モノやサービスが売れない時代と言われる現代社会。自社商品やサービスの『付加価値を高める』ことで、他社との差別化を図り、売上を伸ばそうと取り組む企業が増えています。本コラムでは、このような企業が増えている現状と背景、そして商品やサービスの付加価値向上の方法についてご紹介します。
「良いモノを作っているのに売れない」「良いサービスを提供しているはずなのに売上が伸びない」…このような悩みを抱える企業は少なくありません。モノやサービスがコモディティ化 (同質化) し、消費者からすると「どの製品を買っても同じ」に見えることから、結局は価格競争になってしまうという悪循環が生じていることがその大きな理由の一つです。
しかしながら一方で、『モノの豊かさ』から『心の豊かさ』へ消費者の意識がシフトしているとの指摘があります (図1)。さらに、心の豊かさを象徴する例として、「こだわりがあるモノなら多少高額でも購入する」と考える人が多いという調査結果もあります (図2)。これは2006年の調査結果ではありますが、現在にも通じる傾向ではないでしょうか。
企業が価格競争に陥ることなく自社の商品・サービスの売上を伸ばすヒントはここにあるのではないでしょうか?
つまり、企業は提供できる商品・サービスに、消費者が求める『こだわり』イコール『付加価値』を与えることで、売上向上につなげられる可能性があるということです。
実際、売上拡大に向けて今後注力していきたい取り組みとして、商品やサービスの『付加価値を高める (高付加価値化)』を挙げている企業が多いことがうかがえる調査結果もあります。
『付加価値を高める』方法として、まず挙げられるのが、新たな商品開発やサービス展開をしたり、既存商品・サービスに新機能や新メニューを加えたりというやり方です。しかしこれにはコストと時間がかかります。またそれが顧客や消費者にとって価値があることなのかは、提供してみなければ分からないこともあり、リスクも高いです。
そこで、もう一つの手法としてあるのが、新たな価値を作り出すのではなく、『自社がこれまで培ってきた顧客や市場から認められている価値を高めること』で高付加価値を実現するということです。そのためには、まず自社の価値を改めて認識することが必要となってきます。では具体的にどのようにしていけば良いのでしょうか?
自社のどの点が、顧客や市場から評価されているのかを見極めるには、企業目線から顧客目線への転換が必要です。しかし、企業目線から顧客目線の転換というのは意外に難しく、どうしても自社からの視点になりがちです。そのための発想転換方法として、下記のような手法はいかがでしょうか。
まずは、顧客の立場に立って、顧客の『課題』つまり「何に困っているのか?」「何が必要なのか?」を考えます。
そしてその課題を解決できると、顧客にはどのような『恩恵』があるのか (どのように『嬉しく』思ってくれるのか) を想像してみましょう。
例1: 機械部品を提供している製造業の場合
顧客目線での課題: 必要になる部品が様々で、どの部品が必要になるのか分からない。
↓
顧客目線での恩恵: 部品をいつでも多様に揃えていて、素早く提供してくれると嬉しい。
例2: ホテル業の場合
顧客目線の課題: 困ったときにすぐに対応してほしい、探している場所にすぐに行きたい
↓
顧客目線での恩恵: 困っている時にすぐに相談に乗ってもらえたり、察してもらえたりすると嬉しい。
次に、自社商品・サービスにより、[1] で述べたような顧客の『課題』を解決し、どのような『恩恵』を与えることができるか考えます。『恩恵』を与えることができる自社商品・サービスの特長こそが、自社の強みであり『価値』となります。上記『[1] の例』に対応させてみましょう。
例1: 機械部品を提供している製造業の場合
自社の価値: ラインアップが豊富であること
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価値を高めるためにすべきこと: 豊富なラインアップの一覧性を高め、すばやく顧客に届けられるようにすること
例2: ホテル業の場合
自社の価値: 顧客の立場から、きめ細やかなサービスを提供できること
↓
価値を高めるためにすべきこと: 困っている利用客を見つけやすいようホールのスタッフを増やす、利用客の要望に対応できるよう余裕を持った仕事をする
このように、顧客のどのような『課題』に対して自社製品が価値を持つのかを理解し、その価値を高めていくことが売上向上にもつながっていくといえます。
では、実際にどのように価値を高めて顧客に提供していけばよいのでしょうか。
次回以降で、自社商品・サービスの『価値』を見出し、ITを活用することでその『価値』を高めていく事例をご紹介していきます。
すぐに活用できるヒント満載。自社商品・サービスの価値を上げ、他社に差をつけるための具体的な事例もご紹介します。