日本全国のお客さまに対し、KDDIの通信を軸にさまざまなソリューションをワンストップで提供してきたKDDI まとめてオフィスは、2025年グループ4社を統合し一社体制へ移行。さらに2026年4月には社名を「KDDI Biz Edge株式会社 (以下、KDDI Biz Edge)」へ変更した。その背景には、最前線にある全国各地の現場が自律的に判断し、お客さまの課題を最先端の技術で迅速に解決するという意図がある。本記事では、組織再編の意図や提案・伴走型支援の強化について、そして新本社のライブオフィス公開などの取り組みから、同社が描く次世代のDX支援の姿を探る。
KDDI Biz Edgeは、2025年4月にグループ4社 (関西・中部・東日本・西日本) を経営統合し、一社体制へと移行した。
この組織再編には、大きく2つの狙いがあった。
1つ目は、一社化によって各地域で得たノウハウを集約し、DX提案の幅を広げることだ。社会や顧客のニーズが急速に変化する中で、地域の中だけで完結させる体制では対応しきれない場面が増えてきた。各地域で培われてきた知見と最新の情報を共有し、横の連携を強めることで、お客さまへの提案力をさらに高めていく狙いがある。
同社代表取締役社長、落合 孝之 氏は、一社化の背景について次のように語る。
「これまでは全国を5社体制で、それぞれが切磋琢磨しながら事業を進めてきました。それはそれで良い面もありましたが、社会のニーズが多様化する中で、私たちもチーム戦で取り組む必要があると感じました。大阪には大阪の成功事例があり、東北には東北のやり方がある。それ自体は悪くありません。ただ、一社化によって『関西では (東北では) こういう取り組みをしています』と別の地域のお客さまにも紹介できるようになった。これは大きな変化です」
さらに一社化の価値は、成功事例だけではなく、失敗事例も含めて共有できるようになった点にある。落合氏は「例えば九州ではこういう失敗をしました、という話も共有できる。そうすれば別の地域では同じ失敗を防げます。良い情報も悪い情報も横断的に結集させ、共有することで提案力を高め、さらにお客さまに貢献していきたい」と説明した。
2つ目の狙いは、地域に寄り添う姿勢をこれまで以上に強化することだ。全国の知見を活用しながら、地域ごとの課題にワンストップで対応できる体制を整えていく。
落合氏は「地域には地域特有のお困りごとがあります。地方では、最新の情報や技術が届きにくいこともある。だからこそ、『KDDI Biz Edgeの担当者に聞けば何か良い提案をしてくれる』と思ってもらえる存在でありたい。最先端の技術を提供しながらも、泥臭くお客さまに寄り添う姿勢はこれからも大切にしていきます」と力強く語った。
さらに同社が目指していくのは、単なる通信サービスや端末などのツール提供にとどまらない支援だ。
かつて、中堅・中小企業のお客さまからの相談は、「モノ (ツール) が欲しい」といったニーズが中心だった。しかし現在は、ツールを導入するだけでは本当の意味での課題解決につながらないケースが増えている。例えば、本社主導でDXを進め、新しいツールを導入したとしても、現場の業務負担が十分に減らなければ意味がない。
落合氏は「モバイルを導入して終わりでは、もったいない。そこから社内コミュニケーションツールとの連携や、AIを活用した議事録・情報整理など、選択肢はたくさんあります。ツールを導入するだけではなく、どう使えば現場の負担が減るのかまでをお客さまと一緒に設計していく。経営者が本当に知りたい情報や解決策を提供できたときは、こちらとしても本当にうれしいですね」と、かつての「モノ売り」から「コト売り (提案型支援)」への転換の重要性について語った。
また、現場の負担を減らすためには、ツールだけではなく「情報」の存在が欠かせない。どの技術をどのように組み合わせれば業務が改善するのか、その知見を提供することがDX支援において重要な役割になる。一社化により各地域の知見が共有されることで、こうした提案の幅はさらに広がりつつある。
KDDI Biz Edgeは各地で増え続けるDX相談に迅速に応えるため、新たにDXコンサルティング部の拡大を行った。
DXコンサルティング部は、いわば営業のバディとして伴走する組織だ。営業がお客さまから相談を受けた際、「どう提案すればよいかわからない」という場面も少なくない。DXコンサルティング部は、そのようなときにも営業担当者が気軽に相談できる体制を整えているという。チャットでの相談から始まり、必要であれば現場へ同行する。営業とともに提案を磨き上げる伴走型の支援が特徴だ。
落合氏はDXコンサルティング部について「営業がDXのすべてを説明できるのが理想ですが、実際には商材もお客さまの業種も幅広く、常に忙しい状態です。営業にバディとして寄り添い、お客さまの課題解決に向けてサブパートナーとして伴走し、より良いご提案を提供できるようDXコンサルティング部を設置しました」と語った。
KDDI Biz EdgeのDX支援の特徴は、単に技術を導入することではなく、現場が納得し、実際に使いこなせる状態まで伴走することにある。
伴走型支援では、日常のコミュニケーションの中から新しい価値提供のアイデアが生まれる点も特徴的だ。
