“テクノロジーの民主化”を標榜するIoTプラットフォーマー・ソラコム。
2021年6月22日から24日にかけてオンラインカンファレンス「SORACOM Discovery 2021 ONLINE」が開催された。
3日間でさまざまなセミナーやセッションが催され、一部のセッションにKDDIからも登壇した。その模様をレポートする。
顧客のグローバルビジネスを支援する5G・IoTサービス
基調講演の他にも、KDDI ソリューション事業本部 サービス企画開発本部 5G・IoTサービス企画部長 野口一宙が単独セッションを行った。
セッションのテーマは「5G・IoTによるDXの加速 ~ソラコム/KDDIによるハイブリッドなIoT基盤で進めるグローバル化とビジネス共創~」。グローバルビジネス支援事業の「IoT世界基盤」やソラコムとの共創事業「グローバルIoTアクセス」、5Gの本質などについて語った。
野口 一宙
最初に野口は、KDDIのDX事業・IoT事業について次のように話した。
「KDDIがIoT事業に着手したのは2001年に遡ります。
2015年に『IoT』という言葉が生まれてからは、法人契約回線数が急激に増加しました。IoTの裾野が広がるにつれて、データの蓄積・分析やデバイスの運用、ビジネス開発など、お客さまの要望も多様化してきました。
そこでKDDIは、ソラコムやアイレット、ARISE analyticsなどのパートナーをグループに招き入れ、お客さまをトータルでサポートする環境を整えてきたのです」
KDDIがIoTビジネス戦略の中核に据えているのがコネクティッドカーだ。
2020年10月にトヨタ自動車様と業務資本提携を結び、互いの得意分野をクロスオーバーさせたコネクティッドカー技術の研究開発に取り組んでいる。
「コネクティッドカーの定義は“ICT端末としての機能を有する自動車”。安心・安全、便利、自動運転などの機能を踏まえつつ、車載機からビッグデータを収集したり、あるいはそのデータを端末で可視化したり。IoTの歴史のなかで、自動車業界のコネクティッド化は非常に大きなトピックになっています」
コネクティッドカーで培った技術を全産業に向けて展開し、顧客のグローバルビジネス事業を支援するのがKDDIの「IoT世界基盤」である。このビジネスプラットフォームにおいて、とりわけ存在感を放つのがコネクティビティサービス「グローバルIoTアクセス」である。
「KDDIがもつキャリアリレーションの強みと、ソラコムのIoTプラットフォームの技術を組み合わせたサービスです。
ローミングにも対応し、一つのコンソールから各通信サービスを一元管理できるようになります。
さらに、KDDIのネットワークシステム構築サービス『KDDI Wide Area Virtual Switch』や、ソラコムのIoTプラットフォームも連携させ、機能を充実させていきます」
5Gの本質を捉え、Society 5.0の実現を目指す
2020年3月、5Gの商用利用がスタートした。
サービス展開に向けてさまざまな業界から注目を集めるなかで、野口は5Gと4Gを比較して今一度、本質に立ち返る。
「4Gの時代はスマートフォンの時代ともいえます。映像・音楽・買い物などのコンテンツがスマートフォンとともに成長しました。
そして5G時代の幕開けとともに、IoTが強く意識されるようになっています。コネクティッド社会に向けて、時流を捉えたサービスやデバイス、インフラなどを展開していかなくてはならないでしょう」
野口は、5Gスマートフォン連携の次世代スマートグラス「NrealLight (エンリアルライト)」についても紹介した。
KDDIと中国・エンリアル社様が共同開発したメガネ型ウェアラブルデバイスで、5GとXR (Extended Reality) 技術を駆使し、レンズを通して現実の世界にデジタル映像を投影できる。
「XR用のデバイスは大きくて重たいというイメージがあるかもしれませんが、『NrealLight』は106gとかなり軽量。
パーソナルユースだけではなく、ビジネスユースとしての問い合わせも多くいただいています。
このデバイスを使って、展示空間をデジタルで拡張する実証実験も行われました」
野口は、「『NrealLight』はコミュニケーションにも変化をもたらす」と強調する。
その一例が「NrealLight」に対応する遠隔作業支援システム 「VistaFinder Mx」だ。
作業者からの視覚映像や音声データが別の拠点にいる支援者にリアルタイムで送信され、現場への指示や安全管理に生かされるという。
「KDDI スマートドローン」も今後、需要が期待されている。
LTEモジュール搭載ドローンと運航管理システムをパッケージで提供している。ドローンは自律飛行機能を備えており、最小限の人員で遠隔監視が可能になる。
数々の事例を交えて、5Gの現在地を示した野口。最後にこの言葉でセッションを締めくくった。
「5Gはあくまでも手段に過ぎません。重要なのは、5Gというインフラをどのように活用して新たな価値を創出するか。
さまざまなアセットを有するパートナーとともに、Society 5.0を後押ししていきたいです」
KDDIは、5Gを活用した新規ビジネス創出や課題解決に向けた取り組みをより加速させるため「KDDI 5G ビジネス共創アライアンス」を設立。アライアンス参加企業の知見を束ね、目前に迫った5G時代の新機軸を追求する。