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自治体デジタルトランスフォーメーションを成功に導くDX人材の育成を重要視する塩尻市の取り組み事例

自治体デジタルトランスフォーメーションを成功に導くDX人材の育成を重要視する塩尻市の取り組み事例

単なるデジタルテクノロジー導入ではなく、DX (デジタルトランスフォーメーション) の本質根幹など、知識はもちろんマインドも含めたDX人材育成に多くの企業が取り組んでいる。一方、自治体では、まだまだDXに取り組めていないケースが多い。そんな中、長野県塩尻市はDX人材重要性にいち早く気づき、取り組みを開始した。
具体的にどのような取り組みなのか、塩尻市ならびに取り組みを支援しているKDDIの担当者、4名の取材を通じて紹介する。

  • ※ 記事内の部署名、役職は取材当時のものです。

DXは自治体が担う公共事業の一環

「ICTのトップランナー」――。

長野県民であれば、この言葉を聞いて、ある市を思い浮かべる人が多いのではないだろうか。人口約7万人長野県のほぼ中央、辺りを山々に囲まれた松本盆地南端位置し、いにしえのころより車・鉄道とも、東西交通ハブとして発展してきた長野県塩尻市である。今から25年以上前の1996年、公共インターネットプロバイダー事業運営着手。2000年には同じく市独自で、光ファイバー回線網整備し、本庁支所地区センター博物館学校保育園など各種市営施設を同ネットワークで結ぶと共に、監視拠点となるオペレーションセンター塩尻情報プラザ開設した。

長野県塩尻市 企画政策部参事 兼 最高デジタル責任者小澤 光興 様
長野県塩尻市
企画政策部参事 兼 最高デジタル責任者

小澤 光興 様

塩尻市役所入所してから38年。うち25年以上にわたりICT事業に携わってきた、現最高デジタル責任者 (CDO) の小澤光興様は、次のように振り返る。

「ICTであろうがデジタル (DX) であろうが、住民インフラは、私たち市の職員が取り組む公共事業のひとつだと考えています。インターネットプロバイダーサービスはもちろん、今ではどの自治体提供するようになった住民に向けた緊急時メールアラートなども、企業協力して独自システム開発し、運用していました」

このような歩みを持つため「DXも至って自然だった」と小澤様。2021年には「塩尻市デジタル・トランスフォーメーション戦略」を作成し、小澤様をCDOに立て、DXを加速させていった。

内部 (行政DX)・外部 (地域DX) の両軸で進めることで
自治体全体をDXする

自治体戦略職員議論して策定する組織風土があったので、DXについても、市の職員だけで戦略を作り上げることができました。住民と日々接している私たちだからこそ、住民の方々が抱えている課題や悩みを心底分かっている。その当事者戦略段階から作るのが当然だと考えました」(小澤様)

塩尻市が掲げたDX戦略特長は、内部外部のDXを同時に、協調しながら進めている点だ。内部はいわゆる行政DXで、デジタル技術導入などにより、職員業務効率化や働き方改革をより進める。一方外部地域DXを指し、同じくデジタル技術導入し、都市機能革新的向上させ、住民多様ライフスタイルに寄り添える地域社会実現していく。

行政DXと地域DXの両軸で自治体DXを推進

地域DXの代表例が、オンデマンドバス「のるーと」や、自動運転EVバス活用した、MaaSの実現だ。オンデマンドバスとは、専用スマートフォンアプリ乗車する時刻場所降車地入力 (予約) すると、AIがそのリクエストに応え最適ルート設定する乗合型交通サービスである。ピックアップ拠点は2022年2月現在111箇所に上り、車両は4台を実装。特に、子どもや高齢者送迎便利として好評だという。

また、さまざまな手続申請デジタル化にも積極的だ。例えば、保育園入園申請においては、いまや全申請のうち約97%が電子申請となっており、その約60%がスマートフォン経由土日夜間に行われているという。デジタル化によって市役所開庁時間外での需要対応できるようになった好例である。さらに職員が紙の申請書内容パソコンに打ち込む作業が少なくなるなど、事務業務削減にも役立っている。

職員採用試験スマートフォン一本エントリーができますが、積極的なDX推進が知られるようになることで、採用にあたっても全国各地から応募をいただけるという副次効果も生まれています。また、さらなるDXを進めるためにデジタル人材専門の枠も設けて採用しています」と総務人事課北野様は語る。

長野県塩尻市 総務部 総務人事課 職員係長 北野 幸徳 様
長野県塩尻市
総務部 総務人事課 職員係長

北野 幸徳 様

中からDXに取り込むためのマインドチェンジを起こすことは難しい

一方でDXの推進には、これまでのICTの取り組みとは異なる課題が浮かび上がってきた。

「まさにDXの本質根幹部分ですが、一部エキスパートが取り組むだけではダメで、全職員当事者意識を持ち、取り組む必要がありました」 (北野様)

職員間でDXに対する意識バラつきが生じたのだ。わかりやすいのがデジタル化による業務効率化だ。例えば、紙で行っていた集計業務パソコンスマートフォンによるデータ取得に変えれば、数時間掛かっていた作業数分短縮できるはず。ところが、職員は目の前の仕事に追われていて、そうしたDXを進める意義メリットを説いてもなかなか全職員浸透するには至らなかった。

「私たち組織内部職員だけでDXに取り組む意義を伝えることに限界を感じていました。そこでDXに取り組むマインドチェンジを起こすために、外部専門家から伝えてもらおうと考えました」(北野様)