例えば、全国規模に事業を展開するメーカーで、地方出店の拡大に伴い、人材確保の難しさが課題となっていた。労働力不足が進む中、デジタル技術やAIを活用した業務効率化も、事業成長の重要な要素と考えられた。KDDI Biz Edgeはお客さまの状況とニーズに合わせ、新しい商材の情報提供から活用方法までを伴走型で支援していた。そんな中で偶然、店頭でのインバウンド客の増加についての話題となった際に、翻訳機「ポケトーク」の活用について会話したことが、そのまま採用につながったケースもあった。店舗に常設することで、さまざまな国のお客さまとのコミュニケーションが図れるようになり、結果として、深刻な人材確保という課題にも貢献できたという。KDDI Biz Edgeは伴走型支援だけではなく、競合企業の事例調査や他社の取り組みを踏まえた提案も行いながら、常にお客さまの事業成長をともに考え、支援するパートナーでありたいという。
また、同社は働き方の実証実験の場として、2025年11月に本社事務所を飯田橋へ移転した。単なるオフィス移転ではなく、自社の働き方やDXを実践しながら検証する「ライブオフィス」として位置づけている点が特徴である。
新オフィスでは、仕事内容や目的に応じて最適な場所を自律的に選ぶ働き方、ABW (Activity Based Working) を導入した。集中して作業するスペース、打ち合わせスペース、フリースペースなど、目的に応じて働く場所を選べる環境が整えられている。また、カフェスペース、HUBのような交流エリアを多く設けたことで、部署を越えたコミュニケーションが生まれ始めている。これまで接点が少なかった社員同士が自然に会話をするようになり、偶然の出会いや新しいアイデアのきっかけが増えたという声も聞かれる。
本オフィスの特徴は、設計プロセスにもある。新オフィスは、12名の社員によるプロジェクトチームが中心となり、約1年半かけて作り上げたものだ。プロジェクトメンバーは決して専門家ではない。自分たちが働く会社をどんな場所にしたいのかを考え、多くのショールームを見学しながら議論を重ね、少しずつ形にしていったという。
この取り組みは、思わぬ効果も生んだ。オフィス移転後、社員の出社率が上がったのである。社員が自分たちの手で作り上げた空間だからこそ、自然と足を運びたくなる場所になったといえる。
2026年1月からは、このオフィスを「ライブオフィス」として外部にも公開している。すでに60社以上の企業が視察に訪れており、今も多くの企業が見学に来ているという。訪れた企業からは「オフィスの空間そのものも素晴らしいが、社員が主体となって作り上げたストーリーに惹かれた」という声が多く寄せられている。社員が主体となって自律的に判断し組織を動かしていく、という考え方は、オフィスづくりの段階からすでに実装されていたといえるだろう。
そして、同社は2026年に設立15周年を迎え、社名を「KDDI Biz Edge株式会社」へ変更した。
新たな社名には、「時代に合わせた最先端技術を現場力で活かし、ビジネスに革新をもたらすことで、働く人々の幸せと企業の持続的成長を実現する」という決意が込められている。また「Biz Edge」という単語には、2つの意味が重ねられている。最先端を意味する「Edge」と、もう1つは、IT用語のエッジコンピューティングに由来する「Edge」だ。中央で一括処理するのではなく、現場に近い端末で素早く処理するという考え方で、これからの強い組織には必要不可欠になる能力だ。全国41拠点の最前線にある現場が自律的に判断し、お客さまの課題を最先端の技術で迅速に解決する、その姿勢を象徴する言葉として「Edge」が採用された。
また、落合氏自身は、社名変更について次のように語る。「社名変更は、決して簡単な決断ではありませんでした。15年かけて築いてきた知名度があるため、名前を変えることにはやはり一定のリスクもあります。それでも今回の決断に踏み切ったのは、これからの15年を見据えた変革が必要だと考えたためです。現在は病院や学校など、オフィスの枠を超えた現場へサービスを提供しているので、『まとめてオフィス』という言葉だけでは事業の広がりを表しきれなくなっていました。DX推進や最先端技術への挑戦など未来に向け、次の15年をどう歩むのか。その問いに向き合った結果、社名変更を決断しました」
これまで積み上げてきた技術と信頼。その上に、時代の変化に合わせた最先端の技術、課題解決力や提案力を重ねていく。同社は、これまで培ってきた強みを土台に、新たな価値提供へと歩みを進めている。
落合氏は、KDDI Biz Edgeが目指す未来像について「これからもお客さまと一緒に、働く未来を描いていきたい。通信という社会基盤を使って、どんなことをしたいのか、どんな世界だったらもっと楽しくなるのか。そうした未来をお客さまと一緒につくっていく「真のパートナー」でありたい。目指す未来に向かって伴走し、お客さまが喜んでくれたときには、私たちもうれしい。お客さまの未来づくりにわずかでも貢献できていると実感できるんです」と語った。
また、同社のこれからの進化については「AIやデータ活用が加速する時代において、自らが一歩を踏み出し使い倒すことを大切にしている。弊社の社員自身が主体性をもち、最先端のテクノロジーを使った先進的なチャレンジを起こす企業へと進化していきたい。さらに、業種や職種を超えて共有される全国の知見を持ち、KDDIグループの多様なケイパビリティをフル活用できる体制を強化していきます」と力強く語った。
KDDI Biz Edgeが目指しているのは、単なるIT企業ではない。お客さまから「相談したくなる」「会いたくなる」と思ってもらえる存在だ。最先端の技術と、地域に根ざした現場力。その両方を掛け合わせながら、これからもお客さまの課題に泥臭く寄り添い続けていく。