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KDDIが虎ノ門新オフィスで推し進める社内DXの実態とは
リモートワーク導入=“働き方改革”ではない!

KDDIが虎ノ門新オフィスで推し進める社内DXの実態とは

国際的なビジネス・交流拠点を目指し、大規模再開発が進められている虎ノ門・麻布台エリア。2020年8月、KDDIソリューション事業本部は、ここに開業した地上36階建ての超高層複合ビル「虎ノ門ヒルズビジネスタワー」に新たな拠点を構えた。座席数は移転前のオフィスから4割減。一方で、ネットワークやクラウド、オンライン会議ツールなどの設備を拡充。“リモートワークありき”、“オンライン偏重”ではない、オフラインとオンラインを組み合わせた「働き方改革」の実現を目指しており、虎ノ門オフィスはその実証実験の場と位置づけられている。これからの働き方に最適化された新オフィスの様子と、コロナ禍前からKDDIが推進してきた「社内DX」の現状を紹介する。

「ITインフラの整備=働き方改革」ではない

昨今、重要な経営課題の一つとして注目が高まる「働き方改革」。また、コロナ後の“ニューノーマル”を見据え、これまでの働き方を大きく見直すタイミングが到来している。

こうした中、KDDIがこれからの働き方を模索し、その実現に向けた実証実験を行う拠点として新たに構えたのが、虎ノ門オフィスだ。大規模再開発エリアの中心にそびえる「虎ノ門ヒルズビジネスタワー」に、ソリューション事業本部の機能が移り、ビジネスのDX(デジタルトランスフォーメーション)を実現するために企業に求められる社内改革を、自ら率先して推し進めている。

KDDIが「働き方改革」に取り組み始めたのは、実に15年以上前のことだ。2003年には上長が別の場所にいても決裁が行えるよう電子化を進め、2005年にはリモートワークの環境整備にも着手していた。リモートアクセスの環境は、当初は数千人規模に留まっていたが、2011年の東日本大震災発生を契機に一気に拡充。全従業員1万人がリモートワークできる体制を早々に整えた。実際、今回のコロナ禍でも、約9割の従業員が自宅からのリモートワークを実施したという。

KDDI株式会社 ソリューション事業本部 ソリューション推進本部長 村山 敏一
KDDI株式会社
ソリューション事業本部
ソリューション推進本部長

村山 敏一

このように、ハードインフラは着実に整備されてきたが、現場で「働き方改革」を推し進めるメンバーは、課題感を抱くようになっていた。その一人であり、KDDIにおける社内DXを牽引する村山 敏一は次のように振り返る。

「朝から晩まで、できる限り多くの時間働いて成果を出す――それが、当社に限らず、かつての多くの日本企業の一般的な働き方でした。しかし次第に、業務を効率化し同じ時間で今まで以上の成果を挙げることが求められるようになってきました。それが実行できるよう、我々はさまざまな設備を整えてきましたが、あるとき『効率化には限界がある』と気づいたんです。特に、私が統括しているSE部門からは、『いくらハードを整備しても、これ以上の効率化は難しい』と多数のSEから声が挙がっていました」(村山)

社員が「働き方改革」を拒む理由は、効率化の限界だけではなかった。ソフト面、つまり制度面や仕事のルール・プロセスの整備の遅れが大きな要因になっていたと、村山とともに社内DXの推進役を担う執行役員の赤石 浩之は話す。

「KDDIの働き方改革を支えるハードインフラは、かなり前から整っていたと思います。ただ、実際にテレワークや電子決裁を積極的に行っていたかというと、正直なところ、そうではなかった。慣れ親しんだ従来型の働き方がやはり“正しい”。従来型の働き方でないと、社内で正当な評価が得られないのではないか。年次や役職を問わず、そのようなマインドは根強く存在していたと思います」(赤石)

上司からすれば、リモートワークで部下の姿が見えないと、実際に仕事をしているのかわからず不安になる。逆に、現場メンバーは「自分は、遊んでいる、サボっていると思われているのではないか」と疑心暗鬼になる。こうしたマインドが足かせとなり、せっかくのハードインフラが、いわば“宝の持ち腐れ”になっていたのだ。

KDDI株式会社 執行役員 ソリューション事業本部 ソリューション事業企画本部長 兼マーケティング部長 赤石 浩之
KDDI株式会社
執行役員 ソリューション事業本部
ソリューション事業企画本部長
兼マーケティング部長

赤石 浩之

部門横断チームで、ハード/ソフトの両面から社内DXを進めた

社内に染み付いた、そうしたマインドを払拭すべく、全社的な動きがスタートしたのが2019年のことだ。代表取締役社長 髙橋 誠が自ら旗を振り、「働き方改革・健康経営推進室」を新設。ハードインフラの整備だけではない、ソフト面も含めた“真の働き方改革”を実現していこうと、全社に向けてアナウンスした。今般の虎ノ門オフィス開設につながる、KDDIの社内DXプロジェクトが動き出したのもこの頃だ。
 

取材は、別フロアにいる村山と赤石をリモート接続して行った。
このように、同じオフィス内にいても、場合によってはリモート接続で
コミュニケーションをとることで業務を効率化している。


