2021年5月25日、AI・IoTを中心にソリューションを提供するオプティムとKDDIの合弁会社、DXGoGo (ディーエックスゴーゴー) が設立された。中小企業を中心にお客さま企業のDX (デジタルトランスフォーメーション) を推進するジョイントベンチャー。
親会社2社のアセットを掛け合わせ、全国に向けてビジネスを展開するという。設立の経緯や思い描く未来像を聞いた。
――DXGoGoを率いるお二方の略歴を教えてください。
岡田 私は、KDDIソリューション事業本部ビジネスデザイン本部アライアンス営業部を経て、DXGoGoに参画しました。KDDI在籍中は30年以上法人営業を担当しており、直接販売・間接販売の両方を経験しました。
池澤 私は、オプティム社長室での新規事業開発を経て、DXGoGoに参画しました。現在は主にプロダクト開発や企業コンサルティングを担当しています。
岡田 圭之介
――どういった経緯でDXGoGoは誕生したのでしょうか。
岡田 もともとKDDIとオプティムは、法人企業のスマートデバイスのセキュリティ対策と、遠隔設定・資産管理などを一元管理できるサービス「KDDI Smart Mobile Safety Manager」(SMSM) で長く協業関係にありました。SMSMは、2021年3月時点で法人企業の200万を超えるお客さまにご利用頂けるまでに成長をして、その過程で両社には強い信頼関係が築かれていきました。
池澤 そして、それぞれが抱えていた課題が合弁会社設立へとつながっていきます。これまでお客さまのDX (デジタルトランスフォーメーション) 支援に取り組んできたKDDIですが、大企業向けのコンサルティングが中心で、中小企業へのアプローチは十分とは言えない状況でした。一方のオプティムは、デジタル技術を駆使して地域や企業に寄り添ったビジネス開発を進めてきましたが、販売チャネルや営業力に課題がありました。
岡田 そこから、KDDIの取締役執行役員専務・森 敬一とオプティムの代表取締役社長・菅谷 俊二様の間で、お互いの強みを生かした合弁会社を設立しようという流れに。両社の関係性を考えれば、今回の合流はごく自然な流れだったように思います。
――DXGoGoの事業内容を教えてください。
岡田 「DX・IoT商品事業」と「ビジネス開発事業」の二本柱で考えています。DX・IoT商品事業については、まずは中小企業のお客さまを中心に、コーポレートITの導入から支援していきたいと考えています。例えば、複数拠点のIT機器の稼働状況の可視化や、煩雑になりがちな紙の契約書をデジタルによって管理を簡略化するなどのサービスを展開していきます。
池澤 ビジネス開発事業では、デジタル技術を活用した新たなビジネスモデルの事業化を進めています。その先駆けとして、地方を舞台に展開している「スマート米」の拡販を検討しています。
オプティムの持つスマート農業ソリューションで、ドローンが撮影した圃場の画像を解析して、病害虫の多く集まる箇所を分析します。そこへピンポイントに農薬を投与することで、農薬を可能な限り抑えたヘルシーなお米づくりが可能になります。収穫したお米はオプティムが買い取り、ブランディングしてECサイトへ。売上は農家へ還元される仕組みです。
従来の取り組みに加え、KDDIの運営するECサイトへの拡大や、お客さま企業の社食や学食、レストランなどへの採用にも力を入れていきます。
――ユニークな社名ですが、どのような思いが込められているのでしょうか。
岡田 命名アイデアをいただいたのは、オプティムの菅谷社長です。DXはとにかくハードルが高いと思われがちです。そのイメージを少しでも払拭しようと、親しみやすい社名が選ばれました。また、DXの普及を加速させるスピード感も意識しています。
池澤 40~50案あった候補の中から、満場一致で「DXGoGo」に決まりました。設立を2021年5月25日にしたのは、社名の「GoGo」にちなんだこだわりです。
岡田 ロゴにも設立の背景を投影しています。ロゴを構成する濃紺とブルーの三角形は、KDDIとオプティムのコーポレートカラーをイメージしたものです。2つの三角形が交わる部分のライトブルーは、両社がクロスオーバーすることで、これまでにない「新しいカラーが生まれる=DXを生み出す」というメッセージが込められています。
――設立にあたって、どのようなビジョン、ミッションを掲げましたか。
岡田 ビジョンは「ひとつの聲 (こえ) がビジネスを創り、世界を変える」です。お客さまの要望や現場の意見を商品やビジネスにダイレクトに反映して、DX支援に昇華する。あらゆるステークホルダーにとって「Stand by Me」な存在でありたいと考えています。
池澤 「声」ではなく「聲」としたのがポイントです。我々が耳を傾けるのは、人々の口から発せられる「声」に限りません。例えば、SMSMのようなデジタルデバイスから拾い上げられる情報にも、ビジネスのヒントが隠されています。つまり、データもまた一つの「聲」だと解釈しているのです。
岡田 “聲なき者の代弁者”と言ったら、格好つけすぎでしょうか (笑) 。
池澤 洋一
――協業関係にあったとはいえ、両社の足並みを揃えることに苦労もあったのでは?
