2021年11月19日、「UPDATE OUR BUSINESS~つながるチカラで、ビジネスにシンカを~」をテーマに、「KDDI BUSINESS SESSION 2021 online+」が開催された。かつてない変化の渦中にある現在、KDDIとパートナー企業のセッションを通じて、ビジネスのアップデートを実現するためのヒントが示された。
Special Sessionでは株式会社ビビッドガーデン 代表取締役 / 食べチョク代表の秋元 里奈 様が登壇。オンラインで中小農家を営む生産者と消費者を結ぶビジネスを展開、同社を支えるデジタル活用について語った。
秋元様は自身が家族経営の農家出身だったこともあり、農業の課題解決に全力を尽くしてきた。
「創業以来『生産者ファースト』というコンセプトで事業を進めてきました。コロナ禍で、生産者様が従来の販路を失うこととなり、死活問題に直面しました。そこで会社の全リソースを集中させて、こうした生産者様への支援を行い、サイトの機能改善やマーケティング施策を打ち出し、消費者様への認知度向上に務めてきました」(秋元様)
秋元 里奈 様
「生産者様のこだわりが正当に評価されるようにしたい」という思いを胸に、さまざまなアップデートを繰り返すことで、食べチョクは50万ユーザー以上 (2021年5月時点) が利用する産直通販サイトに成長。同サイトは2020年、12社の産直ECサイト中、「お客さま認知度」「お客さま利用率」「お客さま利用意向」「ウェブアクセス数」「SNSフォロワー数」「生産者認知度」の6つでNo.1を獲得している。
「消費者様と生産者様がオンラインでコミュニケーションできる環境をつくり、購入しやすいようにする工夫を重ねることで、中小規模一次産業の事業成立を支援してきました。現在では、野菜で700万円、果物で900万円、畜産物や水産物でそれぞれ1000万円を超える月間売上実績を出している生産者様もいます」(秋元様)
最近では、「ご近所出品」という販売方式にも取り組んでいる。これは食べチョクに登録している生産者が、まだオンライン販売を手掛けていない近くの生産者の出品を手助けする仕組みだ。「高齢の生産者様を置き去りにしない」というコンセプトで開始し、80代、90代の超ベテラン生産者の生産物が売り出され、好評を得ているという。
秋元様は「今後も生産者様のこだわりが正当に評価され、また高齢の生産者様も取り残さない仕組みの構築に努めていきます」として、セッションを締めくくった。
Main Sessionの前半には、執行役員 ソリューション事業本部 サービス企画開発本部長の藤井 彰人が登壇。
「ともに実現する3つのアップデート」をテーマに、「働く環境」「ビジネス」「社会課題の解決」について話した。
「働く環境」のアップデート:ハイブリッドワークとゼロトラストセキュリティ
リモートワークが浸透するなど、新しい働き方が定着した反面、それに伴う業務品質やチームの一体感の確保、クリエイティビティの発揮、セキュリティへの対応といった新たな課題も顕在化した。
こうした問題について、日本マイクロソフト株式会社の業務執行役員 パートナー事業本部 パートナー技術統括本部長 佐藤 久 様をゲストに迎え、藤井と対談を行った。
日本マイクロソフトはコロナ禍において、全世界でほぼ同時に約16万人の社員がリモートワークになった。
また2万5,000人の新入社員は、入社初日からリモートワークという状況下におかれた。
「全社員に調査したところ、98%の社員がリモートワークを継続したいという結果でした。しかし社員同士のつながりについて多くの課題を感じていることが分かりました。働く場所の議論ではなく、仕事の内容やライフスタイルの状況によって、求める働き方が違っているということです」(佐藤様)
佐藤 久 様
そうしたことから同社では、最適な働き方を自分自身が選択する「ハイブリッドワーク」が必要だという結論に至る。
「これを実現するには、ICTをフル活用して、オフィスをコラボレーションの場所に変えるだけでなく、人事制度なども変化させる必要があります」と佐藤様は続ける。
またセキュリティについては、KDDIが進めている「マネージド ゼロトラスト」のような仕組みが有効であり、「こうした包括的なセキュリティソリューションを中小規模の企業からエンタープライズまで幅広く提供していってほしい」と期待を寄せた。
