日本の教育現場ではいま、児童生徒の学びの高度化が求められ教育DXが叫ばれている中で、土台となる教育環境のデジタル化が中々進まず、教職員の働き方改革が社会課題となっている。校務のデジタル化で教職員の働き方を変えることは、教育DXに向けた第一歩として各教育機関が取り組むべき課題である。
KDDIは教育環境のDX推進を志す全国の先生方を支援するため、通信インフラやセキュリティ対策をはじめ、校務効率化を実現するクラウドサービスまで、一気通貫型のトータル・ソリューションをワンストップで提供している。働く場所やネットワークの境界を意識せず情報資産を保護する「マネージド ゼロトラスト」×クラウド型校務支援システム「BLEND」でどのようにして教職員の働き方改革を具現化しているか、ルーテル学院 中学・高等学校 校長 鶴山 克郎 様に話を伺った。
学校法人 九州ルーテル学院 ルーテル学院中学・高等学校 (以下、ルーテル学院) の学院標語は「感恩奉仕」。
「この言葉は『今ここにいることに感謝し、神さまと人の役に立つ人間になる』という意味です」とルーテル学院の校長 鶴山 克郎 様は話す。
感恩奉仕の精神のもと生徒・保護者に寄り添った教育を目指しているルーテル学院では、理想の教育の実践のためにICTを積極的に取り入れている。鶴山様は、理科教員として奉職した後、「情報」の教科新設に伴って情報科教員の免許を取得。
同時に、ルーテル学院の情報システム管理も担ってきたと振り返る。
「私は中学生のときにBASICに触れ、成長とともに社会の急速なIT化を実感してきた世代です。教育現場にもICTの導入は進んできましたが、一般企業ほどのスピードではありません。2000年代前半と比較しても教職員の採用枠は減る一方、学校事務の量は増大しています。かつては夕方になれば生徒と会話する機会も多く、部活動に顔をだす時間的余裕もありました。しかし、書類や事務作業は年々増えていき、生徒が用事で職員室に来ても『ちょっと待ってね』と言わなければならない状況になっていました」
鶴山 克郎 様
そうした状況下で発生したコロナ禍は、先生方にも自宅勤務を強いることになった。国や自治体の学校向けIT予算は生徒向けを想定していたため、教員用のPCを対象とした補助ではなかったことも、この課題を顕著なものにした。
「本学院では書類作業の効率化や紙のコピー削減のために、以前から先生方に1人1台の校務用PCを提供できるよう予算を組むと同時に、学校の隅々までWi-Fiが届くように通信環境の整備も推進してきました。
セキュアな通信環境の構築とMDM (モバイル端末管理サービス) による端末のデータ管理・情報漏えい対策にも力を入れました。
とはいえ、情報管理の徹底は先生方に『お願い』するばかりでは根本的解決になりません。先生方が気兼ねすることなくPCを使うことができ、かつセキュリティ面で適切な情報管理を実現したいと考えていました」
コロナ禍によって授業や校務のリモート化など、教育環境は大きく変化した。ルーテル学院では今後もデジタル化のメリットはそのまま継続しながら、よりよい授業や学校運営を実現していきたいと考えている。
これまでのルーテル学院では、機微情報 (生徒の成績データなど) を守るべく、何重にもロックを施したオンプレミス環境を構築し、その部屋に入らなければ成績情報を入力できないようにしてきた。そのため、先生方は入力作業のために順番待ちをしなければならず、非効率的だった。
状況が変わったのはクラウド技術が格段に向上し、機微情報 (生徒の成績データなど) であってもセキュリティが保たれた環境で運用できるようになったことだ。
「情報セキュリティを担保するには、端末内部にデータを残さないことが重要ですが、気づかないうちにローカル環境にバックアップが自動生成されている場合もあります。端末は各種セキュリティサービスで守れますが、ネットワーク上を行き来するデータの監視までは難しい。KDDIからゼロトラストの考え方と対応サービスを紹介されたとき、私が実現したい環境を構築できると確信しました。通信を交通整理してくれるこの仕組みこそが、私たちに必要でした」と鶴山様は話す。
関 崇
KDDIソリューション事業企画本部 事業企画部 エキスパートの関 崇は、「セキュリティやネットワークに対する不安がなく、先生方にしかできないお仕事に集中いただくための環境づくりこそがゼロトラストの価値です」と説明する。日本の教育現場に共通する課題であるアナログな管理手法からの脱却こそが、より良い教育を実現させるためには不可欠だということだ。
