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KDDIが考えるデジタルトランスフォーメーション
ともに“つなぐ、つくる、ビジネスを変える”

KDDIが考えるデジタルトランスフォーメーション

「攻めのIT」で、お客さまの挑戦を全力でサポートする

KDDI株式会社
取締役執行役員常務
ソリューション事業本部長

東海林 崇

多様なお客さまの課題と向き合い、ソリューション提案力を磨く

菊池 デジタルトランスフォーメーションやIoT(Internet of Things)といった言葉が、ビジネスの場で日常的に使われるようになりました。業界を問わず、デジタルとの掛け合わせで従来のビジネスが大きく変わりつつあることを感じます。通信事業者が担う役割もこれまでとは大きく変わってくるのではないでしょうか。このようなビジネス環境下で、KDDIが考える今後の戦略をお聞きしたいと思います。

東海林 ビジネス環境が激変する今、お客さまの課題は多様かつ複雑になっています。かつては、事業拠点をネットワーク化する、回線のスピードを速くする、通信費を削減する、といった分かりやすいご要望をいただきお応えしてきましたが、状況は大きく変わりました。通信を含むITインフラは今後も重要ですが、コスト削減を主眼に置いた守りのITから、事業を成長させていく「攻めのIT」へとお客さまが求められるものが変化してきています。

菊池 世の中の関心が「攻めのIT」に移りつつあるという話はよく伺っています。ビジネスの分野では「デジタルトランスフォーメーション」として大きなトピックになっています。

東海林 デジタルトランスフォーメーションと言うと大げさに聞こえますし、遠い世界のことのように思えますが、身近なところで考えても、今やカメラはフィルムではなくデジタルカメラやスマートフォンを利用することが当たり前になりましたし、電車に乗るときに切符を買う人は少数派になりました。実はデジタルを通じた変革はすでに身の周りで始まっているのです。

菊池 いつの間にか、デジタルがさまざまな生活様式やサービスを一変させてしまっているということですね。さらにビジネスの視点で考えれば、鉄道会社が電子マネーを提供するとともに決済事業に関わるようになったり、航空会社は発券業務をQRコードなどの認証に置き換えたりと、事業の根幹に関わるところでデジタルが重要な役割を果たしています。

東海林 単にこれまでのサービスがデジタルに置き換わるということではなく、さまざまな業界でデジタル化が進み、業界を超えた変革が起こっています。UberやAirbnbが分かりやすい例ですが、競争相手が異なる業界からも続々と参入してくる、そうした状況に対応していかなければなりません。デジタルトランスフォーメーションは待ったなしの状況です。当社自身、デジタル技術の代表例であるモバイルと金融業を融合し、「じぶん銀行」という取り組みを試行錯誤しながら進めて参りました。当社はこうした知見も生かしながら、変革に直面するお客さまに寄り添い、一緒にビジネスを作っていきたいと考えています。

菊池 一緒にビジネスを作るといっても、実際には簡単なことではありません。多くの企業がトランスフォーメーションに取り組みたいと思いながらも、何から手を付ければ良いか分からないような厳しい状況にあるということもお聞きしています。

東海林 今までの延長でないものを作るということですから、容易ではありません。お客さま自身もどのように自社ビジネスを変えるか、明確なイメージを持たれていないことが多いと思います。我々だけでお客さまの抱える課題を明らかにして解決に導こうとするのは非常に難しいことです。お客さまにもご協力いただき、密なコミュニケーションを通じて、ひたむきにソリューションの糸口を探し出す必要があります。

菊池 業界ごと、また企業ごとにもビジネスゴールや課題は違いますからね。具体的にKDDIとして取り組まれていることはありますか。

東海林 まずはお客さまが抱える課題は何かを把握すべく、足しげくお客さまのところにお伺いするように全社で徹底しています。これまで当社にとって、お客さまの窓口はIT 部門や総務部門が中心でしたが、ビジネスの変革に寄り添うということになれば、幅広く事業部門や企画部門などにもお伺いしてニーズを深掘りすることが不可欠ですからね。さらに、KDDI法人事業全体の意識改革と、知見やノウハウを結集するために、社内で「変革ワークショップ」というプロジェクトを立ち上げました。各部門からメンバーが自主的に集まり、お客さまへの提案事例、成功事例などを共有したり議論を重ねてアイデアを練り上げたりしています。どのような形でお客さまのビジネスに貢献できるのか、全社で知恵を集めているところです。

株式会社日経BP
日経BP総研
イノベーションICT研究所

菊池 隆裕氏

通信を基盤としたKDDIの技術力を最大限に活用

菊池 お客さまをこれまで以上に深く知り、お客さまの困りごとを深く理解した上で、提案するソリューションの質を高めようということですね。法人事業全体で取り組まれているというところにKDDIの本気度を感じます。しかし、こうしたデジタルを活用したビジネス変革は、既存SIerをはじめ、多くの企業が取り組んでいます。その中でKDDIの強みはどこにあるとお考えですか。

