4つ目の課題『クラウド化』は、企業規模を問わず想像以上にクラウド化が進んでいない現状が見えてきました。今回は、特に中小企業のクラウド化の実情と今後の課題について解説します。
この数年で急速に認知度を高めている『クラウド』という言葉。ハードウエア・ソフトウエア・システムなど、あらゆるものがクラウド化されつつあるという印象ですが、今回のアンケートでは、意外にも企業内でのクラウド化が進んでいないという現実が見えてきました。もっともクラウド化が進んでいるのは『メール』ですが、中小企業の7割がメールのクラウド化を実施している一方、中堅企業では6割強、大企業では5割強と、規模が大きくなるほど、メールのクラウド化の割合は小さくなるのです。この背景には、メールのクラウド化を実施する際、大企業ほど『社外のサーバーでメールを管理すること』にセキュリティの問題を感じていると考えられます。グループウエアなどの総合事務処理、情報共有のクラウド化では、中堅企業が4割の企業でクラウド化されているのに対して、中小企業は2.5割、大企業は3割強にとどまっています。こちらは、大企業ではセキュリティの問題が、中小企業ではコストや導入段階での人手、情報不足の問題が関わっているようです。
ファイルサーバーについての活用状況は大企業4割を超えるものの、顕著な差は見られません。また財務会計・給与計算といった基幹系業務・顧客管理・商談管理ツールは、全企業規模でもクラウド化は2割以下にとどまっています。
一方で、これからクラウド化を意識している項目では、グループウエア・ファイルサーバーが比較的高い数値を示しています。
中小企業の傾向として注視したいのは、グループウエアへの意識です。今後のクラウド化の意向では、ほとんどの項目で中小企業は中堅企業・大企業に遜色ない、あるいは上回る数値になっているのですが、電子メールを除くとグループウエアは他に比べて低い数値になっています。下記のグラフのように中堅以上の企業では、もともと社内サーバーでオンプレミス型のグループウエアを運用しており、その効率化としてクラウド型グループウエアを要望しているのではないかと考えられます。一方、中小企業ではもともとグループウエアがない状態の企業も多く、そのために導入の意向も低めに出ているのではないでしょうか。
クラウド化に関するアンケートで、最も顕著に企業規模での差が出たのは、『中小企業のクラウド型グループウエアへの意識の低さ』『大企業の基幹系システムクラウド化への消極性』の2点だと言えます。
クラウド型グループウエアの導入については、特に中小企業では業務効率化・生産性向上を考えた場合には、大きなポイントになりそうです。中小企業で数値が低い理由としては、『そもそもグループウエアを使っていない』という理由が大きそうです。しかし、中堅以上の企業で高い意向が出ていることから、グループウエアに効率化や生産性向上の効果が高いこと、クラウド化でさらに便利になることを示しているのではないでしょうか。
ただ、興味深い点として、『財務会計』『給与計算』『顧客管理』や『商談管理』の導入への意識において、大企業に比べて中小企業のほうが高い傾向にあります。この結果は、大企業はセキュリティ面の課題から、クラウド化に消極的であることが考えられます。(クラウドにおけるセキュリティ対策については、次回コラムで詳しく説明します。)
前回のコラムでは、中小企業ではスマートフォンの導入が進んでいる一方で、グループウエアが活用されておらず、ワークスタイル変革に貢献できていないという話がありました。今回も同じ結論になっています。つまり、中小企業は業務効率化・生産性向上、ひいてはワークスタイル変革のためにも、積極的にクラウド化を推進すべきだということです。
そのためにも、クラウド型グループウエアを導入し、スマートフォンを最大活用することが大切になると言えます。
次回は、クラウド化の障害の一つである、セキュリティについて解説します。
より規模の大きい『中堅企業』へとステップアップしていくために必要なクラウド化、モバイル化について、5つの視点から考察します。