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5G/IoTの共創で“製造業のビジネスモデル”に革命を
必要なのは「仕事の垣根」を超えるためのエコシステム

5G/IoTの共創で“製造業のビジネスモデル”に革命を

製造業固有のネットワークの課題。
それを乗り超える上でも、5Gが突破口になる

藤井DE (デジタルエボリューション) という発想にはとても共感します。そもそも私がKDDIに参画しようと思ったのも、通信が何かと何かをつなぐことで価値創出範囲エボリューションするものだと感じたからなんです。歴史をふり返ってみても、国際電話回線がつながったことで貿易というビジネス可能性格段に広がりましたし、インターネット回線普及したことで小売業世界にECという新しい可能性が生まれて膨らみました。だから今回、IoTによって世界中製造業をつなぐことができたなら、間違いなくまた新しい可能性が見えてくるでしょう。もちろん、通信キャリアとして5GやLPWA (Low Power, Wide Area) などが持つ可能性もこの取り組みにどんどん取り込んでいきたいのですが、こうした技術優位性は、それを最大限に活かせるサービスがあって初めて生きてくるのだと捉えています。

島田氏同感です。しかし、とりわけネットワーク環境について、製造現場には特殊事情がありますから、われわれだけでなくKDDIさんやソラコムさんの力がなければ超えていけない壁があるんです。BtoCの事業オフィス環境世界では、キャリア用意してくれたネットワーク網が行き渡っているので、その利便性湯水のように活用できるのですが、例えば工場内専用線ですし、公共交通機関などには一般回線のようなものは一切使われていません。要は分断されているのですが、そういう事情はあまり知られていませんね。IT界隈の人たちは「データ活用がしたいのならば、Javaで簡単に取れるでしょう」と言うけれども、「できません。そんな風にはなっておりません」ということになる (苦笑)。

片山氏そうなんですよね、アプリケーション1つでなんとかなると思われているけれども、そうはいかない事情が重くのしかかかっています。

島田氏「JSON (JavaScript Object Notation) でデータをやりとりすればいいじゃないか」というけれども、そうはいきません。それが可能になれば、ずっとリーズナブル価格ネットワーク駆使したり、クラウド上でさまざまな事ができるようになったりするのですが、「クリティカルです」「セキュリティです」「セーフティです」という別次元の壁が立ち塞がっているのです。これはとても大事なことです。工場では何かが起こると作業員生死がかかってきますから、専用線セキュリティ確保しなければなりません。ただ、その重要性担保しながらなんとか乗り越えていきたい、そうすれば旧態依然クリティカル世界大幅に変わっていきます。そういう意味で5Gは1つの大きなきっかけになってくれる可能性があると考えています。

片山氏データが同じインフラ上あり、かつ高速大容量回線が使えることでデータの重さに引きずられずに処理を行うことができるのがクラウド利点です。大容量通信できる5Gが普及すると、より多くのデータクラウドに集められることはもちろんですが、例えば逆に、工場に置いてあるデータにもクラウドからアクセスがしやすくなります。島田さんがおっしゃる通り「壁を超える」上でよいインパクトになりますね。。

島田氏今の工場にある回線ウェブのようにURLで簡単につながるように設計されていません。そうすると複数部署からデータアクセスしようとしてもそもそもできない状態にあるんです。データはいくらでもあるのに、アクセスできないというジレンマがあります。

藤井鉄道網電力網インターネット電話通信網もそうなんですが、ピアtoピア数箇所がつながっているだけでは大きなインパクトを生まないけれども、それがネットワークになると「できること」が格段に違ってきます。鉄道が網の目状ネットワークを成していったことで、旅行業不動産業発展したし、電力網発展したことで家電産業が育っていきました。ですから、IoTであらゆるモノデータ取得し、それがネットワーク上で縦横につながるようになれば、全く新しいビジネスが生まれやすくなります。

島田氏大事なのは値段で、もっと下がらないといけないと思います。MQTT (注1) という通信プロトコルなども元はといえばそのためのものでもあったのですが、さらにそれを超えて安くなるといいな、と願っています。

藤井通信事業者立場で言えば、基地局設置などにとてつもない投資をすることになります。5Gにしても同じことです。でも、もしも製造業が例えばサービス化の方向変革を遂げていくのであれば、こういった投資コストも超えていける。だからこそ「一緒にやらないと駄目だな」と思っています。

島田氏本当にその通りですね。4Gの導入が始まった時にしても、フィーチャーフォンを使い続ける前提だったなら、大して意味がなかったですよね。

グローバルIoTパッケージの概要図。詳細は以下。
グローバルIoTパッケージの概要。
データの収集・蓄積から見える化、API連携までカバーし、
顧客のグローバルIoT展開を支援する (前篇記事の再掲出)