ともにDX (デジタルトランスフォーメーション) を進めるのが
KDDIの地方創生ポリシー

KDDI株式会社 地方創生推進部 地域共創2グループ 福澤 斉史
KDDI株式会社
地方創生推進部 地域共創2グループ

福澤 斉史

小澤様北野様はDX人材育成、特に、マインドチェンジすることのできる教育コンテンツを持つ外部サービスを探した。世の中にはDX人材育成ソリューションは多くあるが、自治体フィットするものは少なく、自分たちの要望合致するものは見つからなかった。そのような中、先述したMaaSの実証実験プロジェクト連携していたKDDI地方創生推進部福澤斉史柳澤一馬紹介され、今回セミナー実施に話が繋がる。

地方創生推進部役割は、単にKDDIのアセット提供することではありません。真の課題を、地域の方々に真摯に寄り添い聞き出す。その上でパートナー企業さまはもちろん、地元自治体企業などとも連携しながら問題解決すると共に、地域産業活性化することです」(福澤)

「我々はこれまで各地で、地方創生モデル確立してきました。しかし自治体におけるDXは事例が少ない状況でした。」(柳澤)

これまで地方創生事案が少なかったことの理由のひとつが、一般企業に比べると遅いスピード感だ。自治体は特に予算に対しての意識が強く、施策を決めて予算化し、それが取れてからの着手となるため企画時点から2~3年後開始になりがちである。だが、塩尻市は違っていた。

塩尻市企業体でいえば中小ベンチャーのようなもの。スピード感と新しいことに挑むチャレンジングスピリット、この2つを常に持って日々の事業に取り組むよう市長副市長から言われております」(小澤様)

KDDI株式会社 地方創生推進部 事業推進グループ 柳澤 一馬
KDDI株式会社
地方創生推進部 事業推進グループ

柳澤 一馬

そのため裁量現場担当者 (係長クラス) にかなりの部分委譲されており、今回のDX人材育成プロジェクトも、2021年6月に企画開始し、その数カ月後の2021年内に、トライアルではあるが最初の取り組みが実施された。

塩尻モデルを確立しDXを望む全国の自治体に展開する

塩尻市提供されるDX人材育成ソリューションは、KDDIグループ会社である株式会社ディジタルグロースアカデミアサービスベース作成されたもの。

2021年度トライアルでは、主に以下3つの施策が行われ、その内容フィードバックし、来年度以降施策を改めて作成実行していく。

①  アセスメント

②  基礎研修

③  タイプ別研修

DX人材の育成ステップ 全職員がDX人材として成長するために

まずは、市役所全職員約400名を対象に、デジタルに関する知識リテラシーならびに、DXに取り組む適性などを測定するアセスメント実施した。

さらに、2022年の2月に、DX教育として基礎研修実施。こちらも全職員400名を対象に行われた。(注)

このDX教育の講師株式会社ディジタルグロースアカデミア社長 高橋範光様
まず初めに「DXとは?」といった基礎的内容からスタートし、小澤様北野様が最も意識している、職員全員で取り組む意義やDXによる自治体未来像が語られた。さらに、取り組む際に注意すべき点、AI、RPA、チャットボットといった実際に使う技術要素、これまでのITとの違いなど具体的に取り組む上で理解しておくべきことが説明された。

他の自治体での事例なども交えながら、1時間30分にわたって行われた講演を振り返り、小澤様は次のように感想を述べた。

「DXに関する講演講義はこれまでいくつも受けたことがありましたが、本日内容はDXに馴染みのない人でもわかりやすい内容だと感じました。まさにKDDIにお願いした理由になりますが、自治体職員向けにカスタマイズされていたことで、とても腹落ちする内容でもありました。」(小澤様)

実際講演が終わった後には早速北野様のもとに複数職員から現場へのフィードバック方法相談があったそうで、今後の取り組みならびにDX人材育成期待を寄せる。

「KDDIとして自治体の方々に対してDXアセスメント実施したのは初めてですが、知識レベル測定をしたわけではありません。これから始まる取り組みについて、どのような事が考えられるか自治体の方々の意見を知るのが目的でした。もちろん、レポート一人ひとりの職員の方々にフィードバックしていますが、来年同じようなアセスメント実施して、どのような変化があるのかも楽しみです」(柳澤)

職員全員実施したアセスメントをもとに、メンバーアサインし、リーダー研修予定している。プロジェクトリーダー抜擢することで、机上の学びだけではなく現場実務を通じながら、各職務におけるDXスキルを高めていく。

そうして高まったDXスキルを、今度市役所内全体波及させていくことが次なるステップであり、そのような状況実現すればDX戦略内容実現しているに違いない。

そうして塩尻市全体自治体DXが成功した事例を「塩尻モデル」として、DXの導入がうまく進まない全国地方自治体展開していくことで、地方創生事業をさらに推進していく。それが、KDDIの役割に他ならない。

  • 注) 新型コロナウイルス感染対策のために50名を対象オンライン研修実施し、録画データを残りの350名に共有した。

株式会社ディジタルグロースアカデミア
代表取締役社長 高橋 範光 様

塩尻市役所全職員受講いただけるとのことでしたので、職員一人ひとりがDXを自分ごとと捉えていただけるよう、「塩尻市デジタル・トランスフォーメーション戦略」とも整合性を取りつつ、さまざまな事例も交え、その必要性と取り組みの方向性をできるだけわかりやすくお伝えすることを意識しました。これからの新たな自治体のあり方として、職員市民双方にとって有益デジタル活用共創によって生み出し、塩尻市らしいDXを目指していただきたいです。


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