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日立物流が期待する、5Gの世界

次世代通信で物流の課題解決に挑む 業界・社会全体への貢献を目指して

他社の物流関連業務を請け負う3PL ( サードパーティー・ロジスティクス ) 事業で国内トップクラスのシェアを誇る日立物流。業界を牽引する1社として、デジタルトランスフォーメーション ( DX ) による、ロジスティクスのスマート化を軸にした社会課題の解決にも力を入れている。そのキーテクノロジーとして注目したのが5Gだ。現在、ロジスティクス業界でも先駆けとなる、物流の高度化に向けた実証実験をKDDIとともに推進している。両社の協創から、どんな価値が生まれようとしているのか。キーパーソンに話を聞いた ( 本文中敬称略 ) 。

パートナーの物流事業者を巻き込み DXを推進していく

――現在は、ECサイトの普及などによって物流を取り巻く状況が大きく変わっています。
  業界の現状と課題を教えてください。

南雲 物流は、今や電気、水道、通信などと同様の重要な社会インフラの1つだと考えています。しかし、日本が課題とする少子高齢化によって、業界は慢性的な労働力不足に悩まされています。そこで当社は、最先端のデジタル技術を積極的に取り入れる、すなわちDXを推進することで、これらの課題解決と物流のさらなる高度化に挑戦しています。

中でも、高度化の主要ターゲットと位置付けているのが、中核事業である「3PL」です。3PLは、お客さまの物流関連業務を、当社がまるごと請け負うサービスを指します。特に輸配送作業においては、実際の業務は全国各地の中小輸送事業者様との連携によって実現しています。一方、中小輸送分野の現場業務にはデジタル技術で高度化できる部分が多く、例えば、輸送指示は電話やFAXが主体でアナログ管理です。こうした中では、われわれがDXを実践するだけでなく、中小輸送事業者様のDXも支援しなければ、トータルな物流効率化は実現できないのです。

株式会社日立物流 営業統括本部 営業開発本部 デジタルビジネス開発部 担当部長 兼デジタルビジネス推進部員 兼 スマートロジスティクス推進部員 兼協創PJ員 南雲 秀明 氏
株式会社日立物流
営業統括本部 営業開発本部
デジタルビジネス開発部
担当部長
兼デジタルビジネス推進部員
兼 スマートロジスティクス推進部員
兼協創PJ員

南雲 秀明 氏

課題解決に向けて同じ目線に立つ 徹底した現場主義に感銘

――現在は、KDDIとともに「5G」を活用したサービスに関する実証実験を進めています。
  5Gに注目した理由と実証実験の狙いを教えてください。

南雲 先に述べたような考えの下、当社は2013年ごろから「スマートロジスティクス」というキーワードを掲げて、物流業界における先端技術の活用を推進してきました。現場が抱える課題のうち特に解決すべき課題を絞り込み、手段や技術を検討する、という流れです。これを加速・拡大すべく、2019年度からスタートした中期経営計画「LOGISTEED 2021」で物流領域を超えた「協創」の拡大を掲げ、さまざまなパートナーと「新技術開発と現場への実装加速」を進めてきました。

ただ、優先度が高くても、技術的な観点で実現できなかったアイデアも多くありました。例えば、高解像度画像解析による検品の仕組みなどは、当時の技術環境では実現困難でしたが、現在のAIによる画像認識技術や5Gを活用すれば実現できるかもしれない。技術の進化によって実現できていなかったアイデアに再び光を当てられることが、5Gに着目した理由の1つでした。

株式会社日立物流 営業統括本部 営業開発本部 デジタルビジネス開発部 部長補佐 中澤 茂樹 氏
株式会社日立物流
営業統括本部 営業開発本部
デジタルビジネス開発部 部長補佐

中澤 茂樹 氏

中澤 5Gでの解決を期待している課題はたくさんありますが、5Gのロードマップ及び特性を考慮し、まずは屋内の課題から着手することにしています。今回の実証実験では、当社の物流センター内の改善をテーマに5Gを用いることにしました。

温水 本取り組みは、物流業界における5G活用例としてかなり先進的なチャレンジです。業界全体の活性化に向けた大きな一歩とすべく、KDDIも自社の強みを生かした提案をしていきたいと考えています。

――パートナーにKDDIを選定した理由は何だったのでしょうか。

中澤 単なる通信事業者・ソリューションプロバイダーではなく、課題解決のための協創パートナーであるという印象を持ちました。KDDIには物流センターに足しげく通ってもらい、われわれの課題に共感した上で、こちらの要求ありきではなく、KDDIとして課題を捉えてご提案いただいた姿勢に感銘を受けました。加えて、5G時代のビジネス開発拠点「KDDI DIGITAL GATE」を擁しており、5Gに関する多彩な検証が進められそうなことにも魅力を感じました。

