KDDI株式会社 ビジネスIoT企画部 日下 規男
IoT向け通信規格LTE-M (Cat.M1) を活用し開発したIoTごみ箱を用いた実証実験。
置くと、ごみがすぐに”あふれてしまう”。
観光地の店の前からごみ箱が廃止された理由
沖縄の「国際通り」は県庁前の交差点から始まる有名な繁華街。デパートからお土産屋、レストラン、コンビニやホテルが通りに並びますが、それらの店の前にごみ箱はありません。通常ごみ箱を設置しているコンビニエンスストアチェーンのお店でも、対応できない量のごみが持ち込まれるので、ごみ箱を廃止しているところが多いといいます。
省電力広範囲をカバーするLPWA (LTE-M) を活用し、
低コストでモニタリングシステムの構築を実現
IoTごみ箱には、その上部に距離センサーと温度センサー、そして小型タイプのコンピュータRaspberry Pi (ラズベリーパイ) とLTE-M通信モジュールを設置。たまったごみの量を計測する距離センサーが寒暖差で誤差を生むことがあるので、温度センサーで温度を計測し、コンピュータが補正の計算を行います。そして、算出されたデータを1分間隔でLTE-M通信モジュールによってサーバーに送信。省電力で長距離の無線通信ができる次世代のIoT向け通信技術LPWAを採用することで、1日1回の充電で終日の使用が可能となりました。
モニタリングにより、適切なタイミングでごみの回収が可能となり、
回収にかかるコスト削減なども期待される
監視センターでモニタリングされているごみ箱の様子は、数値だけでなくごみの残量によってブルー、グリーン、赤というように色で可視化されました。LTE-Mの通信モジュールを所持しているごみの回収チームにはごみの量が80%を超えると、通知が届きます。監視センターとごみ回収を担当した、障がい者によるIT作業所「サンブリッジ」代表の迎里崇雅さんは、「監視を通じて社会に参加することがうれしく、自信につながるというスタッフもたくさんいました。ぜひ事業化していただきたいです」と話します。
また、店舗の前にごみ箱を設置した「御菓子御殿」の當間明子さんからは、「ごみ箱ないんですかという観光客の方からの声は多く、今後も置いてもらえると、とてもありがたいです」との話がありました。
実証実験は2017年9月2日から1週間にわたって実施されましたが、その後も実用された際の有効性や、電波はきちんと浸透しているのかなどの検証を引き続き行っていきます。