2018 9/19

導入事例

利用者からも大好評CS向上と業務効率化をチャットボットで実現

JR西日本は、同社が運営するコールセンターにKDDIが開発した「チャットボット」を試験導入した。問い合わせの約4割を占める忘れものへの対応の一部を、オペレーターに代わってチャットボットが受け付けるというものだ。
ウェブからリアルタイムにコミュニケーションできる新しいチャネルの開設を実現するとともに、忘れ物対応業務を効率化できたという。
このソリューション導入にはどのような経緯があったのか。

問い合わせの約4割を占める忘れ物対応に課題

鉄道事業において、列車内や駅構内の忘れ物の問い合わせ対応はお客さま満足度向上のために必要不可欠な業務のひとつ。西日本旅客鉄道株式会社(以下、JR西日本)の場合、年間100万件以上の拾得物(忘れ物、落とし物)があり、当然のことながら、忘れ物についての問い合わせは非常に多く、同社の電話窓口「JR西日本お客様センター」(以下、コールセンター)には受電数全体の約4割に相当する1日当たり1,200~1,500件もの問い合わせが寄せられ、その対応に苦慮していたという。

西日本旅客鉄道株式会社
鉄道本部 CS推進部
お客様センター高機能化PT
担当課長

渡辺 彰彦

「コールセンターでは従来、ひとりのオペレーターが運行状況や運賃のお問い合わせと兼任で忘れ物のお問い合わせにも対応していたため、お客さまから『電話がつながりにくい』といった苦情が寄せられていました。そこで当社は2016年7月、コールセンター内に忘れ物対応専門チームを創設するとともに、忘れ物捜索の業務フローを再整理し、お客さまとの電話中にリアルタイムに検索して拾得の有無を回答できるように改善しました。同時にオペレーターを増員して電話のつながりやすさも向上させましたが、応答率の向上は同時に着信件数の増加を招き、今まで電話がつながらないことにより諦められていた潜在的な需要を掘り起こし、想定以上の着信件数に対応しなければならないという課題を抱えていました」

こう話すのは、コールセンターの品質向上に取り組む同社鉄道本部 CS推進部 お客様センター高機能化PT(プロジェクトチーム)の渡辺彰彦氏。こうした課題を解決するために、お客様センター高機能化PTでは次なる手立てを模索することにした。

「電話をつながりやすくするために、さらにオペレーターを増員する方法もありますが、増員に頼らずお客さま満足度を高める方法はないだろうかと検討を重ねた結果、忘れ物対応業務の一部を半自動化したらどうだろうかという意見が上がりました」(渡辺氏)

忘れ物問い合わせ対応に“これまでの運用を適用できる”チャットボットに着目

忘れ物対応業務を半自動化する手段として、JR西日本が着目したのは「チャットボット」だった。忘れ物の問い合わせをウェブサイトに用意したチャットボットで受け付けることにより、オペレーターの電話受付業務の負荷を分散して「つながりやすさ」を向上しようという狙いだ。実際の捜索や発見した忘れ物の引き渡し場所などの案内は人が介在しなければならないが、受付業務だけでもチャットボットで自動化すれば、電話業務と比べてさらなる業務効率化が見込める。

西日本旅客鉄道株式会社
鉄道本部 CS推進部
お客様センター高機能化PT
主査

山口 毅

チャットボットを選んだ理由について、お客様センター高機能化PTの山口毅氏は次のように説明する。

「忘れ物のお問い合わせはそのほとんどが“忘れ物を捜してほしい”というように、目的がはっきりしていますので、お問い合わせの流れをテンプレート化しやすいという特徴があります。コールセンターではこれまでも忘れ物対応をマニュアル化したトーク・スクリプトに沿って運用していましたので、このトーク・スクリプトをベースにシナリオを作成することにより、これまでオペレーターが行っていた定例的な会話を代替してくれるチャットボットを導入できると考えました」
こうしてチャットボットの試験導入を決めたJR西日本では、2017年1月頃からチャットボットの仕様要件をまとめ、SIベンダー数社に提案を依頼。比較検討の結果、同社が採用したのがKDDIの提案だった。