内野 われわれは、現場にこそお客さまの課題の本質があると考えています。物流センターを何度も見学させてもらい、日常的な物流業務を肌で感じることで「本当に解決すべき課題」をジブンゴト化して考えることができたと思います。

――実証実験はどんな手順で進めているのですか。

南雲 3つのフェーズがあります。テーマ選定、要件定義、プロトタイプの設計・構築です。まず、約2カ月をかけてKDDIとともに課題の洗い出しとテーマ選定を行いました。今後は、それぞれについて要件定義を行い、ソリューションのプロトタイプを設計・構築して実証実験に臨む予定です。

温水 課題の洗い出しに関しては何度も打ち合わせを重ね、忖度なしで議論しました。日立物流様の「解決したい課題」は100近くにのぼりましたが、全てを扱うのは現実的ではありません。現場の課題意識の強さや実現可能性などを基に、日立物流様とともに優先順位をつけ、12個のテーマ、4つのカテゴリにまで絞り込みました。

中澤 2カ月で20回近く打ち合わせをしましたね。お互い、別企業の社員とは思えないぐらい濃密な時間を過ごしました。おかげで、企業の垣根を越えたチームとして今後も活動できると感じています。また、テーマ選定でのKDDIの徹底的な顧客視点、現場目線と、ファシリテーション力はさすがの一言でした。

KDDI株式会社 ソリューション営業本部 営業1部 営業3グループ 課長補佐 温水 真一
KDDI株式会社
ソリューション営業本部 営業1部
営業3グループ 課長補佐

温水 真一

図  イノベーションによる社会課題の解決 → 新たな成長機会

通信技術の進化とともに 物流の「新領域」を切り拓く

――まさしく、未来に向けた協創の取り組みがスタートしたところということですね。

南雲 そう考えています。実は当社には通信技術、技術革新の進歩とともに成長してきた企業という側面があります。1985年の通信自由化の際も、物流における通信の重要性に気付き、他社に先駆けて3PLの開発を進めました。2013年から取り組んでいる「スマートロジスティクス」も同様です。新しい技術をもって、新しい取り組みを始めるのは当社の“DNA”と言ってもよいでしょう。

今の状況も同じです。企業として進化し続け、ビジネスでの課題解決を目指すことで社会課題の解決へつなげていく。そういった想いが当社のビジネスコンセプトである「LOGISTEED」に込められています。競合戦略としてだけでなく、業界全体の活性化のために、われわれがいち早く5Gの可能性を検証することは重要な責務だと感じました。KDDIは、われわれのそうした想いにこたえてくれるパートナーであると思っています。

――5Gが本格的に活用されるようになると、物流はどう変わるのでしょうか。

南雲 将来的には、物流にかかわるさまざまな場面での5G活用を構想しています。その1つに、「スマート安全運行管理システム ( Smart Safety Connected Vehicle ) 」のさらなる高度化があります。5Gによって、輸送車両のドライバーの生体情報や車両挙動情報の伝達が早まり、危険を早く察知することで、さらなるドライバーの事故リスク低下につながると考えています。このように、通信によって物流のあらゆる業務を進化させていきたいです。

中澤 もちろん、われわれだけで5Gの真価を引き出すことは不可能です。だからこそ、多くのパートナーとの協創に基づくエコシステムを形成し、価値創出を図っていきたいですね。その中でKDDIは、最も信頼できるパートナーの1社になると思います。

KDDI株式会社 ソリューション営業本部 営業1部 営業3グループ 主任 内野 友梨香
KDDI株式会社
ソリューション営業本部 営業1部
営業3グループ 主任

内野 友梨香

内野 KDDIとしては、今回の実証実験を通じて日立物流様と「5G×物流」のユースケースを多数つくっていきたいと考えています。よいユースケースができれば、製造業や小売業など、企業内物流の仕組みを持っているお客さまにも有益な提案が可能になります。本取り組みで得た知見をわれわれ自身も生かしていければ、社会により大きな貢献ができると思います。

南雲 当社も今回の実証実験で得た成果は、自社やパートナーだけでなく、同業他社にも活用してもらうことを視野に入れています。将来的には物流を起点としたサプライチェーン全体に貢献していきたい。少し先の話ではありますが、KDDIとともに物流の「新領域」を開拓し、それを社会課題の解決につなげていければ素晴らしいですね。