校務の効率化において、ルーテル学院が特に期待しているのはKDDIとモチベーションワークス株式会社が提供している「BLEND」だ。その「BLEND」について、鶴山様は次のように話す。
「フルクラウドの 『BLEND』を使うことで、先生方が場所にとらわれない柔軟な働き方を実現できます。『BLEND』はセキュリティ対策もしっかりしており、バランスのよいソリューションだと感じました。また、開発元のモチベーションワークスは、カスタマーサポートや開発メンバーに教員経験者が多数所属していて、私たち現場教員の声や使い方が反映されている点も心強く、スタートアップ企業ゆえのフットワークの軽さや改善要望への対応の速さも魅力です」
鶴山様が「BLEND」に注目した理由はほかにもある。
「『BLEND』は入試から卒業までを一貫して扱えます。Web出願の実装も早く、本学院のWeb出願受付をサポートしていただけています。教職員が使えるだけでなく、生徒・保護者もアカウントを持って『BLEND』の機能を利用できますので、学校が開示をすれば、生徒の出欠・成績の情報や保健室利用状況なども保護者自ら確認することが可能です」
さらに「BLEND」とのKDDIのシナジーについて、関は次のように補足する。
「KDDIでは 2022年度から『BLEND』を当社の商材として提供開始しました。フットワークの軽さなどスタートアップ企業の良さがある一方で、世の中に絶対に必要なサービスをスケール化させることに KDDIが加わる意義があると感じています。
『BLEND』は学校へのサポートは直接モチベーションワークスが対応という体制は維持しつつも、KDDIが持つ全国の販売網などを生かして展開を進めています。まだまだ『マネージド ゼロトラスト』×『BLEND』の導入・構築はこれから増えていく状況にありますが、逆にこれをユニークなものにせず当たり前にしていくことで、社会課題となっている学校現場の働き方改革につなげることが我々のミッションだと思っています」
鶴山様も当初はKDDIを「携帯電話のauブランドの会社」と認識していたが、KDDIの営業担当者が足繁く通い、ソリューション紹介資料を継続的にアップデートし続けたことで「法人向けのビジネスを展開する企業としてのKDDI」を知り、協力関係を深めていったと振り返る。
「ルーテル学院にとってKDDIは、未来の教育を実現するために一緒に取り組む仲間でありパートナーです。
本学院では取り組みを一気通貫でお願いでき、網羅的・統合的なソリューションを持っている会社を探していました。新しい取り組みについて検討したり、何かサービスの利用に不具合が生じた際など、相談窓口が1つであることは非常に心強いです」
鶴山様がKDDIの強みを実感したのは、全校生徒分のタブレット端末を3年契約で購入したときだ。
「KDDIの調達力の高さに驚きました。端末の納入だけでなく、MDMのソリューションとセットでご提案いただけたほか、故障時の代替機手配なども非常にスムーズで感謝しています」
関はこうした鶴山様の考えに賛同するとともに、 KDDIのスタンスについて 「DXの取り組みではグランドデザインが不可欠です。KDDIはお客さまを知り、課題や要件を一つ一つ理解して解決への道筋を一緒に描いています」と強調する。
学校DXに向けた今後について鶴山様は、
「ゼロトラストに変わることで先生方には多少の混乱はあると思いますが、 タイムリーに情報を提供し意識を醸成していきたいと考えています。そうして先生方が安全に使える環境が構築できたあとは、 『BLEND』の利用範囲を拡大していく計画です。また、『BLEND』を含めいくつかのツールを使っていますが、これらの一本化、さらには家庭学習時の有効なツール活用を考えていきたいと思っています。
これからは、授業支援と校務効率化の相互連携、さらに授業と家庭学習を結びつけて提供するアダプティブラーニング
(個別最適化学習) の実現も期待しています」と展望を語る。
KDDIでは教育DXを大きく3つのステップで支援している。1つ目のステップは学校そのもののICT化・デジタル化で、生徒・先生方の端末や通信回線等のICT 基盤。
2つ目のステップは「マネージド ゼロトラスト」環境構築や、 「BLEND」 などのクラウドサービスによる学校現場の働き方改革の支援。 そして、その先の3つ目のステップはデータの利活用や学習の個別最適化だ。
「マネージド ゼロトラスト」×「BLEND」でステップ2に取り組み、ステップ3であるさらなる高みを目指しているルーテル学院。 KDDIはこれに伴走し、 同学院の未来の教育現場づくりを支援するとともに、 より多くの学校の教育 DX のお手伝いに注力していく。