2025年で3回目の開催となった女子プロゴルフミドルトーナメント「KDDI LADY GO CUP」が12月15日に成田ヒルズカントリークラブで開催されました。この大会は女子プロゴルファーの有村 智恵プロ (以下、有村プロ)、原 江里菜プロが発起人となり、「女性の活躍を後押しする象徴的な大会にしたい」という思いからスタートしたものです。
有村プロと、大会を協賛するユニアデックス株式会社 (以下、ユニアデックス) の宮森 未来 様、KDDI株式会社 (以下、KDDI) の秋津 佳が、ライフステージとキャリア形成の両立、女性が活躍するために必要な取り組みについて語り合いました。
――有村プロが「LADY GO CUP」を立ち上げようと思ったきっかけを教えてください。どのような課題感や期待感があったのでしょうか。また、大会が実際にもたらした変化や手応えをどう感じていますか。
有村プロ 私が原 江里菜プロと一緒に「LADY GO CUP」を立ち上げたのは2022年のことです。それ以前から女子プロゴルファーの活躍をもっとたくさんの方々に知ってほしいという思いがあり、選手同士でも意見を交わしてきました。その当時は日本女子プロゴルフ協会としての発信もそれほど多くなく、選手自身が声を上げていく必要性を感じていたからです。
私自身は結婚・出産を経験する中で、ツアーから離れざるを得ないという現実に直面しました。同じ悩みを持つ選手も多く、「子どもができて第一線で活躍できなくなるのは寂しい」という声も聞こえてきました。
それならば、短期間でも選手同士が集まって競技ができる場をつくれないかと考え、1日~2日で開催する「LADY GO CUP」に行き着いたのです。30歳以上の女子プロゴルファーによるダブルストーナメントという、従来とは異なる大会形式にしたことで、競技以外の魅力も伝えられています。
大きな成果がすぐに形となったわけではありませんが、レギュラーツアーに参戦していない選手も女子プロゴルファーとして活躍していることを知ってもらえるよい機会になりました。女子プロゴルファーのセカンドキャリアの可能性を示せたことは大きな手応えだと感じています。
宮森様 必要性を感じていても最初に声を上げ、形にする行動へ移すことは簡単ではありません。有村プロと原プロのお二方がその役割を担い、前例のない大会を立ち上げ、さらに3年も継続されている点に強い覚悟を感じます。選手の声を原動力にしながら大変さをモチベーションへと変え、周囲を巻き込み続けている姿勢がとても印象的です。
秋津 ゴルフは年齢を重ねても続けられるスポーツにもかかわらず、女性のライフイベントによってキャリアが分断されてしまうのは非常にもったいないことです。新しい場をつくるために、流れに乗るのではなく、有村プロ自身が第一歩を踏み出した行動力は本当に素晴らしく、「LADY GO CUP」の実現には大きな意義を感じます。
――有村プロはプロゴルファーとして活躍し続けながら、女性としてのライフイベント (結婚・出産など) を経験しました。そこにはどんな悩みや苦労がありましたか。それらを乗り越えたことで、ご自身に何か変化はありましたか。
有村プロ 正直なところ、いまも悩みは尽きません。子育てとトーナメント出場、解説やイベントなどの仕事も並行して行っていますが、どれも中途半端にしたくないという思いが常にあります。子育ては時間がいくらあっても足りませんし、同様に仕事や競技もすべてに全力を注ぐことはとても難しいと感じています。
とくに大変なのは予定通りにいかないことです。子どもの体調ひとつで練習計画が崩れることも多く、復帰後の1年は苦労の連続でした。それを乗り越えられたのは周囲の支えです。家族や事務所はもちろん、急な予定変更にも理解を示してくださった多くの方々のおかげで成り立っているのだと実感しています。
競技面では、限られた時間の中で何をやるべきかを精査する力が身につきました。以前のように長時間の練習はできないものの、必要なポイントに集中することで効率が格段に上がりました。すべてを完璧にこなせているわけではありませんが、子育ても仕事も自分なりの優先順位を考え、行動できるようになったことが大きな変化です。
