基調講演後のBreakout Sessionでは、社内外から各登壇者が自身の専門分野で培ってきた知見を参加者と共有した。その一部を紹介する。
日立物流がKDDIと5Gで実現する物流高度化
日立物流 営業統括本部 輸送事業強化PJ SSCV強化グループ長 兼 スマートロジスティクス推進部 担当部長 兼 協創PJ員の南雲 秀明氏は、「デジタルシフトによる物流高度化~日立物流のDX戦略と実証実験から始める物流領域の5Gソリューション開発~」と題して、自社で取り組むDX戦略を紹介した。
冒頭、南雲氏は物流業界をとりまく環境と課題を俯瞰。物流ニーズが高度になる一方で、人材不足が深刻化していることに加え、コロナ禍によって物流に対する社会的要請が高まっているという。
そのような状況の中、日立物流は新たなDX戦略を策定。さらに輸送領域、SCM(サプライチェーンマネジメント)領域、倉庫領域における3つのコア機能について紹介した。
「物流業界には多くの課題が存在しますが、これらを解決し、社会インフラとして重要な物流サービスを実現することが当社の使命です。我々はSociety5.0の実現に向け、フィジカルとサイバーをつなぐ3つのコア機能を駆使し、業界を超えたエコシステムの形成・拡大をめざしています」
さらに、KDDIと連携した大規模な5G実証実験 についても言及。高精細4Kカメラ、画像解析AI、5Gの技術をかけ合わせたモニタリングによる従業員の安全や生産性向上など、物流の高度化に向けての取り組みを紹介し、5Gへの期待感を語った。
南雲 秀明氏
デジタル化とDX総合戦略によって導かれる、三井物産の「共創」時代
三井物産は、2020年の新本社移転 を見据えて、約3年にわたり社内の意識改革を含めたDX推進のための基盤を築いてきた。その足跡を、デジタル総合戦略部 部長補佐 石黒 太郎氏が「~オフィスとデジタルが支える『変革と成長』~三井物産の取り組み」と題した講演で語った。
石黒 太郎氏
「社内コンセプト『長期業態ビジョン2030』に盛り込まれた、『強い”個”と”個”のコラボレーションによる知的化学反応で新しい価値やビジネスを創る」を実現するため、デジタル専門人材が常駐し、DXについて気軽に相談できる『d.space(dスペース)』を設ける等の施策を実行。DX推進のための中核組織である『デジタル総合戦略部』設立にもつながっています」
2018年からは、グローバルのITインフラを刷新。
KDDIやシスコシステムズ、グループ会社の三井情報と連携して、自由度の高いネットワーク基盤を構築し、場所や時間にとらわれないワークスタイルを可能とした。
現在掲げているDX総合戦略は二本柱で推進している。
デジタルによる社会課題の産業的解決や価値創造を目指す「DX事業戦略」とデータの共有・活用によるプロセス改善や迅速かつ正確な意思決定を支援する「DD経営戦略」だ。「DXビジネス人材」育成が急務とした上で、「DXはさまざまな企業とのコラボレーションによりチャンスが広がるものだと確信しています」と共創への期待を語った。
SUBARUが打ち出す「総合安全」の新機軸
SUBARU 国内営業本部 ビジネスイノベーション部 部長の重野 守氏は「お客さまの安全・安心のために~SUBARUのコネクティッドサービス~」をテーマに講演を行った。
はじめに重野氏は、SUBARUが創業期から受け継いできた「総合安全」の理念について言及。「0次安全」と呼称する事故を起こしにくい車の設計や、「走行安全」「予防安全」「衝突安全」、さらにはコネクティッドサービスで実現する「つながる安全」など、あらゆる場面を想定して磨き上げられた独自の安全技術を紹介した。
「コネクティッドカーは、IoT概念の一つ。車載通信機によって、クルマとヒト、クルマとクルマ、クルマとインフラなどをつなげて価値を高めるものです」
肝になるのが「先進事故自動通報システム (AACN)」だ。コネクティッドカーで衝突事故を起こすとAACNが起動。自動でコールセンターへ救急要請し、事故の被害を最小限に食い止める。このAACNの実現のため、SUBARUはKDDIとパートナーシップを提携している。
2030年までに「死亡交通事故ゼロ」(注1) を目指すSUBARU。
重野氏は「さまざまなモノ・コトとつながれば可能性は無限大に広がる。今後は大学の研究機関や自治体とも連携を進めていきます」とさらなる発展を意気込む。
重野 守氏
DX推進にまつわる、あらゆる分野を網羅するBreakout Session
Breakout Sessionではパートナー企業やKDDI社員により、5GやIoT、アジャイル開発、マルチクラウドなどさまざまなテーマが取り上げられた。
KDDI DIGITAL GATEセンター長の山根 隆行による講演では、アジリティ (注2) の高いビジネスのための開発ができる組織とはどのようなものかについて語られた。
「スクラム導入によるイノベーション組織への変革」には、Scrum Inc. Japan代表取締役の荒本 実氏が登壇。顧客の価値を中心に据えた開発手法「アジャイル」を取り上げて、変化の中で「生き残る」のではなく「成長する」ことの重要性に触れた。
KDDIが取り組む5G事業の展望を語ったのが、KDDI サービス企画開発本部 5G・IoTサービス企画部 部長の野口 一宙。5Gがビジネスにもたらす変革や「ビジネス基盤」と「ビジネス共創」の分野で展開していくKDDIの5G事業について解説した。
山根 隆行
そのほか、近年注目を集める次世代セキュリティモデル概念「ゼロトラスト (注3)」にまつわる講演は、KDDIサービス企画開発本部 ネットワークサービス企画部 部長の梶川 真宏やラック セキュリティプロフェッショナルサービス統括部 デジタルペンテストサービス部 部長 仲上 竜太氏が登壇。
また、KDDIのマルチクラウド基盤に採用されている「MEC (Multi-access Edge Computing) (注4)」の講演には、アイレット クラウドインテグレーション事業部 事業部長の小林 弘典氏が登壇し、クラウド設計・構築サポートの導入事例も紹介された。
およそ4時間にわたって配信された「KDDI SOLUTION DAY 2021 」。
DX推進がいまだ過渡期の日本において力強く歩みを進めるためには、本イベントで取り上げたように業種・業界の垣根を超えたパートナーとの「共創」が欠かせない。
KDDIは今後もDX推進に必要な技術を先鋭化させ、パートナーの伴走者となってニューノーマルの時代を切り開いていく。
示唆に富んだ数々の講演は、目まぐるしく変化するビジネスシーンの道しるべになってくれるはずだ。