池澤 「多くの企業にDXの恩恵を」という、企業として目指すべき方向性は見えていたのですが、設立メンバー一人一人が抱いている思いやビジネスの手法には微妙に差がありました。設立までに1年2カ月を要しましたが、これはお互いの目線を合わせるための準備期間だったといえます。
岡田 弊社は7名のメンバーで構成されている、KDDI史上最少規模のジョイントベンチャーです。よく言えば少数精鋭。だからこそ、メンバー間で密に意思疎通を図ることが可能です。大企業にはないフレキシブルさがあり、経営方針・事業戦略も時流を見ながら適宜、軌道修正ができます。
池澤 とにかく意思決定が早いです。話し合いの場を設けても、結論まで30分とかからずにことが動きだしたりします。以前は、発注する側・受注する側という関係性でしたが、DXGoGoに合流した今となっては対等な立場で向き合えています。いわば、運命共同体のようなものですね (笑) 。
――事業を進めるにあたって、具体的なターゲットは決まっていますか。
岡田 ターゲットは広く見据えていますが、当面は中小企業のお客さまを中心に、コーポレートIT支援を進めていくつもりです。また、DXへ取り組みたくとも取り組めていない地方へのアプローチも重視しています。KDDIとしても、まだ十分に進出できていない市場ですので、我々が先立って地ならしをするイメージです。
池澤 想定する中小企業の規模は、従業員数100名から500名程度。地方は都市部と比較すると、まだまだDXが進んでいない印象です。“従来型携帯電話”を使い続けている方も珍しくありませんし、都心部の企業が当たり前のように使っている SaaS (Software as a Service) などの浸透率も高くありません。
岡田 俯瞰で見ると、DXに関心があってもPoC (概念実証、実証実験) に留まっている企業が多い印象です。導入してみたもののトライアルのまま終わってしまう。DXに成功した大企業の事例を、そのまま中小企業に応用しても十分に効果が出ないケースも多々あるでしょう。
池澤 大企業は中長期計画のなかでDXを進めていくケースが多く、導入されるシステムも多機能で大規模なものになります。しかし、中小企業にはより即効性があるもの、すなわちあえて機能を削ってコンパクトに分かりやすくお伝えしたほうが響くのでは、と仮説を持っています。
――今後は具体的にどのように事業を進めていきますか。
岡田 現在は、KDDIグループの「KDDIまとめてオフィス (KMO)」とも連携して進めています。KMOは全国各地に営業拠点を持ち、弊社ともターゲットが重なる部分が多いためKDDIグループ同士が協力し合い営業展開を進めていく計画です。
池澤 まずは弊社で開発したSaaSをお客さまにご提案していきます。オプティムで開発したシステムがベースですが、そのままご提供するのではなく、お客さまの聲を汲み取り、ニーズに応じた商品へアジャストしていくことになるでしょう。我々がビジョンに掲げる「世界を変える」を実現するためには、「わかりやすいサービス」を「クイックに」提供し、「みなさまが使えるサービス」を追求していく必要があります。
岡田 そのような意味でサービスを世の中に広く響き渡らせるためには、ある程度ターゲットを絞った上で最大公約数を意識した汎用性が求められると考えています。
――今後の展望や意気込みをお聞かせください。
岡田 まだまだ手さぐりの部分はありますが、5年後の2026年を目途に、まずは中小企業の業務環境や、業務効率が明確に「変わったな」といえるところまで世の中を変えていきたいと考えています。中長期的には、大企業向けのソリューションに発展する可能性も十分に考えられます。また、SMSMをより汎用化させたサービス開発も構想に挙がっています。KMOの意見も取り入れながら、新たなビジネスの糸口を探っていきたいです。
池澤 私がオプティムに入社したのも、ビジネスを多様な業種・業態に展開し変革していく姿勢に共感したからです。そこからDXGoGoという、より直接的なアプローチができる環境に出会い、さらに夢が広がりました。DXをこれまで以上に身近な存在にするのが、弊社の使命だと思っています。