまな場面・用途で発揮していく見込みだ。2020年10月1日からは、Web会議・面接などに集中するための実証空間「テレキューブWeb会議センター」を新丸の内ビル・豊洲フォレシアにオープンした。学生の面談や就職試験での面接に加え、自治体による住民サービスや、金融などのプライベートな相談場所として。将来のさまざまな用途を見据えた可能性を追求していく。

海外展開も予定するほか、最終的には個室空間を活かしたコンテンツサービスの提供も見据えている。「KDDIグループ企業を見てみると、さまざまなコンテンツを持っていらっしゃいます。そのコンテンツを活用して『テレキューブ』を拡大させていきたいですね」と間下氏。KDDIのアセットやケイパビリティを活用し、今後もテレキューブ社のビジョン達成に向けて伴走していく。