これに対して藤井は、「KDDIではセキュリティ運用のサービスをセットで提供できます。リモートのデバイスから、クラウドネットワークに至るまですべてのコンポーネントをワンストップで監視運用できるのが当社の強みです」と紹介した。
「ビジネス」のアップデート:5GとIoTの利活用とリカーリングビジネスモデル
ビジネス分野について藤井は、「従来型ビジネスの大きな転換は、つながり方の変化から引き起こされてきた」と指摘する。
電話、インターネット、スマートフォンというように、KDDIの事業の核である通信が、ビジネスのアップデートをリードしてきた。5GやIoTといったテクノロジーでも先導役となり、M2Mと呼ばれていた時代からIoTのテクノロジーを磨いてきた。累計回線数は2023年度末に3000万回線を記録する見込みだ。
また、KDDIグループ内で、ビジネスをアップデートするためのさまざまなサービスを展開している。例えば、ソラコムは誰でも簡単に小規模から活用できるIoTのクラウドサービスを提供している。2021年6月にはセコム、ソニーグループ、日立製作所などとパートナーシップを締結し、IoTプラットフォームのグローバル展開を加速させている。
さらに、5GやIoTでつながり続ける時代には、売り切り型から循環型のビジネスモデルへの転換を図り、お客さまの声を事業の改善・発展へとつなげられる「リカーリングビジネスモデル」(注) を志向することが重要だと藤井は話す。
「ここで重視されるのがスピードです。5GやIoTを活用しても、何年もかけてサービスをつくり上げていては時代に取り残されます。改善の循環が早ければ早いほど、優位性が高まります。既存の技術やサービスを使い、組み合わせて、素早くアイデアを実現することが重要です」(藤井)
KDDIでは、「KDDIリカーリングビジネスプラットフォーム」を提供。サービスインフラ、データ分析、マーケティングなどのアセットをコンポーネントとして利用できる環境を用意し、リカーリングビジネスのクイックな立ち上げを支援している。
藤井 彰人
「社会課題の解決」のアップデート:活発でたゆまぬ異業種間の共創が鍵に
社会課題の解決のアップデートでは、東日本旅客鉄道株式会社 (JR東日本) 常務執行役員 事業創造本部 副本部長の表 輝幸 様を招き、藤井と対談を行った。
表様は、「コロナ禍によるピンチをチャンスと捉え、再開発事業や新サービスの開発を加速させています。現在、KDDIとパートナーシップを組み、鉄道と通信の力を掛け合わせて新たな分散型の街づくりを進めています」と、現在の状況を説明した。
昨年12月に両社で発表した「空間自在プロジェクト」では、リモートワークの進化を目指し、離れた拠点間を実空間さながらに結ぶ次世代会議サービス「空間自在ワークプレイス」の実証実験 が、1都2県13社合同で行われている。
表 輝幸 様 (右)
こうしたことが実用化されることで、人の暮らしが変わり、新たな街づくりも進んでいく。リアルな鉄道ネットワークと通信が掛け合わさることで、さらなる新しいサービスが生まれ、過疎化や都市への人口集中といった社会課題の解決手法もアップデートされる。
JR東日本では現在、KDDIをパートナーに、新幹線におけるテレワーク専用車両の導入や、グリーンスローモビリティを活用した交通課題解決への取り組み、ドローンによるフードデリバリーなどの実験を行っている。
「ヒト起点の豊かな生活提案を行っていく上で、鉄道ネットワークは大きな武器になります。この武器とKDDIの通信ネットワークを融合させることで、提供できるサービスの幅はさらに大きく拡がります。本当に最適なパートナーだと思っています」と表様は話す。
KDDIでは、異業種企業との新規ビジネスの創出や課題解決に向けた取り組みをより加速させるため、「KDDI 5G ビジネス共創アライアンス」を用意している。パートナー各社が持つ強みやアセットとKDDIの持つ5Gをはじめとしたアセットを融合させることで、新たなビジネスを構築しDXを進展させることが目的だ。
藤井は、「新しいビジネスモデルの構築、イノベーションは、才能のある人のひらめきでつくられると考えられがちです。しかし、ほとんどのイノベーションは、既存の枠組みを深く理解して、分解し、それらを再構築することから、見えてくるものだと思います。皆さまが目指すさまざまなアップデートを、KDDIがつなぐことで進化させていくことができれば幸いです」と話し、自身のセッションを締めくくった。