「技術で夢を現実に」というコーポレートビジョンを掲げ、多彩な製品やサービスを生み出し続けている
株式会社KDDIテクノロジー (以下KDDIテクノロジー) は、人々の生活をより豊かに便利にすべく、先端テクノロジーの活用を通じて社会にイノベーションを起こすことを目指している。そうした中で近年注力しているのが画像認識を中心としたAI技術だ。2020年6月よりKDDIテクノロジーの代表取締役社長を務める 大井 龍太郎 氏にビジネスの現状やKDDIとのコラボレーションによって目指す今後の展望を聞いた。
KDDIテクノロジーが設立されたのは1988年のこと。KDD研究所 (現・株式会社KDDI総合研究所) から独立する形でのスタートだった。当初は写真伝送システムや画像データベース、衛星IP伝送サービスを利用した印刷データ伝送システムなど、画像通信を中心とする開発を行っていたが、2000年代に入ってからは携帯電話関連の開発に事業を転換。
さらに2010年以降はスマートフォン・デバイス向け開発にシフトするなど事業領域を拡大してきた。
大井 龍太郎 氏
KDDIとのコラボレーションも多様化している。KDDIテクノロジー 代表取締役社長の 大井 龍太郎 氏は「KDDIから新しいサービスを作りたいと話があると、どうすればそれを実現できるかを調査・試作し、テクノロジーを組み合わせて実現します。それがKDDIテクノロジーのミッションなのです。KDDIが幅広いサービスを手がけている分、私たちの取り扱う技術領域も広がっていきます」と語る。
コンシューマにも身近なものとしては、例えばau PAYアプリの開発がある。au PAYアプリはスマートフォン決済 (コード支払い) サービス「au PAY」の利用や残高へのチャージをはじめ請求予定額の確認や支払方法の変更、買い物履歴の確認などを簡単に行えるアプリで、「KDDIテクノロジーは、モバイルアプリケーション部分の開発をKDDIと共同で行っています」と大井氏は語る。
グループ外企業のさまざまなデジタル化を支援する取り組みも増加しており、化粧品販売企業さま向けの実証実験ではデパート内などで行われている化粧品のお試しをAR (拡張現実) で行えるシステム開発に参加した。販売企業が扱う化粧品を使ってメイクをするとどのようなイメージになるのか、店頭端末の画面に映し出されたお客さまの顔画像に重ねて表示するものである。
「これはKDDIがイベント的に行ったものですが、将来的には店舗のDXを目的としたBtoBtoC型のビジネスモデルでの展開を視野に入れています」(大井氏)
そして現在KDDIテクノロジーが特に注力しているのが画像認識を中心とするAIソリューションである。
「KDDIテクノロジーは映像伝送や画像データベースなどのシステム開発を手がけてきたことに加え、KDDIが保有している膨大なサンプルをディープラーニングに活用できていました。こうしたKDDIグループならではの強みを生かして推進しているのが画像認識AIです」(大井氏)
ここでKDDIテクノロジーが提供を開始した画像認識AIを使った外観検査のためのパッケージシステムを紹介しよう。
「サビ検出システム」は、対象物を撮影した画像からサビの濃さを評価し修繕対応などが必要な箇所を発見するもので、KDDIテクノロジー独自の計算アルゴリズムを用いてサビの濃度を定量化・可視化することができる。
「このAIエンジンをドローン点検と組み合わせることで、鉄塔など高所作業が必要となる場所でも活用することが可能です。無数の基地局アンテナの維持保守にあたっているKDDIはもちろん、さまざまな企業さまからも興味を持っていただいています」(大井氏)
サビ検出システム
他にも工場の生産ラインなどで活用できるAIソリューションとして「容器キズ検出システム」「印字不良検査システム」を開発している。
さらにKDDIテクノロジーでは、さまざまな製造業へのAI外観検査を支援している。その取り組みの一つとして、トヨタ自動車様における車体外観検査システムの導入事例がある。車体の塗装欠陥をエッジ部まで見逃すことなく検出するものだ。
「もともと、トヨタ自動車様でも従来の画像検査手法を使ってトライされており、思うような精度を得ることができていないという課題を抱えておられました。そこで我々の画像認識AI技術を活用いただいたところ99%以上の正解率を得ることができ、高い評価をいただきました」(大井氏)
こうした実績を重ねてKDDIテクノロジーはKDDIとのパートナーシップをさらに強固なものとし、画像認識にとどまらず広範なAIを活用したDX支援を加速していく考えだ。
「まだまだ埋もれていたり、よいものなのに心理的なバイアスが原因で実現できていないイノベーションもあります。弊社では現在AIやドローンなどの新しい技術にも取り組んでいますが、これらは世の中の役に立てられなければ意味がないと思っています。そこにはユーザー視点が大事ですし、技術を磨くだけではなく利用に際して生じる心理的な障壁を取り除くといったことも必要です」(大井氏)
その根幹にあるのは、「テクノロジーの組み合わせによって社会のさまざまな課題を解決したい」という強い思いだ。「『KDDIテクノロジーと組めば必ず何らかの答えを導きだせる』と思ってもらえる存在となり、新たな価値創造に貢献していきたいと考えています」と大井氏は語り、既成概念にとらわれず多様な領域のイノベーションにチャレンジしていこうと意欲をみせる。