――宮森さんも仕事とライフイベントを両立させていますが、どのような悩みや苦労があり、それらをどう乗り越えましたか。
宮森様 私は出産・育児というライフイベントは経験していませんが、キャリアの中で未経験の領域に挑戦する場面が多くありました。営業から人事へ異動し、女性活躍やダイバーシティ推進を担当することになった際は、知識も経験もゼロに近い状態でした。そうした領域で経営層や管理職の理解を得ることは容易ではなく、試行錯誤を繰り返す日々が続きました。ただ、その経験を通じて、ネガティブな意見の裏に「本当はこうしたい」という前向きな意図があると気づいたことで、逆風や反対意見を恐れなくなりました。結果として精神的に強くなり、新しいことにも前向きに取り組めるようになりました。
有村プロ どの立場にいても迷いがゼロになることはないと思います。その中で周囲の理解や言葉がどれだけ支えになるかはとても大きいです。何が起きても大丈夫と思える精神力を培われたのは簡単なことではなく、宮森さんのこれまでの積み重ねの結果ですね。
――秋津さんはお二人の話を聞いて、どのように感じましたか。
秋津 一人ひとりの背景や価値観が異なるなか、組織の全員が同じ考えを持つことは困難です。弊社にも多様な人財がいて、男女問わず子育てに奮闘しながら働く社員もいれば、仕事中心の社員もいます。重要なのは各個人が置かれた立場で、お互いの状況を理解し合おうとする姿勢が組織や社会を前進させるのだと改めて感じます。
有村プロ 全員が同じ立場になることはできませんが、相手の背景を想像するだけでも関係性は変わります。多様性を前提にして強みを生かせる場をつくっていくという秋津さんの考えは、私たちゴルフ界にとっても大切なことであり、今後の活動の参考になります。
――キャリアとライフイベントの両立を目指す上で、ユニアデックスとKDDIではどのような取り組みを展開していますか。
宮森様 ユニアデックスでは比較的早い段階から、育児や介護のための休暇制度や在宅勤務などの柔軟な働き方に関する制度を整えてきました。IT業界は長時間労働のイメージが強く、まずは全社員の働き方そのものを見直す必要があると考えたからです。その後、女性活躍の取り組みを進めましたが、制度を整えただけでは女性の活躍につながっていきませんでした。
「働き続けられる環境」は整っていても、女性社員にいきなり「管理職を目指してほしい」と言っても、当人の意識が追いつかないというのが現実です。
そこで弊社では、経営層が女性活躍を推進する意思を明確に示し、管理職向け研修でも必要性を発信するなど、全社的な意識改革に取り組んでいます。こうした活動を約10年地道に続けた結果、キャリアの選択肢として管理職を捉える女性も増え、男性が育休を取得することへの理解も徐々に広がりました。会社文化を変えるのには時間がかかりますが、こうした活動を継続していくことが何より重要だと考えています。
秋津 KDDIでも「制度面の整備だけでは女性活躍は進まない」という認識のもと、いくつかの軸で取り組みを進めています。まず重視しているのが、経営層のコミットメントです。DE&I (多様性・公平性・包括性) 推進会議を定期的に開催し、ダイバーシティに関する課題や対策を経営層自身が議論し続ける場を設けています。また働き方改革や風土づくりにも取り組んでいます。有給休暇の取得率をKPIとして設定し、性別役職問わず、誰もが集中して働き、しっかり休む、メリハリの利いた働き方を目指しています。
また社内外のイベントにおいて、若手や女性など多様な登壇者を必ず含めるというパネルガイドラインを設け、属性や年齢の壁を越えて多様な視点の意見が尊重される風土の醸成に取り組んでいます。それに加え、役員が女性社員の育成に直接関わるというスポンサーシップ制度を導入し、成長機会と人脈形成を提供し、キャリア形成を支援する仕組みも整えました。こうした複合的な取り組みにより、会社の風土そのものを変えていくことを目指しています。
有村プロ 制度をつくるだけではなく、企業文化を変えるために長い時間をかけて取り組まれてきたことがとても印象に残りました。いまの働きやすい環境を当たり前のように感じてしまいがちですが、誰かが声を上げ続けてきた結果なのだと改めて実感しました。
