KDDIは通信と非通信領域を融合させることで、さまざまな業種・業界のデジタルトランスフォーメーション (DX) をワンストップで支援している。2023年4月から法人事業のトップを務める取締役 執行役員専務 ソリューション事業本部長 兼 グループ戦略本部長 桑原 康明に目指す姿についてインタビューした。
――近年DXを強力に推進している企業が増えていると感じています。企業がDXに取り組む背景としてどのような課題があり、デジタル技術はその課題をどう解決できるのでしょうか 。
桑原 新型コロナウイルスによるパンデミック、ウクライナ紛争に起因するエネルギー価格高騰など、世界中で想定外の問題が同時に発生し、経済活動に大きな影響をもたらしています。日本ではそうした直近の諸問題に加えて、生産年齢人口が急速に減少していることが大きな課題だと考えています。
このような課題に対し、複数ある打ち手の中で重要だと考えているのがデジタルの活用「DX」です。あらゆる日本企業がDXを推進して業務の自動化・効率化を進め、事業の生産性向上を図ることを求められています。
桑原 康明
――KDDIが法人のお客さまに提供しているDX関連のソリューションについてお聞かせください。
桑原 KDDIでは法人のお客さまに対して、「5G」「モバイル」「固定通信」といったコア事業に加え、「コーポレートDX」「ビジネスDX」「事業基盤サービス」の3領域を“NEXTコア事業”と位置付け、お客さまのDX実現に貢献すべく力を注いでいます。
また、DXを推進・実現するための各種ソリューションを通信サービスのように月額化して提供していることが我々の大きな特徴です。特定の業種・業界向けに、複数の企業で共用できるプラットフォームを提供するといった取り組みも進めています。DXには大きな投資が必要になることもありますが、このような取り組みによって初期投資を抑えながらDXを推進することが可能になります。
――「コーポレートDX」「ビジネスDX」「事業基盤サービス」の具体的な施策についてお聞かせください。
桑原 DXの本質である「ビジネス変革」を実現するためには、ステップがあると考えています。
まず「コーポレートDX」では、お客さまの働き方改革の実現やIT資産の運用を効率化する、ゼロトラストソリューションやマネージドソリューションを提供しています。これにより、お客さまがデジタルを活用してビジネス変革へ取り組める環境を作り、リソースを捻出します。
次に「ビジネスDX」では、コンサルティング、データの取得、アプリケーション開発、分析、システム運用を一気通貫で提供します。これらの高い専門性が求められる領域は、グループ会社がそれぞれのパートを専門的に担っています。より機動的にご支援できるよう、2022年5月に、KDDI Digital Divergence Holdingsを設立しました。
このホールディングス傘下には、KDDIのアジャイル開発事業を分社化したKDDIアジャイル開発センターをはじめ、クラウドインテグレーション事業のアイレット、クラウドホスティングサービス事業のKDDIウェブコミュニケーションズ、アジャイル開発のコーチングサービスを提供するScrum Inc. Japan、デジタルツインのプラットフォームを提供するフライウィールといった、DX推進に必須のケイパビリティ (能力) を持つスペシャリスト集団5社がいます。1,300人超のDX専業体制を構築することで、お客さまのビジネス変革に貢献したいと考えています。
「事業基盤サービス」では、「顧客接点のデジタル化」を加速させることを目的に、KDDIエボルバと三井物産様の関連会社でコンタクトセンター事業およびバックオフィス事業を展開するりらいあコミュニケーションズが2023年9月1日に経営統合し、アルティウスリンク株式会社 (アルティウスリンク) としてコンタクトセンターやデジタルBPO事業をグローバルに展開します。両社の統合により、国内コンタクトセンターではトップ (注1) の事業規模となります。さらに、両社の顧客基盤を生かし、生成系AI (人工知能) なども活用したデジタル化によるサービスの高度化を進め、デジタルBPO (注2) のリーディングカンパニーを目指します。
――DXに欠かすことのできない“データ活用”の取り組みをお聞かせください。
桑原 データを収集・分析してビジネスに活用する、ビジネスを変革する、それがDXの本質だと思います。KDDIはスマホやIoT (注3) などの通信デバイス、そこから得られる膨大なデータ、これらを活用する長年のノウハウがあります。
例えば、2022年5月に三井物産様とのジョイントベンチャーとして創業したGEOTRA (ジオトラ) は、au携帯電話から得られる位置情報を基に匿名化した人流データを生成し、人々の移動手段・時間・目的などを把握・予測するプラットフォーム・分析サービスを開発しました。これにより都市計画や自治体の防災計画が、より精緻に行えるようになりました。
また、2023年4月にKDDIグループに参画したフライウィールは、ビッグデータの活用支援に強みを持っています。独自に開発したデジタルツイン (注4) のプラットフォーム上でお客さまのビジネス活動を再現・シミュレーションすることで、サプライチェーンの在庫量の適正化や通行する人の属性に最適化されたデジタル広告を表示するといった、お客さまのビジネスに新たな価値を提供しています。
今後も、KDDIグループの総力を挙げて、DXを加速させるケイパビリティ拡充に取り組んでまいります。
――お客さまに価値を提供していく上で、法人事業の強みを聞かせてください。
桑原 通信事業者として多くのお客さまのネットワークを守ってきた実績、あるいは国内・海外の自動車会社や社会インフラ向けIoTの運用実績、またauのデータやKDDIのさまざまなアセットを活用してお客さまのビジネスをご支援できるところにあると考えます。これからも、お客さまの事業課題に寄り添い、DX実現のために並走し、またその実現手段をグループ会社と連携してワンストップで提供していきます。
私たちのパーパス (存在意義) は「お客さまの事業成長への貢献」です。これを実現するために「お客さまの売上・利益に貢献」することはもちろん、今後一層重要となる「社会課題解決への貢献」との両面で活動していきます。
KDDI自身も、2030年を見据えた「KDDI Sustainable Action」を掲げ、携帯電話基地局や通信設備の脱炭素化を進めています。2023年5月からは、法人契約のお客さまが携帯電話サービスをご利用いただくことで、二酸化炭素 (CO2) 排出量の削減につながる「グリーンモバイル」を開始しています。今後、法人事業では「グリーントランスフォーメーション (GX)」の実現を目指し、環境問題に貢献するサービスやソリューションを順次提供していきます。
また、働き手不足への対策として、例えば橋梁や道路といった老朽化した社会インフラ、あるいは風力発電の設備点検等にドローンを活用したソリューションで作業を効率化するなど、デジタルの力でさまざまな社会課題解決への貢献を目指します。
――最後に、今後に向けた抱負をお願いします。
桑原 KDDIは「『つなぐチカラ』を進化させ、誰もが思いを実現できる社会をつくる。」という「KDDI VISION 2030」を掲げ、あらゆる産業や生活シーンで付加価値を提供できる「社会を支えるプラットフォーマー」を目指しています。引き続きKDDIグループ一丸となって、お客さまに寄り添いながら、お客さまの事業成長ひいては社会の持続的成長に貢献していきたいと考えています。
――本日はありがとうございました。