KDDIは、通信インフラの安定性と信頼性を高めるために多くの取り組みを行っている。
この記事では、災害時の対応策やAIを活用した運用の革新、人財育成に焦点を当て、KDDIが未来の通信インフラをどのように守っていくのかを解説する。
KDDIでは、KDDI VISION 2030として、「『つなぐチカラ』を進化させ、誰もが思いを実現できる社会をつくる。」ことを掲げている。このビジョンのもと、命・暮らし・心をつなぎ続ける社会を実現するために、さまざまな取り組みを進めている。この「つなぐチカラ」とは、単に通信手段を提供するだけでなく、人々の心や生活をつなぎ続けることである。KDDIは、命を守り、暮らしの質を向上させるため、さまざまなサービスを展開している。
KDDIは、「日常」「非日常」「空が見えればどこでもつながる」の3つの軸で、安定・快適な通信環境を提供している。
日常生活では、普段利用する鉄道路線や商業施設を中心にエリア改善を図っている。非日常においては音楽フェスティバルなど、近年はイベントの入場に電子チケットを利用することが一般的となり、イベント運営において通信が不可欠な要素として重要視されつつある。普段は人が集まらない場所でも快適に通信を利用できるように、臨時対策としてStarlinkなどの衛星通信を用いることで、これまで通信が難しかった場所でもつながりやすさを実現している。
自然災害が頻発する日本において、KDDIは通信インフラの安定性を確保するために、多面的な災害対策を講じている。近年、地震や台風などの自然災害によって、通信設備が長時間にわたり利用できなくなるケースが増えている。停電や回線障害が原因で通信が停止することも多く、これに対する備えが重要である。
KDDIでは、災害時における通信復旧のために、迅速な対応体制を整えている。車載型基地局の利用や、仮設電源を導入することで、通信環境を早急に回復させる取り組みを行っている。また、災害時には衛星通信を活用し、被災地における通信環境を確保する努力も行っている。2024年1月に発生した能登半島地震では、KDDIは発生から3分後には災害対策本部を設置し、通信復旧に当たった。現場の状況をリアルタイムで把握し、通信復旧に必要な資源を適切に配備することで、早期復旧を実現した。道路の寸断や雪による過酷な状況下において、Starlinkといった新しい通信手段が大きく効果をあげた。また、今回、通信事業者間で船上基地局の共同運用、給油拠点の相互融通等さまざまな面における連携も実現した。この成果は、災害対策において大きな一歩を踏み出せたと考えている。
また通信インフラの保守運用において、技術力の向上と人財育成にも注力している。変化の激しい通信業界において、適応力のある人財を育成することは不可欠であり、KDDIグループで年間1,000件を超える復旧訓練やさまざまな研修等も行っている。これには、大規模な災害を想定した訓練や、日常的な障害を模擬した訓練なども含まれている。さらに、情報連携訓練を通じて、お客さまへの周知、広報対応の迅速化も図っている。この他にもDX研修やAI活用の社内コンテスト、OJT等を通して、基礎的なスキルから実践的なスキルまで磨き上げ、高度な技術の習得を目指している。これらの活動が、全体の技術力向上につながっている。
通信インフラの安定性を確保するため、KDDIでは5Gや仮想化技術の進展に伴うトラフィックや設備の増大、システムの複雑化に対応した取り組みを進めている。
2016年から始まったこの取り組みの一環として、約2,000業務の可視化ならびに標準化、2021年には4,000件のシステム要件を自動化したスマートオペレーションを導入し、運用の効率化が図られている。スマートオペレーションとは、匠の運用を、ダッシュボード上でサービスの状態を一目で確認し、最小限の操作 (ゼロタッチやワンタッチ) で運用する仕組みであり、運用者は経験や知識の多少にかかわらず最小限の操作で問題を解決することが可能である。
このような自動化基盤を活用することで、東京と大阪にある監視拠点でリアルタイムに情報を共有することが可能になり、ミラー化が実現されている。この一体型運用により、災害発生時でもダウンタイムなしで監視を継続できる体制が整えられている。
2024年にはAIを用いたネットワーク障害検知の仕組みも導入した。トラフィック量やCPU使用率のデータ等を学習し、予測する仕組みで、予測値と実際のデータに乖離が生じた際に検知、判断する。障害検知においては自動化プロセスを導入しており、今後はさらに復旧対処プロセスまでの一連のプロセスを自動化することを目指していく。以前は固定の閾値 (注1) を設定していたが、AIの導入により動的に閾値を調整できるようになり、さらに小さな異常も捉えられるようになった。
例えば、通信はできているもののトラフィックが通常よりも少ないといった品質劣化のケースにおいては、従来の固定閾値では検知が難しかったが、AIによる動的閾値を設定することで検知可能となった。これにより、KDDI設備の品質劣化や特定端末の不具合、他事業者で発生した異常などのトレンドもお客さまからご申告をいただく前に自動検知ができ、迅速な対処も可能となる。
今後も、AIを活用した運用の高度化にさらに取り組み、サービスの早期復旧やネットワークの安定運用に努めていく。
KDDIは、通信インフラのさらなる進化を追求し、AIや自動化技術を取り入れるなど、より効率的で安定した通信サービスを提供する基盤を整備し続けている。
未来の通信インフラは、より一層の柔軟性と信頼性を持ち、人々の生活を支える重要な役割を果たす必要性がある。
さまざまな取り組みを通し、KDDIは通信インフラの未来を切り拓くと同時に、社会基盤の安定化にも貢献し、通信のチカラでより良い社会の実現を目指していく。