私たちが「LADY GO CUP」を立ち上げられたのも、社会全体や企業の意識が変わりつつあるという時代背景があったからだと思っています。もし10年前だったら実現は難しかったかもしれません。環境を整えてくださった方々がいるからこそ、私たちも新しい挑戦ができていますし、その流れを次につなげていきたいと思います。
――これからどのような生き方や働き方をしていきたいとお考えですか。将来に向けてチャレンジしたいことがあれば教えてください。
有村プロ 明確なゴールが定まっているわけではありませんが、「LADY GO CUP」の活動を通じて、女子プロゴルフ界を少しでも前に進める役割を担っていきたいですね。私自身も先輩方が築いてくださった環境の中でプロ生活を送ることができたと感謝しています。いまはレギュラーツアーに多く出場していない立場だからこそ、競技以外の形でゴルフの魅力を伝えられます。女子プロゴルファーが活躍できる場を広げる活動に取り組み続けることが、自分の使命だと考えています。
宮森様 BIPROGYグループの人財戦略では、「志追求型人財 (ココツイ人財) 」というスローガンを掲げています。これは、社員一人ひとりが自分の志を大切にする価値観を持ち、それを会社の中で発揮できる環境をつくることが、組織の持続的な成長につながるという考えです。
私は人事の立場として、この「ココツイ」の連鎖を制度だけでなく風土や意識の面から支えていくことに注力していきたいです。個人としては仕事に向き合い続けるためにも、家族との時間や健康といった土台を大切にし、自分自身が幸せである状態を保ち続けることを目標にしています。
秋津 KDDIとしては多様な人財がそれぞれの強みを発揮し、だれもがどのような状況でも夢中に挑戦できる環境構築に注力しています。そのために、若い頃から自分がどうなりたいのかというキャリアを考える機会を増やし、そのキャリアに挑戦する人を後押しする仕組みを拡充しようと考えています。個人としては仕事と家庭の両面で多様な生き方があることを示し、子どもたちに対して「将来の選択肢は一つじゃない。可能性は広がっているよ」と伝えていくつもりです。
――後輩の女子プロゴルファーの皆さんへのメッセージもお願いします。
有村プロ 競技の成績だけが幸せの形ではありません。年齢や環境によって選択肢は変わっていきますが、自分が選んだプロゴルファーという道を大切にしてほしいです。ゴルフを頑張った先には、明るい未来が必ず待っています。
――キャリアとライフイベントの両立に悩む女性に向け、メッセージをお願いします。
宮森様 ライフイベントはキャリアを中断させるものではなく、むしろ経験として力になるものです。育児を経験して戻ってきた女性社員は、生産性、タイムマネジメントをはじめ、共感力やリーダーシップなどあらゆる能力を高めて復帰してきており、組織にとって大きな存在だと高く評価しています。会社も制度や環境の整備を進めており、以前よりも働き方の選択肢は確実に増えています。ライフイベントをキャリアの中断ではなく成長の機会と捉え、長い視点でキャリアを考えてください。
秋津 仕事とライフイベントの両立に悩むのはとても自然なことだと思います。いまは制度や風土が少しずつ整い、個人の想いを支えられる環境が広がっています。仕事だけでなくプライベートも含めて、自分が大切にしたいものを見つけてほしいです。その想いを持ち続けることで周囲の支援や選択肢も広がります。会社としても、一人ひとりの挑戦を支える存在であり続けることを約束します。
――本日はありがとうございました。
女性が輝く社会を応援するため、女子プロゴルフミドルトーナメント、"LADY GO CUP"の主催および運営を行っています。「女性の活躍を後押しできるような象徴となる大会にしていきたい」「女子ゴルファーの魅力を広くファンの皆さまへ届けたい」という想いからスタートしました。経験豊富なプレーヤー自らが企画し、30代以上の選手たちに呼び掛け、若手プロへの道標と成り得る大会を目指しています。