「やはり、トップの決断は大きかったと思います。私たち事業部を率いる立場の人間も、社長がそこまで本気ならばと、旧態依然としたマインドを改めることに。例えば、オフィスに出社することに固執するのをやめ、上が率先してリモートワークを行い自分たちが、まず変わるということを実践し始めました」(村山)

こうして、赤石・村山率いる社内DXメンバーは、単なるテレワーク導入ではない、“真の働き方改革”の実現に向けた取り組みを進めることとなった。虎ノ門オフィスの開設と、ソリューション事業部機能の移転は、その“目玉”とも言えるプロジェクトだ。次々と見えてくる小さな課題を、一つずつ解決していく――「真の働き方改革」「社内DX」と一言で言っても、実態は、そんな地道な改善の積み重ねである。

「我々は、なぜ『働き方改革』を推し進めているのか。第一に、社員の心身の健康。第二に、効率化。そして第三に、イノベーションにつながる社員同士のコミュニケーション活性化。これが、我々の追求しているものです。リモートワークありき、デジタル化ありきではなく、その原理原則に立ってすべての判断を行っています」(村山)
 

2019年の「働き方改革・健康経営推進室」新設が、
KDDIの社内DXが加速する契機となったと、村山は振り返る。

例えば、「リモートワークではパフォーマンスが落ちる、気分やモチベーションが上がらない」と感じる社員は少なくない。画一的にリモートワークを強要するのではなく、感染対策を十分に講じた上で、出社可とする結論を出した。

リモートワークが常態化することで発生する諸経費に関する問題も、順次検討を開始している。今までは掛からなかった通信費・電気代などの負担は、その一例だ。これらの必要経費をどのように算出・支給するのか、通勤回数の減少による交通費圧縮の可能性と合わせ、話し合っている。こうした、ソフト面の環境整備は、特定の部門だけで推し進めるのは難しい。勤務体制、人事評価、ワークフロー……異なる部門に所属するあらゆる社員が、新しい働き方を受け入れ、取り入れやすくなるような制度設計が不可欠だからだ。そのため、社内DXチームには、企画部門、情報システム部門、人事部門などから各部のトップが参画している。

「各部門のトップが横並びで侃々諤々議論し、より良い働き方を目指して制度をブラッシュアップしています。KDDIが目指す“真の働き方改革”にどんな制度が必要で、どのように運用していくと良いのか、実際に試行しながら考える。その実証実験の場が、まさにここ、虎ノ門オフィスです」(赤石)

そうした地道な取り組みが奏功し、コロナ禍においては、ほとんどの社員がスムーズにリモートワークに移行した。お客様の通信インフラの保守運用や開通業務等のため出社が必須な社員を除き、ピーク時は9割以上の社員がリモートワークを行い、2020年9月現在も、約8割と高い水準を維持している。

社内DXで得た知見を、顧客企業にも提供していく

ハード/ソフト両面の環境を整備し、リモートワークを積極的に取り入れる中で、改めて浮かび上がってきたのが、オフラインの場でのコミュニケーションの重要性だ。

「ソリューションの源泉となるニーズやシーズは、実際にお客さまの元を訪ねなければ出会えないものも多いのが事実ですし、メンバー同士がフェイス・トゥ・フェイスで意見を出し合う過程で生まれることも多い。やはり、テレワークだけですべての業務が完結するわけではないことを、改めて実感しています」(赤石)

そこでKDDIでは、働く場(オフィス)の位置づけを「ハブオフィス」「サテライトオフィス」「ホーム(自宅)」と再定義。本人ならびに事業の内容などによって、これらを使い分ける働き方を、虎ノ門オフィスで試行中だ。

虎ノ門オフィスの開設を、
村山とともに指揮した赤石。
「テレワークだけで業務が完結するわけではない」と、
オフラインの重要性をあらためて強調する。

次なる動きとしては、オフィスにいながらも自宅で仕事をしているような、「パーソナルオフィス」機能を付加する計画が持ち上がっている。普段は一人ひとり、仕切られたスペースで集中して業務を行うが、他のメンバーとの共創が必要な場合にはオープンスペースで議論する。これまで以上に、オフラインだからこそできる議論に価値を置き、より効果的なコミュニケーションが生まれるような仕掛けも構想中だ。

「取り組みはまだ道半ば。ようやく2~3合目に到達したくらいではないでしょうか。ただ、今後も取り組みを継続していけば、4~5年後には“真の働き方改革”を達成できると確信しています。軽井沢などの地方を生活の拠点とし、オフィスへの出社は月1回。それでいて、ビジネスの成果はしっかりと出せている。――実は、すでに実現している社員もいますが、そんな働き方を、より多くの社員ができるようにしたいですね」(村山)
 

「KDDIの社内DXは、まだ道半ば」と赤石。
“真の働き方改革”の実現を目指し、ハード/ソフトともに今後も引き続き進化させていく。

新型コロナウィルスの影響で、働き方や職場へ求められるものが大きく変わった。アフターコロナ/ウィズコロナの経営・事業活動に最適化した環境をハード/ソフトの両面から整備する社内DXが、あらゆる業種・業態の企業の喫緊の課題となっている。

KDDIは自社の働き方改革や社内DXを通じて得られた知見・ノウハウを提案し、多様な業界に広がるお客さま企業とともに、真の働き方改革を推進していく。