株式会社日立物流様は、物流に関わる倉庫、サプライチェーン、輸送などの領域でDXを推進しているDX先進企業だ。
2023年4月1日にはロジスティード株式会社と社名変更し、物流業界DXの旗振り役としてさらにさまざまな挑戦に取り組んでいく。その一環として、各地に散在する物流センターの監視カメラの映像を本社で統合管理・分析することで、防火・防犯などのリスク管理を強化。この仕組みの核となっているのが、映像をクラウド上に蓄積・管理できる「KDDI Video Management Service」(KVMS) だ。映像の集中管理・分析によりどのようなビジネス価値が生まれるのか、またKVMS採用の決め手はどこにあったのかを紹介する。
日立物流様は、荷主企業に代わって効率的な物流戦略の企画立案・物流システム構築・実行を行う「3PL (サードパーティーロジスティクス) 」を提供することで業容を拡大し、物流業界をリードしてきた。そんな同社は、2023年4月1日にロジスティード株式会社へと社名を変更する。LOGISTICSとExceed、Proceed、Succeed、そしてSpeedを融合した社名 (LOGISTEED) には、従来のロジスティクスの枠を超えて、さまざまな課題を解決し価値を創出する「グローバル3PLリーディングカンパニー」をめざすという思いが込められている。
それを実現するうえで同社では、さまざまな領域でDXに取り組んでいる。
具体的には、最新技術で物流センターや倉庫を最適化する「倉庫DX」、オペレーションの高度化を支援する「サプライチェーンDX」、輸送会社やドライバーなど業界全体の安全や業務効率化を実現する「輸送DX」などだ。これらによって、輸送ニーズの多様化に対応するとともに、CO2削減などの社会課題の解決、輸送業界の働き方改革、人材不足解消などをリードし、業界全体の発展をめざしている。
前述したように、物流に関わるさまざまな領域で変革に取り組んでいる日立物流様だが、倉庫DXの領域で活用を進めているのが、防火・防犯のための監視カメラ映像だ。
しかし、それらのカメラ映像は拠点単位で運用、保存され、本社では各拠点の現地状況を把握できないことが課題だった。本社、あるいは拠点の担当者が離席中でもスマートフォンなどからリアルタイムで現場の状況を確認することができれば、インシデントが発生した際に迅速な確認や判断が可能となり、管理者の働き方改革にもつながる。
加えて、昨今の物流センターは大規模のため、拠点ごとの監視負担が大きい。本社で集中管理し、AIを活用してリアルタイム分析することで、各拠点での負荷低減や、予防・予知といったより高度な監視も可能になる。
そこで、日立物流様が相談を持ち掛けたのがKDDIだった。KDDIには、2019年より5Gによる高速・大容量・低遅延の通信を使って倉庫における現場課題の相談をしている。ディスカッションを重ねていくなかで、KVMSを活用して遠隔地の監視カメラ映像を一元管理する「安全コックピット」を、東京・中央区の日立物流様本社に設置することが決定した。
日立物流 ロジスティクスソリューション開発本部 スマートロジスティクス推進部の茂木 健司 様は、安全コックピットを構築する際にKVMSを採用した理由として、「セキュリティ」「導入の容易さ」「機能の拡張性」の3つをポイントとして挙げ、こう続ける。
「1つ目のセキュリティについては、遠隔にある物流センターの映像を見るにしても蓄積するにしても、通信やクラウドを使うため、映像が外部に流出するリスクがゼロではありません。しかし、KVMSはインターネットを介さないKDDIの閉域網を使っているため、そうしたリスクがなくなります。2つ目は、すでに設置している既存の監視カメラを利用でき、ネットワークの構築だけすれば簡単に始められることです。そして3つ目は機能の拡張性で、単に監視したり映像データを蓄積するだけでなく、AIを活用してリアルタイム解析することで、事故を事前に予知・検知できるようになるなど監視の高度化が期待できることでした」
茂木 健司 様
また、スマートロジスティクス推進部の森内 宏一 様も、セキュリティについては特に気を配ったと話す。
森内 宏一 様
「弊社従業員や協力会社のドライバーさん、お預かりしている荷物などの映像をクラウドに上げることに関しては社内的にも調整が必要でした。通信やネットワーク、クラウドインフラやセキュリティなどの専門領域にも関わってくるため、我々だけでは社内の情報セキュリティ部門に説明できない部分もありました。そうしたときに、KDDIにも同席いただき詳細な説明をサポートしてもらうことで、社内認可もスムーズに得ることができました」
カメラによる監視は、さまざまな業種・場所で利用されている。現場にいる管理者がリアルタイムにカメラを確認したり、事故発生時の証拠として映像データを蓄積しておくことはもちろん有効だが、常時映像を閲覧し続けるには管理者が負担する工数が大きく、DXという側面から考えると、その先にある価値について検討しておく必要がある。
温水 真一
今回のプロジェクトを進めるうえで、「物流センターを可視化して集中管理するという先に、どのようなビジネス価値が見いだせるのか、日立物流様とディスカッションして明確にしていきました」と話すのは、KDDI ソリューション事業本部 ビジネスデザイン本部 営業1部の温水 真一 だ。
「例えば、AIを活用することで少なくとも2つの利点があります。1つは防火・防犯などをより高度化し未然に防げるようになること。2つ目は日立物流様が全社で定めている安全・安心に関するポリシーを現場の隅々にまで浸透させ内部統制を強化できることに貢献できることです。映像データを一元管理することで、そうした全社的な業務改善につなげられると思います」
また、DX推進本部 5G・IoTサービス企画部の内山 裕介 は、日立物流様が指摘していた「導入の容易さ」が、DXの費用対効果の面から重要な要素になると話す。
「現場のセキュリティ高度化や物流業務の効率化、実務パフォーマンスの最大化など、映像を活用したDXを推進していくにあたり、お客さまが既に所有している監視カメラなどの設備が使えなくなることは、導入や設置のコスト・労力の点で大きな負担がかかり、実現のハードルが非常に高くなります。そのため、既設の環境をそのまま使えるということは、投資負担が少なく費用対効果が高くなると考えていました。KVMSをサービス化したときのこだわりはまさにその部分で、既存の多種多様な監視カメラを高度に用途拡大できる、柔軟かつオープンなプラットフォームになっている点が特長です。今後は、日立物流様が運営されている数多くの拠点のカメラ映像データをKVMSに集約することで、そのビッグデータを解析などに有効活用いただき、DXをサポートしていきたいと考えております」
内山 裕介
物流センターや倉庫に限らず、小売業の店舗、製造業の生産現場など、監視カメラが利用されている場所は実にたくさんある。
そういった現場においてもKVMSを活用し、既存の監視カメラから収集した映像データを集中管理するとともに、AI分析を行うことで、さまざまな業務の効率化・省人化を実現できる。
日立物流様が描いている倉庫DX、未来の物流センターへの取り組みは、KVMSによる安全コックピットにとどまるものではない。
その先には、「警備の自動化」「火災検知・消火活動の自動化」「安全品質活動の強化」「環境管理の強化」などの取り組みも計画されている。
そこでは、通信、ロボティクス、ドローン、センサーなどKDDIが得意とするさまざまな技術の組み合わせが求められる。
これからもKDDIは、幅広い技術や知見で日立物流様のDXパートナーとしてさらなるご提案とご支援を拡充していく。