2023年2月21日・22日の2日間、オンラインイベント「KDDI SUMMIT 2023」が開催された。
基調講演には、KDDIの法人事業を統括するKDDI 取締役 執行役員 副社長 ソリューション事業本部長の森 敬一が登壇。
KDDIの事業の軸である「通信」に、デジタルトランスフォーメーション (DX) を掛け合わせることで、お客さまの事業成長にどう貢献するかをテーマに講演した。
森 敬一
森はKDDIの使命と法人事業の全体像について、
「KDDIは事業の軸である通信にDXを掛け合わせてお客さまのビジネスに新たな価値を生み出し、事業成長に貢献したいと考えています」と話し、こう続ける。
「通信については、4Gの浸透に加えて5Gネットワークの整備も進んでいます。そこに掛け合わせるDXについて、
KDDIはお客さまのさまざまな課題を3つの領域でご支援しています」
3つの領域とは、お客さまの事業成長における課題解決や事業創出をご支援する「ビジネスDX」、人々の働く環境を刷新するITインフラの構築を行う「コーポレートDX」、
お客さまの事業成長を支援する基盤をご提供する「事業基盤サービス」だ。
「ビジネスDX」の領域において特に注目されているのが、デジタルツインの技術だ。
通信を使い、フィジカルな空間からのデータをサイバー空間に集め、サイバー空間で分析・先読み・シミュレートし、
それをまたフィジカル空間にフィードバックすることで、お客さまのビジネス展開に貢献していく。
お客さまの思いを形に 東日本旅客鉄道株式会社様
ビジネスDX の1つ目の事例として、東日本旅客鉄道 (JR東日本) 様の取り組みが紹介された。
JR東日本様では高輪ゲートウェイシティ (仮称) のまちづくりを起点として、
日本各地、さらには海外を結び、100年先の心豊かなくらしづくりに取り組んでおり、KDDIは通信と技術でご支援している。
JR東日本様では現在、「高輪ゲートウェイシティ (仮称) 」を世界に誇れる街にしようという考えのもと、
さまざまな取り組みを進めている。
同社 常務執行役員 マーケティング本部 副本部長 表 輝幸 様は、サステナブルなビジネスや社会をどう作っていくかが重要なテーマとなるなか、
「さまざまな課題を解決するための壮大な実験をする、そういう街にしたいと考えています」と話し、「150年前に初めて鉄道が走ったイノベーションの場所でもあるこの地で、
次の100年、150年先の豊かな暮らしのための壮大な実験を、高い志を持ってやっていきたいです」と目を輝かせる。
JR東日本様とKDDIはこれまでも、
グリーンスローモビリティ(時速20km未満で公道を走る電動車を活用した移動サービス) 、ドローンによるフードデリバリーや医療物資の長期輸送、
空間自在ワークプレイス、都市OSに連動したロボットサービスなど、さまざまな共創・実証実験を
行ってきた。
駅・鉄道というリアルと、バーチャルな技術を掛け合わせることで、新しい働き方や暮らしの姿が見えてくる。
表 輝幸 様
「高輪から、エキサイティングな未来をどんどん作っていきたい。そして、日本を元気にして、世界に貢献していきたい」という表様、JR東日本様の強い思いを形にするために、KDDIはこれからも全力でご支援していく。
ともに未来を創造 株式会社GEOTRA
ビジネスDXの2つ目の事例として、
2022年に三井物産様とKDDIとの合弁で設立された株式会社GEOTRAの代表取締役社長 CEO 陣内 寛大 氏に話を聞いた。
GEOTRAは都市人流のデジタルツインに挑戦する企業だ。
陣内 寛大 氏
陣内氏は「GEOTRAは主に都市開発や建設、
交通インフラなどのまちづくり領域および行政や自治体の政策決定時におけるデータ活用の領域で、人流やその他の位置情報を活用したソリューションをご提供しています」と、GEOTRAの事業概要を紹介した。
具体的には、KDDIが保有する人流データ
「KDDI Location Data」に複数のデータ加工技術を
掛け合わせて「都市人流のデジタルツイン」を構築し、プライバシーを強力に保護した上で分析に基づく将来予測とシミュレーションをご提供する。例えば、都市開発の際に、エリア内の滞在時間や来訪目的などが可視化でき、エビデンスに基づいたまちづくりや価値向上に
