2018 11/14

デジタルトランスフォーメーション

日本企業のデジタルトランスフォーメーション
直面する課題と解決策
自社の経験を生かし顧客企業のデジタル変革を支援するKDDI

デジタルビジネスにとって「通信」は不可欠なプラットフォームだが、日本の通信インフラを支えてきた企業であるKDDIにとっても、破壊者の脅威は決して他人事ではない。今やビジネスの境界線が揺らぎ、異業種間競争の時代に突入しているからだ。こうした中、KDDIは自ら変革にチャレンジし、日本企業がデジタル変革を進めるうえで直面する数々のハードルを乗り越えてきた。そのキーパーソンが、日本企業のデジタル変革への指針を語る。

KDDI株式会社 理事
ソリューション事業本部
ソリューション事業企画本部長

藤井 彰人

縦割りを解消し小さく始めて大きく育てる

─ 破壊的なライバルの出現など、従来のビジネスモデルの変革を迫られる通信業界の動向について、どのように感じていますか。

藤井(以下・略) この劇的な変化が〝ピンチ〟なのか、〝チャンス〟なのかは考え方次第でしょう。ICT事業全体で考えると、私はキャリアがICTサービスの触媒になり、新たな価値をご提供できる素晴らしいチャンスだと捉えています。ネットワークサービスとしてのICTは拡大していますし、サブスクリプションビジネスとの親和性も高い。通信プラットフォームの提供とともに、お客さまのビジネス創造を支援していくことができます。

─ KDDIが自らデジタル変革に率先して取り組んでいる理由はなんでしょうか。

多くの企業がAIやIoTなどを活用した新しいビジネスの創造を迫られる中、そのプラットフォームを提供する企業としてデジタル変革は避けて通れないからです。

デジタル変革が目指すところは、新たな価値創造です。これからは、既存事業の価値を高めるだけでなく、これまでの領域から飛び出して新たな価値を創造していくことも求められます。

そこで、新たな価値創造に適した組織とプロセスをまず整えようと考えました。最初に手がけたのは企画開発手法(社内プロセス)の変革です。当社を含め、従来型の日本企業では企画・開発・運用が縦割りに組織され、バケツリレーのように開発が行われていました。しかし、今の時代、当初の企画がそのまま成功する可能性はかなり低い。これからのビジネス開発は、小さく始めて実装とテストを繰り返し、失敗したらすぐにフィードバックして改善する(あるいは捨てる)、成功したら大きく育てていく──というサイクルを速く回すことが必要です。そのため、当社では5年前にアジャイル開発手法を導入しました。

具体的には、上層部がリスクをとり、プロダクトの責任者に権限を委譲。そして、製品ごとに企画、開発、運用の人員を一つの部屋に集め、一体となって作り込む「スクラム手法」によって自律的なチーム作りを行いました。最初は数人の組織でしたが、今は「アジャイル開発センター」として独立し、200人規模に。サービスリリースまでの期間短縮や効率的な開発、技術力向上などで効果が上がっています。

─ 新しい企画開発手法を、どう組織に根付かせ、運用してきたのですか。

最も大切なのは、チームのメンバーがプロジェクトに専念できる環境を整えることです。製品・サービスの改良、あるいはプロジェクトの成功に向けて全員が共通の目標を持つ。重要なだけに、ここが一番苦労するところです。日本企業では、一人の社員が複数の業務を抱えていることが多いのですが、そこは現場のマネジャーを粘り強く説得して実現しました。

もちろん抵抗がなかったわけではありません。でも、実は現場のエンジニアはアジャイル開発についてすでに関心を持っている人が多かったのです。もともと日本の大企業には優秀な人材が多い。米国流のやり方をそのまま実践とはいきませんが、日本の人事制度や文化を踏まえて工夫すれば、必ずデジタル変革を推進できる組織作りは成功するでしょう。まずは小さく始めて、うまくいったらその状態を拡大する。このカイゼン手法は日本企業に向いていると思います。

通信事業者としてのDNAと信頼が強み

─ では、アジャイル開発がKDDIの強みといえるでしょうか。

アジャイル開発という手法が加わったことで、当社の強みが増したと考えています。もともとの当社の強みは、4000万を超えるauユーザーと20万を超える基地局、国内全域と海外をカバーする通信基盤です。そして、24時間365日いかなる状況でも通信ネットワークを守るという固い覚悟と使命感です。例えば、あるサービスを終了する時、当社では終了後のお客さまのサポートまで徹底して考え、可能な限りフォローします。じつはこれ、契約した業務を遂行する外資系企業文化の中で働いてきた私にとって驚きでした。今では、そうした姿勢がお客さまの信頼につながっていることがよく分かります。綿々と受け継がれてきた社会インフラを担う通信事業者としてのDNAも、当社の強みの一つといえます。

顧客企業とともにイノベーションを目指す

─ 一方、ベンチャー支援プログラム「KDDI∞(無限)ラボ」の運営や、IoTプラットフォームを展開するソラコム、システム開発会社のアイレットをグループに迎えるなど、外部の技術やアイデアを積極的に取り込んでいます。その狙いは。

デジタル変革によってビジネスを創出し、それを高速で進化させるためには、残念ながら当社の力だけでは難しい。技術の種を育てることや、外部企業とのコラボレーションが不可欠です。だからこそ、パートナー企業から学び、共創する関係性を築いてきました。

ICTが高度化し、IoTやAI、さらには5Gなどの先端技術が身近になった今、イノベーションの機会はどの企業にも等しくあります。今夏、お客さまとともに新たなビジネスを創出するために東京・虎ノ門に開設した「KDDI DIGITAL GATE」は、まさにそれを実践する場。当社の変革をリードしてきた人材に加え、スタートアップや企業、自治体、大学などさまざまな人材が集います。創造性を刺激し、事業共創と人材成長を目指す場として、ぜひご期待いただきたいです。

─ 日本企業がデジタル時代にも強い競争力を持つためには何が必要だと考えますか。

企業の内部に秘められている力を、どう開放していくのか、その点に尽きます。社内だけで議論していては、どうしても自社の利益だけに目が向きがちです。外に目を向け、多様な人材やスタートアップのアイデアなどを貪欲に吸収しながら変革を推し進めていくことが求められます。

KDDIは、柔軟なICT基盤と外部企業との共創の場のご提供、当社が実践してきた変革の経験を通し、お客さまのデジタル変革を全力でサポートしていきます。ぜひ一緒に、世の中をワクワクさせるイノベーションを起こしていきたいと思います。

本記事は「DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー」(2018年10月号)および「DHBR.net」に掲載されたコンテンツを転載したものです。

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