片山氏確かにフィーチャーフォンテキストベースでのデータのやり取りですから、回線スピード容量が上がってもさして意味はないですね (笑)。

島田氏0.01秒だったものが0.001秒でつながったからといって何の価値になる、という話ですよね (笑)。でも、スマートフォンが出てきて事態は変わり、あのスピード容量活用したサービスが次々に4Gに乗って世の中も変わりました。同じように、5Gにしてもアプリケーション必要なんです。5Gの低遅延性を活かすクリティカルインフラにおけるアプリケーションが。

藤井だからこそ、通信業製造業一緒対等立場で創り出すのが必要だと確信しているんです。ただし、この2者だけでは不完全で、ソラコムさんという存在がどうしても必要でした。AWSにせよ Google にせよ、最初から成功したサービスなんて1つもないわけで、サービス提供し続け、データを取りながら、改善サイクルソフトウェア文化を使ってスピードアップしていくことで、彼らは成功糸口を掴んだといわれています。ソラコムにある技術力はもちろんのこと、西海岸ソフトウェア企業同等スピード今回連携でも鍵を握っていたと思っています。

  • 注1) MQTT:Message Queue Telemetry Transportの略で、publish/subscribeモデルという仕組みに基づいてつくられた軽量メッセージプロトコル
    ネットワーク不安定場所や、性能が低いデバイスでも動くように軽量化されているのが特徴で、TCP/IP ネットワークベースに作られている。

異領域連携のワンチームでエコシステムを創り、
イノベーションを実現する

片山氏ソラコム企業規模は小さいのですが、ソフトウェア領域労働生産性が高いので、例えばプロトタイプを作る場面でも、通信環境クラウド、それにそのビジネス責任持って進めてくださる方々が数人いればどんどん進めていけます。ですから、われわれの企業規模でも十分貢献していけると思っています。

藤井純然たる製造業一緒にIoTのプロジェクトを進める時などに、異領域ゆえのやりづらさを感じることはないんでしょうか?

片山氏ないですね。もちろん使う言語も違うし、現場にうかがっても例えば工場制御装置であるPLCですとか、わからないことだらけなのですが、話をしていくうちに例えば「PLCからこのデータクラウドに上げられます」なんてことを伝えると、むしろ驚かれたりするんです。そういうきっかけから話がしやすくなって「これが取れるなら、これも取りたい」とか「それって集計できるの?」と話がどんどん進んで膨らんでいきます。むしろ相性がよいともいえますね。「こういうことが昔からやりたかったんだよ」という方が実はたくさんいるのが製造業だと思っています。

藤井そういう風にビジネスドメインの違う人たちが、互いにリスペクトしながら1つのチームにまとまった時に、新しいものって生まれるんですよね。今までは製造業生産ラインソフトウェアインテグレーションとがバラバラだった気がするんです。それがネットワークを通じて1つのパッケージになれば、イノベーション可能性グッと上がっていくでしょう。

島田氏おそらく標準化アーキテクチャ再定義が起こるでしょうし、グローバルで違いを出していくためにはそうならなければいけません。各国による通信環境の違いであるとか、技術的制約を超えていくためにも、製造業だけでもがくのではなく、異種格闘技一緒になって戦う必要があります。

片山氏例えば当社ローミング技術やAPIを提供することで、海外通信を使う際の各国の違いをうまく吸収できれば、そのネットワーク上でグローバルビジネスを行うことが容易になりますよね。今回の「グローバルIoTパッケージ」でも、3社がお互いのよいところを出しあってコラボレーションを進めていくことで、利用してくださる企業には確実ビジネスチャンス模索してもらえるはずです。

藤井さまざまな課題があることは今日の話し合いでも見えてきましたが、「まずやってみる」というスタンスで始めてくれたらいいのではないかと感じました。会議何度も繰り返して、叩きに叩いた机上プラン仕上げてみても「それがうまくいくのかどうか。儲かるのかどうか」なんて誰にも分からない、そういう時代です。小さく始める形で構わないから「まずやってみる」。そういうきっかけになったら、日本のDXも大いに前進するし、製造業ビジネスモデル転換にもつながるはずだと考えています。

島田氏今日お話できたのはほんの一端でしかなく、本当数多くの新しいチャレンジ東芝グループでは進めているのですが、そのたびに「これで日本世界で勝てますか?」という質問を受けます。一概には答えにくい質問ですが (笑)、あえて言わせてもらえば「勝てます」。今回の「グローバルIoTパッケージ」で実現したように異領域同士がしっかり連携してワンチームサービススタートし、そういう動きがエコシステム創出につながり、その輪に異領域同業他社も加わっていったなら、必ず日本は輝きを取り戻せる。私はそう信じています。