山崎 颯
KDDIはさまざまな業種に向けてスマートドローンソリューションの提供を行うべく、実証実験を行っております。
ドローンの活用用途として代表的なのが警備ですが、具体的にどのような方法で行われるのでしょうか。
ドローンコラム連載の第2回となる今回は、KDDIが実証実験として行った、スマートドローンを活用した警備の内容を詳しくご紹介します。
KDDIは2018年11月28日、埼玉スタジアム2002でスマートドローンを警備に応用するための実証実験を行いました。KDDIの携帯電話ネットワークを活用したスマートドローンは、従来のドローンに比べて広い範囲での飛行が可能です。
今回の警備システムでは、高高度から全体を俯瞰し不審者を発見するドローンと、低高度で巡回するドローンの2種類を組み合わせて実験を実施。俯瞰用ドローンが不審者を発見すると、その位置情報を割り出し、巡回用ドローンに位置情報を送信して不審者を追尾するという仕組みです。
高高度と低高度のドローンを組み合わせる理由としては、不審者が俯瞰用ドローンで検知できないような物陰に隠れてしまった場合であっても、巡回用ドローンが追尾し続けることによって不審者確保につなげられるためです。また、反対に巡回用ドローンが途中で不審者を見逃してしまったとしても、俯瞰用ドローンが上空から再び検知することもできます。
今回の実証実験では警備サービス大手のセコム様も参画し、警備観点からドローンの運航管理機能の要件定義を担当しました。
不審者を検知する上で重要な役割を果たすのが俯瞰用ドローンです。俯瞰用ドローンにはAIが搭載され、敷地内に不審者がいないかを自動検知するシステムが搭載されています。
埼玉スタジアム2〇〇2のような広大な場所では、ドローンで撮影された映像の中から不審者を人の目で見つけ出すことは簡単ではありません。しかし、AIを活用すれば人の目による検知に比べて不審者を見逃すリスクも最小限に抑えられることから、不審者検知の効果は大きいといえるでしょう。
また、俯瞰用ドローンだけではなく巡回用ドローンにもAIが搭載されており、位置情報を受け取った後、現地まで自動で飛行し搭載したカメラで不審者を撮影しながら追尾します。スマートドローンが撮影した映像は、リアルタイムで管制室から確認できます。
KDDIの安定した高速なネットワークによって、高精細な映像を中継できるという強みはスマートドローンならではといえるでしょう。
スマートドローンを警備に活用することによって、広大な敷地面積を誇る場所であっても、少人数の担当者で効率的な警備が可能になることが実証実験で証明されました。また、AIを活用することで、人の目視による見落としや誤認を未然に防ぎ、より高いセキュリティを確保することにもつながります。
今回の実証実験では閉館したスタジアムに不審者1人が侵入しているという想定で行われましたが、AIがより進化していくと、大規模なイベントなかで混雑している中でも不審な挙動をしている人物を検知することも可能になり、より安全性の高い、高度な警備システムに進化していくと考えられます。
スマートドローンを警備に活用することで、限られた人員で警備を効率化し、安全性も高められるというメリットが得られることでしょう。
スマートドローンを実際の警備に活用するためには、天気・風況情報や三次元の地図情報など、さまざまなデータも必要となります。KDDIでは、これらのデータをまとめてスマートドローンプラットフォームとして提供し、安全なドローンの飛行に役立てます。
また、俯瞰用ドローンへの電波対策として上空電波情報もあわせて確認できる運航管理システムを新たに開発。上空で電波が途切れて飛行不能にならないよう、安全対策が施されています。
このように、KDDIが今後提供を予定しているスマートドローンは、実用化に向けて着々と準備や実証実験が行われています。今回紹介した警備への活用もスマートドローンの代表的な活用事例のひとつ。将来、さまざまな場所で警備用のスマートドローンが飛行している姿を目にする機会が増えてくるかもしれません。
(文:西村広光)