よりパーソナライズドされた対応が求められている。
またコンタクトセンターにおいては、人手不足への対応としてAI技術を活用するなど、ビジネス環境は転換期を迎え、次の成長に向けた変革が必要になっている。
BPO業界の社会課題解決を目指すWAKONX BPOは、本記事で紹介するアルティウスリンクとコンタクトセンターのデータを起点とした新たなデータ活用プラットフォームによる価値提供やコンタクトセンター特化型のLLM (大規模言語化モデル) などの開発を推進していく。
KDDIグループの一員としてコンタクトセンターを中心とするBPO事業を手がける株式会社KDDIエボルバ (以下、KDDIエボルバ) と、三井物産株式会社 (以下、三井物産) の関係会社でコンタクトセンター事業およびバックオフィス事業を展開するりらいあコミュニケーションズ株式会社 (以下、りらいあコミュニケーションズ) は経営統合し、2023年9月1日にアルティウスリンク株式会社 (以下、アルティウスリンク) が発足する。統合する両社のトップに新会社に対する期待と展望について聞いた。
KDDIエボルバとりらいあコミュニケーションズは、ともにコンタクトセンター市場で確固たる地位を堅持してきた2社だ。
その経営統合によって誕生するアルティウスリンクは、1,300社以上のお客さま企業と約5.8万人の従業員を擁し、国内外で100を超える拠点を展開する企業となる。また、国内コンタクトセンターの売上高は約2,400億円に達し、国内トップ (注1) の事業規模となる。
りらいあコミュニケーションズ 代表取締役社長で、アルティウスリンク 代表取締役社長に就任する網野 孝 氏は新社名に込めた意味を次のように説明する。
「新会社の社名は、ラテン語で『より高く』を意味する
『アルティウス』と、つながりを意味する『リンク』の2つの願いを込めています。
その言葉どおり、りらいあコミュニケーションズとKDDIエボルバのそれぞれの強みを融合し、コンタクトセンター事業、BPO (Business Process Outsourcing) 事業をさらなる高みへと押し上げていくことがアルティウスリンクを発足する目的です」
網野 孝 氏
(アルティウスリンク株式会社 代表取締役社長に就任予定)
これを受け、KDDIエボルバ 代表取締役社長でアルティウスリンク 代表取締役副社長に就任する若槻 肇 氏は、
「企業規模の拡大によってコスト競争力を高め、かつ、デジタル技術への投資を増やすことができます」と話し、こう続ける。
若槻 肇 氏
(アルティウスリンク株式会社 代表取締役副社長に就任予定)
「今日、多くの企業がネットワークを介したお客さま接点を強化し、市場における自社のブランド、商品の競争力アップにつなげようとしています。そうしたニーズに対応していく上では、先端のデジタル技術やデータを駆使しながら、コンタクトセンターをはじめとするお客さま接点のDXを加速させなければなりません。
その一手が、りらいあコミュニケーションズとの経営統合であり、アルティウスリンクの発足です」
コンタクトセンターのDXとは、データを中心とする「デジタルBPO」を実現することを意味する。
デジタルBPOは、「CX (お客さま体験) デザイン」「エコシステム」「データ分析」の3つから成り、分析したデータに基づいてCXを常に改善していこうというものだ (図1) 。
現在コンタクトセンター業務においては、電話ニーズは一定数継続しながらもWebフォームやFAQ、チャットなどのデジタルを通じた問い合わせへの期待値が高まっている。
デジタルBPOのコンセプトを採用した次世代のデジタルコンタクトセンターでは、こうした期待値の変容に対応し、問い合わせ内容に応じて生成系AIと人 (オペレーター) が適切に役割分担することで、オペレーターの業務負担を軽減するとともに、エフォートレス (ストレスのない) な良質のお客さま体験を提供することを目指している。
「日本のコンタクトセンター事業者は人財不足の問題に長く悩まされてきました。デジタルBPOは、デジタル技術やAIを活用することで、その問題を抜本的に解決すると同時に、コンタクトセンターに対するお客さま満足度を高める一手でもあります。
また、そのようにしてコンタクトセンターに届いたお客さまの声を価値に変え、ビジネスの改善や変革へ生かしていく、このサイクルを回していくことがとても重要です」(若槻氏)
そうしたデジタルBPOの鍵となるのがデータ分析だ。コンタクトセンターに寄せられたお客さまの声 (VoC) をデジタル化し、CRM (注2) に保持されているお客さまデータと統合してAI等で分析する。
これにより、お客さま体験のインサイトと、お客さまニーズのインサイトの2つを抽出することでデータドリブンなCXデザインを実現していく。こうしたデータ分析を通じてお客さま体験の向上に生かし、「次世代CX」実現を目指していくのがアルティウスリンクの戦略である。
また、アルティウスリンクがデジタルBPOを実現していく上で強みとなるのが、親会社であるKDDIと三井物産のグループ会社のアセットやリソースといったチームソリューションを活用できることだ (図2) 。
「KDDIと三井物産のグループ会社のリソースや技術を適所で活用することで、コンタクトセンターを含むお客さま接点のDXをワンストップで提供できます。アルティウスリンクは、それらをお客さまに最大限発揮できることが大きな強みです」(網野氏)
また、りらいあコミュニケーションズではグローバル市場における三井物産の実績や知見を生かし、コンタクトセンターのグローバル展開を積極的に行っている。
アルティウスリンクでは、その強みを継承し、デジタルBPOのグローバル展開にも力を注いでいくという。
KDDIエボルバとりらいあコミュニケーションズのように、同じような企業規模の経営統合では、組織文化を融合・調和させるのに時間を要し、シナジー効果が生まれにくいことが懸念される場合もある。しかし、両社の組織文化には共通性が強くあり、融合に時間を要することはないだろうと両氏は口をそろえる。
「コンタクトセンターで働く人財はアルティウスリンクにとって財産です。デジタルを使ってお客さまへのサービスを高度化することももちろん重要な目的ですが、それは人の価値があってこそ成り立つものです。人とデジタルを再定義して最適なお客さま体験を設計・創造することを統合会社で目指しています」(網野氏)
「KDDIエボルバでは、従業員満足度の向上や働く女性への支援、働き手のダイバーシティの確保、働く環境の継続的な改革・改善などを重要な経営課題として位置づけて取り組んできました。その点は、りらいあコミュニケーションズも同様で、統合する2つの会社の組織文化は非常に似通っています。ですから、組織的な融合は円滑に進むと見ていますし、組織の規模拡大により働き手にとっての会社の魅力、信頼感が一層増し、よりやりがいがあり働きやすい環境になると期待しています」と若槻氏は述べる。
今日、人財不足の慢性化やAIなどのデジタル技術の急速な進化、そしてDXの活発化などによって、コンタクトセンター事業は大きな転換期を迎えている。そうした時代の変化にいち早く適応し、法人組織や行政機関がお客さまや生活者に対して価値あるサービスを、必要最低限の業務負担で行っていく上で、デジタルBPOが果たす役割は大きい。
網野氏は「りらいあコミュニケーションズとKDDIエボルバは、デジタルBPOを実現していく上で最高のタッグであると確信しています。これからは、それぞれが培ってきた技術、仕組み、ノウハウの優れた部分、そして人財を結集し、アルティウスリンクを、お客さまにとっても、従業員にとっても最高の企業にすべく全力を傾けていきます」と力強く抱負を語ってくれた。
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