空が見えればどこでもつながる
衛星とauがダイレクトに通信する、国内初のサービス「au Starlink Direct」。
通信インフラの整備が困難な山間部や島しょ部、海上などにおいても、連絡手段、緊急時などに活用でき、「つながる安心」をお届けします。
本セミナーでは、法人でのユースケースやつながる仕組み、利用方法などを中心にわかりやすく解説します。
CMを見て気になっていたという方はぜひこの機会にお気軽にご視聴ください。
KDDIは2025年4月、スマートフォンで直接衛星通信が可能な日本初のサービス「au Starlink Direct」の提供を開始した。SpaceX社との連携によって実現したこの革新的なサービスは、山間部や島しょ部、海上など従来の通信インフラが届かなかったエリアに“つながる安心”をもたらすとともに、業務効率化や非常時の連絡手段としても大きな注目を集めている。
今回は「au Starlink Direct」の企画・導入に携わったKDDIの事業創造本部とプロダクト本部のメンバーにインタビューを実施。サービス立ち上げの背景や苦労、法人活用の広がり、そして今後の展望について話を聞いた。
――2025年4月、「au Starlink Direct」がいよいよ提供開始となりました。KDDIがSpaceX社の『Connecting The Unconnected (つながらないをつないでいく)』というミッションに共感し、Starlink衛星とスマートフォンの直接通信サービスを導入した背景について、事業創造本部 LXビジネス企画部の西林グループリーダーに聞いた。
――Starlinkによって実現できる“新しい通信の価値”について教えていただけますか。
西林 日本の通信インフラは、人口カバー率でみれば99.9%と世界でもトップクラスです。しかし、面積カバー率でみると約60%にとどまっており、山間部や島しょ部、海上、さらにダムといった建設現場など通信が届かない場所も多くあります。
こうした「圏外が当たり前だった場所」に対して、“空が見えればどこでもつながる”という衛星通信ならではの特性を活かし、通信の選択肢を広げていく。これが、 「au Starlink Direct」がもたらす新たな価値であり、KDDIが目指す通信インフラの進化だと考えています。
――KDDIがいち早く衛星通信に注目されたのには、何か背景があったのでしょうか。
西林 KDDIの前身である国際電信電話 (KDDI) は、1963年に茨城宇宙通信実験所を開設し、日本で初めて衛星通信システムを構築しました。今で言う“衛星中継”も、日本で最初に成功させています。 そのような歴史、知識、経験があったからこそ、Starlinkの可能性をいち早く見いだし、世界に先駆けてSpaceX社との業務提携をスタートできたと自負しています。
また、KDDIは『ずっと、もっと、つなぐぞ。au』というスローガンのもと、全国さまざまな場所で通信エリアの拡大や改善を続けてきました。そうした取り組みの積み重ねが評価され、世界各国の通信体験を比較するOpensignal社の『グローバル・モバイル・ネットワーク・エクスペリエンス・アワード2025』でも、3部門で世界1位を獲得しています (注1) 。
西林 武範
こうした確かな実績や取り組み、そして“通信を何より大切にしてきた”という弊社の姿勢があったからこそ、今回の「衛星通信」導入をいち早く決断できたのだと考えています。
――新たな技術をいち早く導入された背景には、さまざまな苦労や課題もあったのではないでしょうか。
西林 「au Starlink Direct」は、スマートフォンと衛星が直接通信する“Direct to Cell”サービスとして、2025年4月にKDDIが日本で商用化を実現しました。世界では3番目、アジアでは初の事例になります。日本で初めてのサービスだったため、一筋縄ではいかないことばかりでした。
――具体的には、どのような点で苦労されたのでしょうか。
西林 例えば、各国で周波数の扱いや規制が異なるので、前例のない日本での挑戦ならではのハードルがいくつもありました。そうした中で、海外のパートナーと情報を共有しながら、時には社内の上層部や関係部門の力を借りながら、ひとつずつ課題を乗り越えていきました。
SpaceX社をはじめ、社内外の多くの仲間たちと “つながらないをつないでいく” という共通のビジョンを持ち、夢中になって取り組んできたからこそ、「au Starlink Direct」のローンチが実現できたのだと感じています。
――サービス提供開始直後から、反響も大きかったと聞いています。
西林 「au Starlink Direct」は2025年4月10日からサービスを開始しました。ゴールデンウィーク期間中には約4万人のお客さまにご利用いただきました。山岳地域での活動や林業など、これまで電波が届きにくかった場所で「SMSが使えるだけでだいぶ違う」という実感を持たれた方が多かったようです。
