アジャイル型組織づくりを学ぶ、ワークショップ付きイベントを開催 ビジネス開発拠点「KDDI DIGITAL GATE大阪」

2013年、KDDIは自社の開発体制を刷新するための組織改革を行い、一部サービスの開発をウォーターフォール型からアジャイル型へとシフトした。当初はたった5人のメンバーから始まったアジャイル型企画開発の取り組みだったが、3年後の2016年には総勢200人を擁する「アジャイル開発センター」を設立するに至った。

その後、同センターで蓄積したナレッジ・ノウハウを顧客企業にも提供し、顧客とともに新たなビジネス創出を行う場を開設しよう、という動きが生まれた。その施設こそが、2018年に東京・虎ノ門にオープンしたビジネス開発拠点「KDDI DIGITAL GATE(以下、DIGITAL GATE)」だ。DIGITAL GATEでは、デザインシンキングを体験できるワークショップ、PoC(実証実験)、実際のビジネスにつながるプロトタイプ開発を、アジャイル型企画開発手法を用いながら手掛けている。

こうした流れを受け、KDDIはDIGITAL GATEを他地域にも展開。2019年9月にオープンした大阪拠点である「KDDI DIGITAL GATE OSAKA」もその一つだ。東京と同様、オープン以降定期的にセミナーやワークショップを開催している。本レポートでは、2020年2月に開催されたイベント「KDDI DIGITAL GATE Forum@関西」の模様をお伝えする。

DX時代を牽引する企業組織 キーワードは「顧客起点」「アジャイルな組織」「スクラム」

本フォーラムのテーマは「アジャイルな組織へ変わるためのヒント」「アジャイルな組織がもたらすチカラ」。前半は講演、後半はワークショップという2部構成で、企業が「攻めのデジタル戦略」を成功させるために必要な組織体制について、参加者とともに検証・考察を行った。前半の講演には、KDDIメンバー1名と、外部有識者2名の計3名が登壇。各講演で提示された重要キーワードを中心にレポートする。

キーワード① 顧客起点のDXによる顧客価値創出へ

一つ目の講演に登壇した南山大学 理工学部 教授の青山 幹雄氏が提示したキーワードは「顧客起点」だった。
青山氏は、DXの目標の一つは「顧客の課題を発見し、その解決を通じて新たな価値を創出し、あわせて事業を創出すること」だと説明。そして、課題を発見する際に重要なアプローチが「顧客起点」なのだと強調した。

「顧客起点で課題を発見するためには、何よりもユーザーを深く理解する必要があります。具体的には、企業都合の組織体制やビジネスプロセスを踏襲するのではなく、プロジェクトチームを組成する段階からユーザー視点に立つべきです。その上で、誰が何のために行うサービスなのか、ゴールはどこなのかを、明確に定義することが重要です」(青山氏)

顧客起点を念頭に開発された組織体制・思考プロセスが「アジャイル型組織」であり「デザイン思考」だと青山氏。Google、Amazon、Airbnb、メルカリといった先進的企業は、こうした組織体制・思考プロセスをビジネスの現場に実装できており、それがDX成功につながっていると説明した。講演では他にも、Uber、米国Citi Consumer BankのDX成功事例について詳しく触れた。

キーワード② アジャイルな組織で実現するデジタル変革

続いて登壇した、KDDI DIGITAL GATE OSAKA ビジネスデザイナーの宮永 峻資が提示したキーワードは「アジャイルな組織」だ。宮永は、KDDIが2013年から取り組んでいるアジャイル型組織運営ならびに開発フローについて詳しく説明した。

「かつてのような縦割り組織やウォーターフォール型の開発フローではなく、部門横断で組成したチームで開発を進めること。そしてマネジメント層は、チームがスピーディかつ自由に動けるよう、権限を委譲することが重要です」(宮永)

チームには、必要な能力を備えたメンバーだけを集め、できるだけコンパクトに構成する。また、サービスやプロダクトは必要最小限の機能を備えた段階で、素早く市場にリリースする。そしてユーザーに実際に使ってもらいながら得たニーズや問題点を素早くフィードバックし、再び素早くリリースする――このトライアンドエラーのサイクルを繰り返すことがポイントだ。

このようなアジリティ(機敏性)の高い組織体制やビジネスプロセスが採用され、正しく機能した先に、青山氏が指摘した「顧客起点に立ったサービス」を、スピーディに市場にリリースすることが可能になる。実際、KDDIの「auでんき」(2016年にスタートした、auユーザー向けの電気サービス)は、アジャイル型組織ならびに開発手法によって生まれたサービスだという。

キーワード③ スクラム導入によるイノベーション組織への変革

最後の講演のキーワードは、アジャイル型企画開発手法の一つである「スクラム」。スクラムを実践するために必要なトレーニングなどを提供するScrum Inc. Japan 代表取締役社長の荒本 実氏が登壇し、スクラムを導入する効果、グローバルにおける導入状況などについて紹介した。

「スクラムは世界で最も普及しているアジャイル型企画開発手法であり、部分的な適用も含めると、アジャイル型企画開発の約70%を占めるとも言われています。導入企業もグローバルかつ多様で、AmazonやTeslaといった先進企業に限らず、トヨタやJPモルガンといった、いわゆる老舗の大手企業も導入しています」(荒本氏)

スクラムを導入することによる効果・効能は多い。まず、やるべきことの優先順位が明確化される。その結果、提供するサービスの質も、リリースまでのスピードも向上する。業務効率も向上し、生産性が高まる。荒本氏は、社内で常時3,000以上のスクラムチームが稼働しているAmazonの例などを挙げながら説明した。

顧客企業のニーズに応じたワークショップでDX推進をサポート

前半の講演内容を踏まえ、後半はDIGITAL GATEで実際に行われているワークショップをベースとした特別体験プログラムを実施した。プログラムのゴールは、参加者一人ひとりが「アジャイル型組織の運営が成功している状態」「アジャイル型組織が実現した先にある、自社が成功した未来」を具体的にイメージすること。大手メーカーや不動産会社を中心に、スタートアップを含め幅広い企業が参加した。

今回のイベントは、「アジャイル型組織づくりを学ぶ」というテーマにフォーカスして講演やワークショップが行われた。しかしDXを実現するためには、冒頭で青山氏が紹介したように「顧客起点」を意識したデザインシンキングをはじめ、新たに身につけるべき知識や考え方、取り入れるべき手法、乗り越えるべき壁が、他にも数多くある。そしてこれらの課題は当然、業界や企業によっても異なる。そこでDIGITAL GATEでは、顧客企業から要望をヒアリングし、ニーズに合わせて内容や期間をカスタマイズしたワークショップを全国各地で展開することで、DXの実現をサポートしている。

例えば、DIGITAL GATEで提供している正式なプログラムの一つに、デザインシンキングを実践する方法論「デザインスプリント」を体験できるものがあるが、同プログラムも顧客企業のニーズに合わせて、1日集中で実施する「1 Day Sprint」から数カ月間かけるプランまで、さまざまな形で提供している。

DXの推進を本気で考えているが、どこから着手したらよいのか分からない。あるいは、すでに取り組みを始めているが、思ったような成果が出ていない。このような企業は、まずはDIGITAL GATEが開催している定期ワークショップに参加することで、DX実現に向けた新たな一歩を踏み出してもらいたい。

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