「UPDATE OUR BUSINESS~つながるチカラで、ビジネスにシンカを~」をテーマに展開する「KDDI BUSINESS SESSION 2021 online+」。メインセッションの後半では、「さあ、お客さまと未来をつくろう」というテーマで、さまざまな業界でのアップデートが紹介された。
メインセッションの後半では、執行役員 ソリューション事業本部 ビジネスデザイン本部長の那谷 雅敏が登壇。
「いまビジネスの現場で重要なことは、車のフルモデルチェンジのように大きなアップデートではなく、小さなアップデートの積み重ねだと思います」と切り出した。
混乱を招きかねない急激な変化にいきなり取り組むのではなく、小さな変化に順応しながら進めていく“慣れの期間”を作ることこそ、結果的には大きな変化の実現につながると考えるからだ。
本パートでは、那谷のナビゲートによって、さまざまな業界におけるアップデートの実践例が紹介された。
最初に、電気通信事業者 (PNJグループ) 9社とのディスカッションを通じて、全国各地の働き方の変化を紹介。コロナ禍をきっかけに日本全国で一斉に働き方の変革が起こり、都市部ではテレワークが浸透。
一方で、各地域ではどのような働き方の変化が起きているのだろうかという那谷の問いかけからディスカッションはスタートした。
PNJ各社様からは、「製造業など地域の主要産業構造から、テレワークが実施できていない」「企業のDX実践のニーズが高まり、コンサルティングから設備構築までを専門とする部隊を立ち上げた」「学校でオンライン授業が増えるなど、個人の暮らし方においても変わりつつある」といった各地域での変化が紹介された。
那谷 雅敏
これを受け那谷は、「各地の事情によって、働き方に限らず、暮らし方への変化もあることがよく分かりました。KDDIは今後も、PNJ各社様と協力し、新たな働き方や暮らし方を支援していきたいと思います」と話す。
続いて那谷が紹介したのが、大規模なインフラを管理運営している事業者の取り組みだ。中日本高速道路株式会社様は、道路利用者の位置情報とAIによる行動変容技術を活用し、新たな渋滞緩和対策の実証実験を実施。位置情報から行動特性を分析し、利用者の特性に合わせた情報配信を行うことで、より効果的な迂回経路の通知が可能となった。
またJR西日本グループ様は、駅ナカなど周辺施設の体験価値を高めることで、利用者の体験をアップデートする取り組みをしている。改札機のビーコンとau Wi-Fiを組み合わせ、駅利用者へ位置情報を基にした最適なタイミングでのクーポン配信の実証実験を行った。その結果、周辺施設の利用率やアプリでの決済率が跳ね上がった。
「どちらの事例も、データを活用してお客さまに行動変容を促した点がポイントだと思います。移動体験にデータを掛け合わせることで、これからも新しいビジネスが生まれていくのでしょう」(那谷)
医療分野では、シーメンスヘルスケア株式会社様の取り組みが紹介された。デジタルカンパニーへの変革を目指す同社は、「医療のデジタル化推進」や「患者様の満足度向上」などにグローバル規模で取り組んでいる。その一例として紹介された移動型医療ソリューション「Medical-Connex (メディカル・コネクス)」は、大型バスの中に画像診断装置などを搭載したもので、平時には過疎地医療にも活用でき、災害時には災害拠点病院とデジタルテクノロジーで接続することで、迅速な診断を実現する。
また、国内空港リソースの共用化に取り組み、システムの一部を共同利用することで、利用者により分かりやすい旅客導線を提供することを目指すアビコム・ジャパン株式会社様の取り組みや、ベトナムの港湾都市ハイフォン市にあるDEEP C工業団地様におけるベトナム初となるIoT活用による工業団地のスマート化事例が紹介された。
デジタルを活用し、社会課題の解決を目指す
企業だけではなく自治体も盛んにアップデートが進められている。東京都渋谷区では、2021年9月から「高齢者デジタルデバイド解消事業」を推進。きっかけとなったのは、2019年、台風19号が東京に接近した際に、自主避難所を設置してホームページやSNSで周知したが、高齢者にはインターネットを介した情が十分届かなかったことであった。
同事業では3つの取り組みを進めている。
