2022年2月25日、KDDIはオンラインセミナー「KDDI SOLUTION DAY 2022」を開催。
昨年に引き続き2回目となる今回はより踏みこんだ内容に。目まぐるしく変化する時代の潮流をとらえ、DXの新機軸を模索する。
全17講演で構成されたセミナーは「DX人財の育成」「働き方改革」「5G」「データ分析」などあらゆる分野にまつわるDXを究明。社内外の識者によって、最先端の知見がセミナー参加者に共有された。本記事ではその一部を紹介する。
Keynoteでは「新時代のいま、ビジネスを加速させるとき」をテーマに、KDDI株式会社 執行役員 ソリューション事業本部 サービス企画開発本部長の藤井 彰人と早稲田大学大学院 早稲田大学ビジネススクールの入山章栄教授が意見を交わした。
プロローグで登壇した藤井は、国内の統計情報をもとに、DXを進めている企業が全体の約3割程度にとどまっていることを懸念。
「世界をキャッチアップする意味でも、国内のDXをさらに加速させていかなくてはなりません」と、改めて強調した。
藤井 彰人
入山教授は自身の専門分野である「経営理論」を通じて、DX導入にまつわる“3つの誤解”について切りこんだ。1つ目の“誤解”に挙げたのは、多くの企業がDXに過度の期待を抱き、DXが目的化しているということ。DXはあくまでも手段に過ぎないため、企業はどのような目的で導入するのかを明確にする必要があるという。
入山 章栄 様
「DXを導入すれば会社がなんとかなる、とDXを打ち出の小槌のように考えている企業が少なくありません。しかし、DXはただの手段です。企業の方向性を定め、将来像を描いた上で、不足している部分をデジタルで補うことが本来のDXなのです」
2つ目の“誤解”では、DX導入が先行してCX (コーポレートトランスフォーメーション) がおざなりになっていることに触れ、脱・経路依存性の重要性を説いた。
また、コンピューターサイエンティストにDX推進の旗振り役を求めていることを3つ目の“誤解”とし、DXを成功に導く人材や養うべきスキルについて提言した。
さらに「イノベーションは、既存の“知”と既存の“知”の掛け合わせで生まれる」と展開。しかし、創業が古い企業ほど掛け合わせのパターンが枯渇しがちになるという。
また、「デジタルを活用すれば日本企業も世界と十分に渡り合える」との発言も。インターネットやスマートフォンの普及がはじまった2000年代は、入山教授がいう「第一次デジタル競争」の真っ只中。この時代、日本企業はGAFAに大敗を喫した。しかし、スマートフォンが定着し、IoT (Internet of Things) が日々の暮らしに浸透していくなかで、その勢力図が塗り替えられる可能性も出てきたという。
入山教授は「第二次デジタル競争」でこれから日本が勝ち抜いていくためのポイントを解説。
今後、世の中で起きる変化にも言及した上で、「近い将来、日本が得意とする分野が競争の舞台になります。今のうちに上手くデジタルを取りこみ、組織全体をトランスフォーメーションしてほしい」と、国内企業に期待を寄せた。
Keynoteの締めくくりは、藤井が再び登壇。入山教授の見識を踏まえた上で「DXは編集力」と主張した。ここでいう編集力は、さまざまな要素を組み替え、再構築して新たな価値を生み出すこと。その好例といえるのがトヨタ自動車様・ヤマト運輸様・KDDIによる連携事業だ。デジタルキーを活用して乗用車を宅配ボックス化する事例からDXの可能性を示した。
そのほか、ENERES様との連携事業では、5Gを活用して仮想発電所「VPP」(バーチャルパワープラント) を開設。
また、ビッグデータ収集と価値創出の循環をサポートする「リカーリングビジネスプラットフォーム」事業は、KDDI・Supership様・ARISE analytics様の技術が基盤になっている。
藤井は、最後に「この取り組みから、社会課題解決まで枠を広げていきたい」と、意気込みを見せた。アーカイブで配信している動画では、100年先を見据えたスマートシティ構想や作業現場における遠隔監視・作業支援なども掘り下げている。
全17講演、計24名の有識者たちが登壇した「KDDI SOLUTION DAY 2022」。
5GからIoT、サブスクリプションまで、さまざまな分野の知見が語られた。
既存の枠組みを打ち壊したソリューションがビジネスの新たな地平を切り拓く――。
講演で取り上げられた先進事例の数々は、その証左にほかならない。
先駆者たちの声をヒントに、ぜひ変革への第一歩を踏み出してほしい。