また、「KDDIはインフラに投資している会社だ」「これがあるからauを選んだ」という声を聞くと、これまで通信品質を向上させるために積み重ねてきた取り組みが広がっていることを実感でき、本当にうれしいですね。
――法人の多様なニーズに対応するサービスとして期待される「au Starlink Direct」は、単なる通信サービスにとどまらず、どのような付加価値を提供できるかという視点を重視しながら、法人向けモバイルサービスを企画・推進する、プロダクト本部 モバイルサービス企画部の日比野グループリーダーに聞いた。
日比野 健太郎
――「au Starlink Direct」の導入で、法人のお客さまがビジネス活用できるシーンや価値について教えていただけますか。
日比野 法人のお客さまの圏外エリアでの業務において「業界を問わない汎用的なニーズ」と「業界や業務に特化したニーズ」の両方に幅広く対応できるようになっていくと感じています。
まず汎用的なニーズとしては、圏外エリアにおける非常時の通信手段です。「au Starlink Direct」なら、特別な機器を用意する必要がなく、従業員が普段使用しているスマートフォンから安否確認の連絡や居場所の共有、さらにはAIチャットで気象情報を確認したり、緊急時における一時避難場所の確認なども可能になります。
――「特化したニーズ」では、どのような現場で活用されているのでしょうか。
日比野 特にフィールドワーカーの方々からの反応が大きいですね。建設現場、海上作業、山間部での点検業務など、これまで通信インフラが十分に整備されていなかった環境においても、スマートフォンさえあればコミュニケーションが可能となる点について高い評価をいただいています。
これまでは、通信が届かない現場では、山中であればいったん下山したり、海上であれば陸へ戻ったり、電波の届く場所まで移動して連絡する必要がありましたが、その時間や労力を大幅に削減できるのは非常に大きなメリットとのお声をいただいています。
――今回、他社向けプランの提供も開始されましたが、概要を教えていただけますか。
日比野 より多くのお客さまに、どこでもつながる価値を感じていただくためには、通信キャリアにかかわらず、ご利用いただける環境を整えることが必要だと考えました。
そこで、2025年5月7日より、au以外の回線をご利用のお客さま向けにも「au Starlink Direct」をご利用いただける専用プランの提供を開始しております。
これにより、auユーザー以外の法人のお客さまにも通信圏外のエリアで、業務効率化や迅速な対応を可能とする環境をさらに広げられると考えています。
――今後のサービス展望について、教えていただけますか。
日比野 これまで通信が届かない場所では、紙での記録や、現場から電波の届く場所や事務所までの移動を伴う報告など、アナログな手法に頼るしかありませんでした。現状はテキストメッセージに限定されているものの、海上や山間部での業務効率化や安全確保につながる環境づくりが進んでいます。また、長期間にわたり現場での作業に従事するフィールドワーカーと家族の連絡手段として活用されることで、働く環境に安心感が生まれ、従業員のエンゲージメントが高まる可能性も感じています。
今後は山間・島しょ部の住居へのスマートメーター (注2) 活用や、圏外エリアでの故障車の緊急連絡といった用途での活用も目指しています。通信が届かない場所でも、故障や異常をリアルタイムで検知・通知できる仕組みを整えることで、より安心・安全な社会の実現に貢献できると考えています。
――最後に、改めてこのサービスに込める思いを教えていただけますか。
日比野 “空が見えれば、どこでもつながる。”このメッセージに込められているとおり、私たちが目指すのは場所や環境に左右されない通信インフラの実現です。これまで通信が届かなかったことで生まれていた不安や業務上の制約を、少しでも減らしていきたい。そして「au Starlink Direct」を通じて、法人のお客さまにとって「本当に頼れる通信パートナー」になることを目指しています。その実現に向けて、今後は圏外エリアでも使えるサービスのさらなる拡充や、IoTと連携した新たな価値創造にも取り組んでいきます。
西林 衛星通信サービスはKDDIとしての取り組みであると同時に、SpaceX社の技術を活用したグローバルな挑戦でもあります。日本国内でこの新しいサービスをしっかり根付かせていくことが、私たちの使命だと考えています。
KDDIは2024年5月から、お客さまの事業成長・社会課題解決へ貢献するため、AI時代の新たなビジネスプラットフォーム「WAKONX (ワコンクロス)」を始動。
WAKONXのNetwork Layerにおける「au Starlink Direct」を通じて、“つながらなかった場所”に通信を届け、安全性の向上、そして現場業務の効率化DXを支援。これからも業界ニーズに応じた多様な組み合わせで、最適なソリューションを提供していく。