つなげることが可能となる。
また、人流データを橋梁の重要度アセスメントに
活用することで、ある橋が使えなくなった場合に、
どういった影響が発生するのかをシミュレーションできる。
「KDDIのGPS位置情報データは非常に高解像度の人流データです。こうしたデータを提供いただけるからこそ、合成データやシミュレーション、多様な分析が可能となっています。GEOTRAは位置情報のプロフェッショナルとしてサービスを作りつつ、中長期的には多様なデータを取り込めるプラットフォームを創っていきたいと考えています」(陣内氏)
「コーポレートDX」の領域においてKDDIは、特にマネージドサービスの分野に注力している。
お客さまのネットワークの監視運用に始まり、ヘルプデスク業務やPCのライフサイクル管理、サーバー監視運用、IT管理者向けサービスデスク、さらにはOT (Operational Technology) 領域の監視運用まで、お客さまの課題に寄り添い、お客さまのビジネスを止めないIT環境をご提供する。また、お客さまのカーボンニュートラル実現をご支援する新サービスも提供を開始する予定だ。
「事業基盤サービス」の領域において、お客さまの事業成長を力強くご支援しているのがコンタクトセンター事業とデータセンター事業だ。
コンタクトセンター事業 KDDIエボルバ
コンタクトセンター事業を牽引し
BPO (ビジネスプロセスアウトソーシング) 事業を展開する株式会社KDDIエボルバの代表取締役社長 若槻 肇 氏は、近年お客さまから多いご相談が2つあると説明する。
「1つ目はコンタクトセンターの自動化やDX化を進めたいということ。2つ目はお客さまニーズの多様化により
多岐にわたるコンタクトチャネルを最適化してCX (顧客体験) を向上させたいということです」
その具体例として若槻氏は、カゴメ株式会社様での
「ボイスボット (AI音声自動応答サービス) 」の活用例を紹介した。
これにより、ボイスボットで対応可能な問い合わせのうち22%を自動化するとともに、24時間365日の対応も可能となった。
若槻 肇 氏
KDDIエボルバの強みは、KDDIの約6,000万契約の個人・法人のお客さまへのサポートで培ってきた実績と経験だ。DX化により高度化するコンタクトセンターなどのBPOビジネスに、KDDIグループの通信ネットワーク、クラウド、Webマーケティング、データ分析などの幅広いケイパビリティやアセットを組み合わせてトータルなご提案ができる。
最後に若槻氏は、2023年1月13日に発表した三井物産グループのりらいあコミュニケーションズ様との経営統合に触れ、「従来のKDDIグループとのシナジーに加え、三井物産グループ様および、りらいあコミュニケーションズ様とのシナジーを創出することで、お客さま企業の真の課題解決に貢献してまいります」と今後の抱負を語った。
データセンター事業 TELEHOUSE
KDDIはデータセンター事業として、TELEHOUSEというブランドで国内外の主要都市に45以上の拠点を持ち、主要なクラウド事業者と低遅延でセキュアな接続をご提供し、世界3,000社のお客さまにサービスをご提供している。
講演には、TELEHOUSE International Corporation of Europe Ltd.でManaging Directorを務める高室 貴代 氏がビデオメッセージを寄せた。
高室 貴代 氏
高室氏は「データセンター事業はお客さまのIT環境を支える社会インフラとしての役割のみならず、サステナビリティの取り組みも推進してまいります」と話す。
ロンドンでは2016年に都市型データセンターとして初の
「間接外気空調システム」を導入したことで建物の持続可能性を評価するBREEAM認証を受けているほか、
パリの屋上緑化の取り組みや、フランクフルトで排熱を近隣住宅 (2025年オープン予定) の暖房としても
利活用していく。
なおTELEHOUSEは、ヨーロッパで培ったノウハウを
成長著しい東南アジアへも展開するため、2023年春にタイ・バンコクで新しいデータセンターを開設予定だ。
最後に森は、「KDDIは、つなぐチカラでDXを加速し、サステナブルな社会に貢献してまいります」と講演を締めくくった。