2023年2月21日・22日に開催されたオンラインイベント「KDDI SUMMIT 2023」から、以下3つのセッションをダイジェストで紹介する。
KDDI モビリティビジネス開発部長の古茂田のセッションでは、「IoTサービスプラットフォーム」を中心としたDX支援サービスが紹介された。
「IoTサービスプラットフォーム」は、IoTデータの収集・連携から、ビジネスオペレーションに適したアプリ/UXまで
一連で提供するサービスだ。
KDDIのIoTの実績は20年に達し国内海外合わせて3,000万回線を超える稼働状況(2022年12月時点)となっており、コネクティッドカー、電力・ガスなどのスマートメーター、セキュリティといったさまざまな分野で利用されている。
古茂田はIoTサービスプラットフォームのコンセプトと提供価値について、「ヒト」と「モノ」をつなぎ、
お客さまの経営課題に共感し世の中の社会課題を解決する価値を持った「コト」を生み出すものと定義し、その価値は「グローバル統一的なUI/UXの実現」「新たな収益源となるビジネスの創出」「バリューチェーンの高度化」「お客さま接点強化・デジタルマーケティングの高度化」の4つだと説明する。
古茂田 渉
グローバル統一的なUI/UXの実現の事例として「自動車メーカーのコネクティッドアプリ開発」、新たな収益源となるビジネス創出の事例として「デジタルキーを活用したトランク宅配」、バリューチェーンの高度化の事例として「製品稼働などのデータを活用したお客さま接点強化」「IoTデータを利用した消耗品利用実績把握・追加オーダーの取り込み」を紹介。
顧客接点の強化・デジタルマーケティングの高度化についても、多様なデータを統合的に管理・分析し、お客さまとのコミュニケーションを最適化・効率化する事例を紹介した。
IoTサービスプラットフォームでは、IoT機器・システムからのさまざまな形式のデータを収集・蓄積させ、
アプリ・Webで活用し、継続的に体験価値の向上を実現するための開発基盤をワンストップで提供する。機能面では、APIゲートウェイ、認証基盤、多言語対応、プッシュメッセージ配信、課金機能といった「アプリケーション開発ツール」をはじめ、「IoT機能」「データ蓄積・分析ツール」「サードパーティ連携」の4つのサービスを提供する。
提供形態として、SaaS型とオンプレミス型を用意。またグローバルに展開したいという場合には、KDDIとグローバルパートナーシップを締結しているStation Digital Media社とのアライアンスによってサービス提供する。
「前述したように、KDDIのDX/IoTの強みは、過去20年における約3,000万回線の実績と、通信のみならずデバイスや
IoTサービスプラットフォームを含めたソリューションをワンストップで提供できること、
それに加え、どのようにご活用いただき、その結果どういったDXが実現できるのかといったビジネス共創の視点があることです。
IoTサービスプラットフォームを活用して、お客さまが抱えている経営課題や社会課題の解決に向けて、
ぜひご提案の機会を頂戴できればと思っております」(古茂田)
KDDI 5G・IoTサービス企画部長の野口のセッションでは、
KDDIの映像ソリューション「KDDI Video Management Service (KVMS) 」を中心に紹介した。
野口 一宙
5G時代は通信が高速になることで、映像を素早く伝送できるようになる。これに解析技術の進展が合わさることで、映像を活用したDXソリューションは非常に重要になってくる。
KDDIでは、大きく3つの映像ソリューションに
取り組んでいる。
1つ目は来場者や従業員の体温測定や人数計測などに
活用されるインターネットクラウドカメラ
(まとめてネットワークカメラ with safie) 。
2つ目は、5Gを活用してデータ品質を保ちながら放送中継を簡易化する放送・メディア向けのソリューション。
そして3つ目が、このセッションで紹介する
KDDI Video Management Service (KVMS)で、既存のカメラ映像を閉域ネットワークを用いたセキュアなクラウド環境で統合管理・分析できるプラットフォームサービスだ。
「多くの企業は既にカメラを設置し、その映像を管理していますが、その多くは拠点ごとにオンプレミス環境で保存されています。そのためデータがサイロ化し、データの利活用も各拠点に依存しています。各拠点のデータをクラウドに集約することで、外部のシステムやサービスと連携しやすくなり、全社でのデータ利活用が可能となります」(野口)
