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日本企業に勝機を呼び込むには? IoT推進に必要な3つの視点
IoT全体戦略

日本企業に勝機を呼び込むには?
IoT推進に必要な3つの視点

「世界を牽引するモノづくり大国である日本企業は、IoTを積極的に推進することでさらなる躍進ができる」と確信するのはKDDIで取締役執行役員常務 ビジネスIoT推進本部長を務める森 敬一。KDDIとしてお客さまにできることとは——。


“PoC難民”から脱すべし 現場にこそ“宝の山”がある

KDDI株式会社
取締役執行役員常務
ソリューション事業本部
副事業本部長 ビジネスIoT推進本部長

森 敬一

デジタルトランスフォーメーションを進める上で、欠かせない取り組みの1つがIoTだ。日本では、その実効性を検証するPoC(Proof of Concept)の段階で二の足を踏む、いわば“PoC難民”が生まれつつあるとも指摘されるが、森 敬一は冷静に現状を分析する。

「例えば、1990年代の積極的なIT投資によって、パソコンやインターネットは今や当たり前のツールとなりました。IoTも同様で、今はまだ社会に浸透していく過渡期にあると見ています」

ただし、業務効率化を主な目的とするIT投資と異なり、IoTは新規事業の創造や売り上げ拡大につながる“攻めの投資”と言える。このような新しい分野への投資は、マーケットや競合企業の存在などの外部環境に左右されやすく、PoCの判断要件も複雑かつ多岐にわたり不確実性も高い。それでも「今後ビジネスを進める上でIoT推進は欠かせません。長期的な視点で試行錯誤を繰り返し、粘り強く取り組むことが重要です」と森は強く主張する。その背景には、IoTこそ日本企業にとっての勝機だという確信があるからだという。

「製造業を筆頭に、日本企業の強みは現場力にあります。つまり、高水準なモノづくりを実現するための実績や改善データは、長年それぞれが蓄積してきました。これらをIoTで組み合わせ、新たなビジネス価値を加えれば、トータルソリューションとして提供できる可能性を秘めているのです」と森。IoT社会の到来によって、世界市場での日本企業の存在感がさらに増していく可能性も高いという。

お客さまとともに業務フローの課題の洗い出しから実践

ただし、IoTを推進する上では、ネットワークインフラからデバイス、センシング、クラウド、データ分析、それらを束ねて事業を推し進める戦略の立案力・構想力まであらゆる知見が肝要となる。つまり、システム全体を最適化し、専門的見地からしっかりとサポートしてくれるパートナー企業が欠かせない。森は、そこにKDDIの出番があると見る。

「KDDIは約15年前から、M2M(Machine to Machine)およびIoTのサービスを先駆けて提供してきた豊富なノウハウを蓄積しており、IoTのデータ収集・解析に必須となるネットワークサービスを提供してきた通信キャリアとしての実績があります。加えて近年「IoTクラウド」シリーズと呼ばれるサービスを展開しています。パートナー企業との協業により、スモールスタートしやすいパッケージの提供や、豊富なデータ群による分析サービスなど、多様なご要望にお応えできる体制が整ってきました」

ここで森が紹介したのが、お客さまとKDDIが一丸となりIoTを推進した生産設備メーカーの実例だ。業務フローを「調査・企画」「製造」「販売」「施工」「運用・保守」などに区分けしながら、それぞれの課題にアプローチした。

例えば、人が立ち入れない危険地域にプラントを設置する際の「調査・企画」のプロセスでは、センサーとしてIoTドローンの活用を提案。「施工」では、ビーコンなどを使った作業員の位置管理や遠隔指示、「運用・保守」ではセンサーによる遠隔監視や故障予知といった、プロセスごとの課題に対応するソリューションを組み合わせたシステムを構築した。「IoTで何ができるのか」というゼロの段階からお客さまと向き合い、一つ一つ課題を洗い出し、ともに解決に取り組むことで、同社は従来のプロダクトアウトのビジネスモデルから、お客さまと一緒に課題解決を考えるビジネスパートナーへの変革を推進しているという。

IoTはシンプルで気持ちのいいもの まずは小さく、簡単にスタート

また、近年KDDIが提唱しているのが、人にとって「気持ちのいいIoT」の推進だ。先の生産設備メーカーにおいても、「製造」のプロセスでウェアラブル端末を使い、現場での社員の健康や安全の管理を実現。他にも、混雑した駅でどのトイレの個室が空いているかが分かる小田急電鉄様の新宿駅「トイレ空室管理」やセンサーでごみ箱の回収タイミングを知らせる那覇市国際通り商店街の「IoTごみ箱実証実験」など、人が中心となるIoT導入を積極的に進めている。

冒頭で、ITとIoTとの相違点に触れたが、森は、大事な視点をもうひとつ挙げる。それは、IT投資がコスト削減など“引き算”の考え方で進められてきた一方、IoTは「売り上げを伸ばす」「お客さまや社員の満足度を上げる」といった、いわばプラス思考の“足し算”で取り組むべき、ということだ。

そう考えれば、どこかハードルが高く思えるIoTも、ベースは実にシンプルで決して難しく考えすぎる必要はないと森は言う。「まずはスモールスタートで、一緒にビジネスを創り上げ、ともにさらなる成長を目指していきましょう」と、力強い言葉で締めくくった。

 

【KDDI社外刊行誌『be CONNECTED. vol.1』掲載記事より転載・タイトル変更】