「KDDIを選定したのは、当社の要件を的確に汲み取り、実際の運用までを想定した具体的かつクオリティの高い提案だったからです。その結果、すぐにPoC(Proof of Concept=概念実証)を実施できました。KDDIはPoCの間も常に現場の声を聞き、意見・要望を迅速に反映してくれました」(山口氏)

システム導入により想定以上の業務効率化を実感

JR西日本から提案を依頼されたKDDIでは、これまで培ったチャットボット技術の経験を踏まえながらも、チャットボットのシステム自体はまったく新規に開発した。

KDDI株式会社
ソリューション営業本部
ソリューション関西支社
法人営業2部 営業2グループ
主任

海野 遼哉

「今回のシステムはJR西日本様から詳細な要件が提示されており、チャットボットとオペレーターとのシームレスな業務連携が求められていたことから、既存のソリューションではなく新たにスクラッチでシステム開発を行うことにしました。非常に短い開発期間でしたが、毎日のようにJR西日本様を訪問しながら詳細を詰めていきました。JR西日本様の協力もあり、コールセンター現場の生の意見を聞きながら開発を進めることもできました」(海野)

JR西日本がこだわったのは、フレンドリーな使い勝手だ。ロボットの姿をしたキャラクターをコンシェルジュとして用意するなど、親しみやすさに加え、パソコン用のウェブサイトだけでなく、スマートフォンでも専用アプリをインストールすることなく利用できるようにした。

2017年3月のPoCを経て、翌4月には実運用に向けて機能をブラッシュアップ。安定稼働を確認したのち、8月から営業時間と曜日を限定して一般向けに公開した。一般向けの運用を開始すると、チャットボットの導入効果はすぐに表れたという。
「忘れ物問い合わせの約1割がチャットボット経由になりました。現在のところ、電話のお問い合わせと比較するとそう多くはありませんが、ひとりのオペレーターが2件、慣れたオペレーターなら3件のチャット問い合わせに同時対応できるようになったので、想定以上の業務効率化が可能という確信が生まれました」(山口氏)

チャットボットを足がかりにお客さま満足度の向上も実現

今回のチャットボットは2018年1月までの試験導入だが、JR西日本ではチャットボットによる効果を改めて精査した上で、正式導入を前向きに検討する意向だという。業務効率化が実現できたことに加え、利用者からの評判も極めて良好ということが理由だ。

「ひとりのオペレーターが同時に2~3件の問い合わせに対応できるので、想定以上の業務効率化が見込めるという手応えを感じています」

「業務効率化の効果を確認できましたが、さらに想定以上の効果として、お客さまの満足度が非常に高いことも分かったのです。チャット利用者に対してアンケートを実施した結果、約5割という非常に高い回答率に加え、アンケート結果も『とても良い』『良い』の評価が95%に上り、非常に高い評価をいただきました。テレビニュースをはじめ多くのメディアにも取り上げられ、社会的な反響もあったと考えています」(山口氏)

忘れ物の問い合わせ対応にチャットボットを導入した「JR西日本お客様センター」。業務効率化と現場の声をもとにした定型文機能の実装により、オペレーターの評判も上々だ。

「さらにアクセシビリティ面において、電話によるお問い合わせが難しい身体の不自由なお客さまから『助かる』という声をいただいたのをはじめ、電車の中など電話が掛けられない状況でも、あるいは電話が面倒と感じている10~20代の若い世代のお客さまからも、『問い合わせがしやすかった』という反響をいただいており、潜在的なニーズを顕在化することもできたと感じています。今後はAIの活用を視野に入れながら、さらなるお客さま満足度の向上と業務効率の向上を目指したいと考えています」(渡辺氏)

また、チャットボットの開発にあたったKDDIに対する期待も大きい。
「今回のチャットボット導入に際しては、KDDIに開発から運用までのすべてに携わっていただいたことで、当社のニーズに合ったオリジナルのシステムを実現してもらえました。今後も当社にとって本質的な課題解決につながるような支援をKDDIには期待しています」(渡辺氏)

「お客さま満足度―CSのさらなる向上とコールセンターの業務効率化を同時に進められる施策をどんどん取り入れていきたいと考えています」

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