東海林 お客さまのお役に立てるカギは、我々が最も得意とする通信技術だと考えています。デジタルトランスフォーメーションにおいては、クラウドサービスの活用や、IoTでの膨大なデータのやり取りが前提となり、実はこれまで以上に通信の役割が大きくなってきました。デジタルがすべてのビジネスのあらゆる場面に関わる中で、もはや通信は単に情報を伝達する役割を担うだけではなく、ビジネスそのものと切っても切れない関係になっています。このような状況で、我々には過去の運用実績やノウハウといった、インフラを支えてきたキャリアとしての強みがあります。その強みを生かすことで、お客さまのビジネスに貢献できると考えています。

菊池 通信の強みを生かして、お客さまのビジネス貢献に結び付いた事例があれば教えてください。

東海林 例えば、最近は工場へIoTを導入し、製造ラインのデータを無線で収集したいといった依頼は少なくありません。IoTの導入は通信環境抜きには語れませんので、お客さまの既存の通信環境を基に最適な環境構築から始めます。お客さま自身でWi-Fi環境を構築されるも、電波干渉によりデータが収集できないケースや、秘匿性の高い工場のデータをやり取りするためのセキュアなネットワークの要望など、単にデバイスを設置してインターネットに接続するシステムを構築するだけではうまくいかないケースが多々あります。そうした場合でも、当社であれば既存のセキュアな社内ネットワークをご利用ならそれを活用し、お持ちでない場合でもモバイルを活用したセキュアな閉域網を構築することができます。お客さまのニーズや環境に合わせたシステムの導入に加え、運用まで責任を持ってお手伝いできるのが、我々の価値だと思いますね。

菊池 製造現場では、生産ラインが過酷な環境に置かれていることもあり、システムを導入した後の継続運用が課題となる場合があります。システム導入時のみならず、実際の運用まで安心してお願いできるというのは心強いですね。さらに、IoTの適用範囲が製造現場を超えて広がる中で、通信がカギとなる現場はますます増えていきそうです。今や多くの製品がデータ通信機能を搭載した形で出荷されていますね。

東海林 おっしゃる通りで、例えば自動車の分野では、携帯電話でも利用されているSIMカードを搭載し、走行中も常にインターネットに接続してデータを送信する「コネクテッドカー」が導入されつつあります。しかし、通信の仕様は輸出先の国ごとに異なります。グローバルで展開しようとすると、自動車が国境を越えて移動した際、外国キャリアのネットワークを借用するローミングサービスが発生し、高額な通信料金が発生してしまうケースがありました。この問題を解決すべく、当社はトヨタ自動車様と共同でグローバル通信プラットフォームの構築を進めています。これは、SIMカードの設定情報を通信によって書き換えることで現地の通信事業者への直接接続を可能にする仕組みで、ほぼ全世界の通信キャリアと提携しているKDDIだからこそ実現できたプラットフォームだと考えています。このプラットフォームを使えば、従来のローミングサービスなどに依存せずコストを抑えながら、高品質で安定した通信で、グローバルでのIoT展開が可能になります。こうした取り組みで構築した仕組みやノウハウは今後、他の業界のお客さまにもご活用いただけると思っています。

菊池 日本の厳しい市場環境を考えると、どのような業界でも今後はグローバルのビジネス展開を視野に入れて事業を考える必要があります。そうした際にもKDDIの通信の知見が生きてくるというわけですね。

東海林 もう1点、大事なお話があります。IoTの取り組みがますます広がっている中、情報のセキュリティに対してこれまで以上に関心が高まっています。こうした問題に対しても、我々は通信のプロフェッショナルとして、セキュリティの高度化に向けた技術開発を続けています。例えば、IoTで使われるSIMはもともとかなり高いセキュリティ強度を持っていますが、よりセキュアな暗号管理技術を世界に先駆けて開発しました。お客さまは、求めるセキュリティレベルに合わせて、通常のSIMと暗号化を施したSIMを使い分けることができ、安心、かつ柔軟なIoTの運用ができます。

アジャイル開発とアライアンス強化で、ビジネスパートナーとしての価値を最大化する

自社でアジャイル開発手法導入 お客さまとノウハウを共有

菊池 ビジネスを円滑にする通信環境の最適化までKDDIであれば請け負えるというのは確かに大きな強みですね。デジタルと通信を切り口に多種多様な企業のビジネス変革をサポートされている姿が伝わってきました。ただ、KDDIは通信の分野に留まらない取り組みをされていると聞きます。

東海林 そうですね。大きな取り組みの1つとして、アジャイル型の手法を取り入れた開発センターの拡充を進めています。今のビジネス環境は、新たなサービス、特にIoTサービスでは展開していくスピードがとても速い。要件定義をじっくりと行っている間に、刻一刻と環境が変化し、ビジネスが世間の動向に追い付かないということは十分考えられます。新規事業を立ち上げようというお客さまならなおさら、素早いサービスのリリースと、効果検証のフィードバックを繰り返してサービスを進化させたいと考えるはずです。それに対応すべく、自社の開発環境とともに、お客さまへのサービス提供にもアジャイル開発を取り入れました。