実証実験として、希望する高齢者に区が一定期間スマートフォンを貸与し、利用データの収集分析を行う「スマホ貸与事業」、スマートフォン操作の困り事や悩み事を解決するための個別相談を行う「なんでもスマホ相談事業」、高齢者にスマートフォン操作などを教えるデジタル活用支援員を認定する「デジタル活用支援員事業」だ。
渋谷区 高齢部 福祉課 高齢者デジタルデバイド解消 推進主査 丸山 陽子 様は、「従来型携帯電話のほうがよいとおっしゃっていた方も、操作に慣れていくうちにスマートフォンの便利さに気付いて、積極的に使ってくださるようになっています」と、高齢者からの評判の一部を紹介。
また、渋谷区 高齢部 福祉課 高齢者デジタルデバイド解消 担当課長 阿部 圭司 様も、「スマートフォンの利用が広がり、ご高齢者に非来庁型のサービスが浸透することで、手続きにかかる時間や手間を少なくし、より充実した生活を送るお手伝いができると考えています。そのため、現在さまざまな手続きをスマートフォンでできるようサービス強化をしています」と語った。
推進主査 丸山 陽子様 (左)
担当課長 阿部 圭司 様 (右)
続いて登壇したのは、電源開発株式会社の取締役常務執行役員 嶋田 善多 様だ。同社では、水力、風力、地熱発電で計約900万キロワットの再生可能エネルギーの設備を保有し、保守業務のスマート化が重要なテーマとなっている。遠隔化、自動化、可視化、データ集積解析といった視点で、人に頼らずデジタル技術を駆使して、安全にスピーディーかつ的確にデータ収集を行い、保守業務に役立てることを目指している。
「例えば風力発電機の保守点検では、いかに省力化、合理化できるかが一つのポイントになっています。これまでの人力での点検作業では、危険を伴い時間がかかる点検項目もありましたが、KDDIのドローン技術を適用し、高精度な画像解析を活用することで、従来と比べて10分の1の時間で点検ができるようになりました」(嶋田様)
また、嶋田様は今後の展望を次のように語る。
「実際に業務に当たる現場の方々が、変化をメリットだと感じられるかを一番に考え、DXを拡大していきたいと思っています。将来の事業拡大も大事ですが、まず足元を固めていくことも大事な仕事だと思っています」(嶋田様)
嶋田 善多 様
那谷は自身のセッションの締めくくりとして、「2021年度からソリューション営業本部をビジネスデザイン本部へと改称しました。ビジネスデザインという言葉には、お客さまとともに課題を探索し、ともにビジネスをデザインしていきたい、そんなビジョンを込めています。自らお客さまの現場へ足を運び、現場の課題を共有させていただくことに加え、お客さまとともに事業の未来を語り合える存在になれるよう努力していきます」と今後の抱負を語った。
最後のセッションでは、KDDI法人ユーザー会 会長である株式会社三菱UFJ銀行 執行役常務 グループCIO の亀田 浩樹 様とKDDI 取締役執行役員専務の森 敬一が対談を行った。
「金融ビジネスのアップデートによって社会はどのような変化が起きるのか」という問いかけに対して亀田様は、
「昨今、金融機関ではフィンテック企業との連携やテクノロジーの進化によって、チャネルのあり方や提供するサービスが変化してきています。金融サービスは多くのお客さまの事業を裏側で支えるものであり、空気のように利用されることが一番です。その上で、さまざまな業種、業界によりよいサービスを提供する『金融プラットフォーマー』を目指していきます」と展望を語った。
亀田 浩樹 様 (右)
森 敬一
また亀田様は、KDDI法人ユーザー会 会長として、「業種は異なっても、共通する課題はたくさんあります。その課題をフックに法人ユーザー会のメンバー同士が連携してシナジーを生み出したり、新しいビジネスを共創できればよいと思っています。また、法人ユーザー会からもサービス拡充などの提言や要望をすることで、KDDIと会員企業のアップデートがさらに進むと思います」とKDDIへの期待を語った。
「KDDI BUSINESS SESSION 2021 online+」全体のナビゲーターを務めた森は、「皆さまと一緒に課題の解決策を考え、ともにビジネスをアップデートできればこんなに嬉しいことはありません。そして、そうした活動が社会をよりよくすることにもつながればと願っています。今後もKDDIにぜひご期待ください」と、イベントを締めくくった。