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持ち運べる通信環境が、イベント運営を支える「Starlink」が切り拓く新たな通信インフラの可能性

持ち運べる通信環境が、イベント運営を支える
「Starlink」が切り拓く新たな通信インフラの可能性

大規模イベントやスポーツ興行の現場において、観客や関係者の急増に伴う通信の「繋がりづらさ」は、来場者体験の低下や運営業務の滞りを招く深刻な課題となっています。富山市では、衛星ブロードバンド「Starlink」と高密度Wi-Fiを組み合わせた可搬型通信ソリューションを導入。富山市の事例を通して、スポーツ興行や野外イベントを支える通信インフラの活用モデルをひも解きます。

  • ※ 記事内の部署名、役職は取材当時のものです。


大型スポーツイベントで浮き彫りとなる「通信の壁」

数万人の観客がスタジアムや球場に一堂に会する大型スポーツイベント。試合の熱狂とともに高まるのが、スマートフォンやスマートデバイスによるデータ通信需要です。しかし、多くの人が集まる現場では特定の基地局にアクセスが集中し、キャリア回線の輻輳 (ふくそう) や通信障害が発生しやすくなります。
通信の不安定化は、QRコード入場やキャッシュレス決済の遅延を招き、来場者の利便性や体験を損なうだけにとどまりません。メディア・報道関係者による速報対応や、運営本部での問い合わせ対応、来場者案内、さらには関係者間の連絡共有にも支障をきたし、興行運営を妨げる深刻な要因となります。

こうした課題に対し、従来は常設型のフリーWi-Fi設備を導入することが一般的な解決策とされてきました。しかし、多くのスポーツ施設では、興行主と施設運営者が異なるため、常設設備の導入を容易に決断できないという課題があります。施設運営に深く関与するプロスポーツチームの中には独自にWi-Fi環境を整備している事例もありますが、多くの場合は恒久的な対策を講じにくく、イベントごとに運営側が対応を工夫しながら乗り切っているケースも少なくありません。


プロ野球オールスターゲーム開催に向けた富山市の課題

関野 大志郎 氏の写真
富山市市民生活部
スポーツ健康課
関野 大志郎 氏

富山市においても、プロ野球興行やJリーグ、Bリーグなどの試合開催時における通信環境の担保は、スポーツ振興や地域活性化を推進する上で避けて通れないテーマとなっていました。恒久的な設備投資が難しい中で、イベント開催時に安定した通信環境をいかに確保するかが課題だったといいます。
富山市の関野氏は「マイナビオールスターゲーム2026の富山開催は、1996年以来30年ぶりでした。会場となった富山市民球場アルペンスタジアムでは過去の興行時に通信が繋がりにくくなる課題があったことから、来場者の満足度向上を第一に、今回の興行を成功させ、メディアを通じた富山の魅力発信につなげるためにも、通信環境の整備は重要なテーマとなっていました」と語ります。


Starlink×5GHz帯Wi-Fiが実現した高品質な通信環境改善と業務活用

富山市が導入を進めた可搬型通信ソリューションは、低軌道衛星通信「Starlink」をバックボーン (基幹回線) し、そこに認証基盤と屋外型アクセスポイント、ワイヤ・アンド・ワイヤレス (外部サイトへ遷移します) (以下、Wi2) のサポートサービスを組み合わせた可搬型のフリーWi-Fiシステムです。

インターネット回線の引き込み工事が不要で、「上空が開けた場所」と「電源」を確保できれば、短時間でWi-Fiエリアを構築できる点が強みです。可搬用の通信BOXと屋外用アクセスポイントを組み合わせることで、現場のニーズに応じた局所的なネットワークを柔軟に展開できます。

富山市民球場アルペンスタジアムで開催されたマイナビオールスターゲーム2026では、このシステムが現場の運営・報道業務の円滑化に貢献しました。
通信エリアは、バックネット裏の記者席、カメラマン席、放送室、本部・関係者室など、混雑が予想されるエリアを中心に設計。当日はキッチンカーの出店などもあり、多くの無線機器の利用が見込まれたため、一般的なWi-Fiや電子レンジでも使われる「2.4GHz帯」との干渉を避けるべく「5GHz帯Wi-Fi」を採用し、クリアで高速な通信環境を維持しました。
イベント開催中も安定して稼働し、大容量トラフィックも支障なく処理できました。