菊池 既存のウォーターフォール型の方法では、システムの開発前に入念に要件定義をしてから初めて開発をスタートして、サービスの完成形は開発終盤まで確認できませんでした。アジャイル開発は、まず小規模、短期間でトライ&エラーを繰り返しながらサービスの完成度を高めていく手法ですね。お客さまへのサービス提供では、具体的にどのような取り組みが行われているのでしょうか。

東海林 2つの取り組みを実施しています。1つは、お客さまのご要望にお応えするサービスを今後も提供していくために、当社の開発センターがお客さまを訪問し、開発したプロトタイプに対してフィードバックを頂戴しながら開発を行っています。従来のように長い時間をかけて設計書を作った後に開発に取り組むというやり方ではなく、短期間でプロトタイプを作って改善を繰り返します。もうひとつの取り組みとして、当社が実践している開発手法のノウハウをお客さまに提供する、教育支援プログラムも始めました。当社が選定した専門のコーチがお客さまの開発現場に入り、開発手法の実践をお手伝いするというものです。

菊池 お客さまと真摯に向き合う開発に加え、KDDIが実践する開発手法のノウハウまでお客さまと共有しているのは、お客さまにとっても喜ばしいことですね。貴社のアジャイル開発手法だからこそ提供できたという具体的な事例があればご紹介いただけますか。

東海林 ある観光バス事業のお客さまの事例があります。KDDIは当初、乗客の顧客満足度を計測するための車載カメラによる乗客の顔認証システムをご提案しましたが、プロトタイプをお客さまにお見せし、ご意見を伺っておりましたところ、実際の優先課題はドライバーの安全運転や事故予防であることが分かりました。そこで、お客さまのご意見を軸にもう一度開発中のシステムを見直しました。運転手の姿勢と表情を計測できるように仕様変更し、お客さまと相談しながら1カ月かけてプロトタイプを開発したところ、ヒヤリハットの防止に効果的なシステムとしてご好評いただき、実際のサービス改善に貢献できました。

菊池 お客さまとのディスカッションの中からお客さまも気付いていない課題を発掘し、お客さまに寄り添いながら、しかも1カ月という短期間でシステムを開発されたのは、お客さまと真摯に向き合うKDDIならではの事例であると感じます。他方で、KDDIは自社の開発環境の変化に加え、外部のいろいろな企業とのパートナー連携も活発にされているように思います。

ALL KDDIでケイパビリティを強化 よりお客さまに寄り添う

東海林 あらゆるモノがつながりデータがやり取りされるIoTの世界では、通信は水や空気と同じように当たり前の存在になってくると思います。我々は通信事業者として単にデータのやり取りを効率化するに留まらず、ICTを活用することで、「データによる業務の可視化」により既存業務効率化のヒントを得たり、KDDI保有データとお客さま保有データを組み合わせて新しい価値を生み出したりと、さまざまな形でお客さまに貢献できる可能性があると考えています。幅広い分野でお客さまをサポートするために、さまざまな企業に資本参加し、自社のケイパビリティを強化していきます。

菊池 具体的にはどのような企業があるのか、お聞かせいただけますか。

東海林 最近の例では、クラウドサービス導入と構築、運用支援に強みを持つ「アイレット社」や、IoTにおける通信やデバイスの運用を支援し、リーズナブルかつセキュアなIoT通信プラットフォームを提供する「ソラコム社」など、独自の強みのある企業に資本参加しました。またビッグデータの分析・活用に向けては、KDDIのグループ会社として「ARISE analytics(アライズ アナリティクス)」を設立しました。KDDIの知見やノウハウに加え、こうしたALL KDDIのチカラを活用することで、お客さまの新しい挑戦に寄り添い、信頼されるパートナーとなるべくこれからも努力を続けていきたいと考えています。

“お客さまの挑戦に、全力で。”

菊池 今までのお話を総括していただくと、KDDIが考えるデジタルトランスフォーメーションとは、どのようなことでしょうか。

東海林 お客さま、パートナー様との業界を超えた“共創”による新たなビジネス価値の創出、これが当社の考えるデジタルトランスフォーメーションです。これをお客さまやパートナー様と一緒に実現するため、KDDIは全力で支援していきたいと考えています。

菊池 そのために、ALL KDDIのケイパビリティを活用するということですね。

東海林 その通りです。KDDIは通信事業者としての使命を果たすだけでなく、お客さまに当社を活用してデジタルトランスフォーメーションを実現していただくべく、ALL KDDIでさまざまなケイパビリティを用意しています。これからもお客さまのご要望にお応えするために、KDDIはお客さまの挑戦に全力でサポートしていきます。

菊池 KDDIが大きく変貌を遂げつつあることを実感できました。本日は、ありがとうございました。