豊岡市が推進する無農薬栽培「コウノトリ育む農法」
水管理の効率化が、作付け面積の拡大には不可欠
豊岡市で取り組んでいる「コウノトリ育む農法 (無農薬栽培)」では、雑草対策として通常よりも深く水を張る必要があります。あわせて、農薬を使わない代わりに、害虫を食べるカエルやヤゴを増やすためにも、通常よりも長い期間、水を張る必要もあります。
「コウノトリ育む農法」では、こまめな水管理を行うため、水田の見回りにかかる労力が、大規模農家による作付面積の拡大を阻んできました。
豊岡市の大規模農家の耕作地は、区画が小さい上、数地区にまたがっていることが多く、水管理作業が非効率でした。かつ、その非効率な作業が労働時間の約50%に相当するのです。水田に水位センサーを設置し、異常時にメールで通知が届いて、スマートフォンやタブレットで水位が確認できれば、大きな負担軽減につながると考えました。
IoTに最適化された低価格小容量の通信規格「LTE-M」
単2電池3本で約6カ月稼働
水位センサーには、消費電力も少なく、通信エリアも広い規格「LTE-M」に対応した通信モジュールを搭載。1時間ごとに水位・水温・地温の各データをクラウドサーバーに送信し、パソコンだけでなくスマートフォンやタブレットでも水位を見ることができる上、各データの異常値をメールで知らせることも可能になりました。異常値はセンサーごとに設定変更が可能であり、水田ごとの特性を理解して設定すれば、ノウハウの継承にも役立つでしょう。
安定した品質と収量向上を目標に実証実験にかける期待は大きい
実証実験に参加している農家からは「自宅にいても水田の水位や水温の変化が視覚的に確認できるのは助かる」「これまで見回り作業が大変だったので、少しでも楽になれば」と大きな期待が寄せられています。
豊岡市では「スマート農業プロジェクト」を、水管理の省力化だけでなく、稲の生育のムラを解消し、収量の向上および品質の安定化につなげられるよう検討を続けています。あわせて、IoT技術を活用した実証実験を進める中で、若い人たちの農業への関心が高まることも期待しているようです。
構成図