メディアセンターの様子
<メディアセンターの様子>
Starlink設営の様子
<Starlink設営の様子>

常設工事が不要で、設置から撤収までを迅速に行える可搬型サービスだからこそ、必要な日・必要な場所だけに高品質な通信インフラを供給することが可能となったのです。

実際に現地対応にあたったKDDI担当者も、「用途やエリアが明確であれば、必要な場所に絞って短時間で通信環境を構築できる。イベント運営の現場に適した仕組みだと実感しました」と語りました。


野外フェスや大型イベントへ波及する
「持ち運べる通信インフラ」の汎用性

この「持ち運べる通信インフラ」は、スポーツ施設での活用だけでなく、野外音楽フェスや地域の祭り、食イベント、花火大会など、一時的に多くの来場者が集まる催事にも展開できます。
実際にKDDIとWi2は、「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」などの大規模イベント、山小屋Wi-Fiなど、固定回線の整備が難しいさまざまな環境で「Starlink」を活用した通信環境の提供を進めてきました。

こうした実績を踏まえ、必要な場所へ迅速に展開し、必要な期間だけ柔軟に利用できる「Starlink」を活用した可搬型フリーWi-Fiソリューションのスポット導入は、興行ビジネスにおける現実的な選択肢となります。

今回、富山市では施設運営上の制約を踏まえ、イベント開催の期間に合わせて利用する判断を行いました。
これにより、年数回しか発生しない大型イベントのために高額な固定資産を抱えたり、耐用年数や保守管理に悩まされたりすることなく、1回当たり適正なコストで最新の通信環境を確保できます。
この仕組みは、野外催事を主催する民間企業やイベント制作会社にとっても有効な選択肢となり、地域のイベント運営のデジタル化を支えるモデルとして、今後の展開が期待されます。


平常時はイベントに、有事は防災に
――可搬型通信インフラの新たな活用モデル

富山市と「Starlink」の取り組みから見えてきたのは、「平常時のイベント活用で得た知見が、有事の防災インフラ強化に結びつく」という点です。
富山市民球場をはじめとする大型スポーツ施設や体育館、国体会場などは、多くの自治体で「指定避難所」や「広域避難場所」に指定されています。大規模災害時には、安否確認、災害情報の受信、支援物資の要請、避難所運営などで「通信手段の確保」が不可欠です。

行政にとって、高価な機材を防災専用に導入し、長期間保管しておくことは、予算を効率的に活用する上で課題となります。
これに対し、平常時のイベントで活用している通信機材を、災害発生時には避難所などへ展開するフェーズフリーな運用を採ることで、地域の多様なニーズに応じた通信環境を迅速かつ柔軟に整えることができます。平常時から機材を保有・活用しておくことで、イベント運営と防災対策の双方で活用できる点も特徴です。

Starlinkと屋外Wi-Fiで実現する、“持ち運べる”通信環境
<Starlinkと屋外Wi-Fiで実現する、“持ち運べる”通信環境>

さらに、イベントでの運用を通じて機材の設置手順や運用ノウハウを蓄積できることも大きな利点です。
災害発生時には、普段から使い慣れたStarlink機材を避難所などへ持ち出し、発電機やポータブル電源と組み合わせることで、短時間で通信環境を確保できます。加えて、ワンタップで接続できる認証基盤を標準で装備することで、スムーズに利用を開始できる環境を実現しました。


地域の実情に寄り添う、通信インフラの新たな選択肢

富山市での取り組みは、イベント時の通信混雑や施設運営上の制約、防災への備えといった複数の課題に対し、必要な場所へ必要な時に通信環境を届けるという新たな選択肢を示しました。KDDIは今後も、各地域の実情に寄り添い、自治体やパートナー企業のみなさまとともに、平常時にも有事にも役立つ地域インフラの共創を進めてまいります。