「統合管理」「セキュアな環境」「既設カメラの利用」「映像活用基盤」という4つの特長を持つKVMSを利用し、記録や閲覧するだけにとどまっている映像データを、AIなどのテクノロジーを活用した分析やアクションにより、意思決定の材料にすることで、企業はデータ駆動型アプローチを取りやすくなる。
続いて野口は、AIによる映像解析サービスについて話を進めた。
「KDDIでは株式会社オプティムとの共同出資により2021年にDXGoGo株式会社を設立しました。
ここを介して、さまざまなAIパートナーさまと連携し、お客さまのニーズや利用シーンに応じた多種多様なAIの映像解析サービスを提供します」(野口)
例えば、公共機関や自治体であれば人数カウントによる効果測定。交通機関であれば駅や道路での混雑解析。工場内の活用では設備異常検知や敷地内における禁止区間の侵入検知、さらに顔認証による入退管理といったことだ。
また、オプティムのAI画像解析サービス「OPTiM AI Camera Enterprise」には、標準で搭載しているAIアルゴリズムを使用して、マーケティング、セキュリティ、業務効率化、事故防止など幅広い用途ですぐに利用できる機能を多数用意している。
さらに、KDDIグループの株式会社ARISE analyticsでは、課題のヒアリングからお客さまに寄り添い
設計・システム実装することで、よりニーズにマッチしたソリューションを提供する。
「カメラ映像やAIを活用したい、あるいはカメラを設置しているがデータ活用ができていない。
また、自社の事業に特化した独自のAIシステムをオンプレミスでお持ちのお客さまにも、ぜひお声がけいただき、
そうしたシステムのクラウド化を進め、IT資産をレガシー化させない取り組みをご支援したいと考えています」(野口)
KDDIビジネス開発部 グループリーダーの保科のセッションでは、JR東日本との共創サービス「空間自在ワークプレイスサービス」の取り組みが紹介された。
空間自在ワークプレイスサービスとは、離れた場所にいてもリアルと同等のコミュニケーションをとりたいというニーズから生まれたサービスだ。
JR東日本とKDDIが共同で進めている分散型まちづくり
「空間自在プロジェクト」の第1弾サービスとして2022年10月から提供されている。
オンライン会議の仕組みと似ているが大きく異なるのは、参加者の等身大の姿を4K相当の高精細映像で映し出し、
また臨場感あふれる音響環境を実現するサラウンド音声機能を有していることだ。さらに資料を合成表示させ、その画像を見ながら会議参加者の表情も確認することができる。
同サービスを利用することで、
ブレーンストーミングをはじめとするクリエイティブな議論の効率性も高まる。具体的な商品や製品のディテールを確認することも従来よりもスムーズになる。
また、離れた執務室を常時接続しておくことで、遠隔地の人にすぐ話しかけられ、課題解決をスムーズにできる。
保科 康弘
「2021年5月に行った事前検証では、従来のオンライン会議ツールと比較して、各人の表情が豊かになり、
その結果、会話量が約48%増えました。会話量とチームの生産性には正の相関関係があることが分かっています」(保科)
また前述したとおり、このサービスはJR東日本とKDDIが共創して進めている「空間自在プロジェクト」の一翼を担っている。従来のスマートシティは、リアルな施設が中心となった「拠点集約型」だったが、「空間自在プロジェクト」がめざす分散型スマートシティでは、都市環境で生まれた利便性の高い新しい価値やサービスと、郊外で発生した価値やサービスの相互作用を促すことを狙っている。これにより、双方が発展し続ける好循環を生みだそうというものだ。
JR東日本は現在、「空間自在プロジェクト」の中核施設として高輪ゲートウェイシティ (仮称) の開発を進めており、同プロジェクトにおいてKDDIは次の5つのプロジェクトフレームを推進中だ。
1. 法人・個人に提供されるエリアサービス
2. ワークプレイス
3. MaaS・モビリティ
4. デジタルツイン、都市OS、ロボットなどの事業共創プラットフォーム
5. 5G、MEC (Multi-access Edge Computing) などの通信インフラ
「この取り組みは、JR東日本の不動産、鉄道といったリアルアセットとKDDIの通信、デジタルのアセットを掛け合わせることで
新しいスマートシティの形を作り出すという挑戦です。そのなかで『空間自在ワークプレイスサービス』は、今後も新機能を開発し進化させていこうと考えています」(保科)