物流業界の最新技術が一堂に会する「スマート物流 EXPO」が、2025年1月22日から24日の間、東京ビッグサイトにて開催された。物流DXを実現させるためのデータ分析サービスやAI映像解析、最新ドローン、生成AIエージェントなど、多岐にわたる次世代物流ソリューションが集結。KDDIグループのブースでも実機展示や映像を通じて、物流倉庫の効率化や省人化を目指す具体的なソリューションが披露され、多くの来場者の注目を集めた。
物流業界では「2024年問題」やIT人材不足による「2025年の崖」が課題となっており、企業全体のDX化が求められている。
それに加え円安、燃油費や物価の高騰、後継者を含む人手不足などの多くの困難に直面しており、自動化・省人化・デジタル化によるスマート物流の実現は物流業や製造業の物流関係者にとっては喫緊の課題である。
東京ビッグサイトにて2025年1月22日から24日まで開催された「第4回 スマート物流 EXPO」は、物流業界が抱える課題を解決するための最先端技術が集結する国内最大級の展示会だ。
「物流DX 」を実現するIoT、AI、ロボットなどを活用したソリューションや「グリーン物流」に関する脱炭素技術などが披露され、物流の未来を垣間みる機会となった。今年の展示規模はなんと過去最大の1,800社。運輸・物流のリーディングカンパニーからスタートアップまで、多岐にわたる企業が集い、物流の効率化や省人化に向けたアイデアを提案した。
会場ではKDDIグループも、次世代物流倉庫の実現を支える最新技術の提案を行った。
スマート物流の実現には自動化・省人化・デジタル化が不可欠である。今回KDDIグループが具体的なソリューションとして挙げたのは、次世代物流倉庫向けの最新ドローン技術、データ分析サービス、AI映像解析、生成AIを活用したデータエージェントなどだ。展示ブースでは最新ドローンの実機展示や各ソリューションの映像を通じて、活用事例や導入効果が紹介された。物流分野で省人化や効率化を実現する最新技術は、多くの関心を引きつけていた。
本記事では、来場者の注目を集めたKDDIグループの展示について、当日のイベントの様子を写した写真を交えながら詳しく紹介する。
KDDIグループの展示ブースで注目を集めていた展示の一つが、AI搭載ドローン「Skydio X10」だ。今回の展示では実機2台が持ち込まれ、来場者はその革新的な技術を目の当たりにした。
「Skydio X10」の可視光カメラからの映像とAIを活用することで障害物の検知・回避ができるため、夜間や倉庫内の暗所でも自律飛行 (ドローンが自動的にルートを作成し、飛行) が可能だ。また、上空電波パッケージ (注1) と組み合わせることで、Wi-Fiやモバイル通信を使用し安定的な運用ができる。広大なエリアや障害物が多い環境でも運用できるため、工場内の巡回や広大な土地の監視など、今まで多くの人手が必要とされていた業務の効率化が可能になる。
さらに注目すべきは、「NightSence」により屋内暗所での自律飛行が可能となったことだ。物流倉庫に保管されている材料や資材の確認では、これまで人間による高所作業か、ドローンでの作業も高度な操縦技術が必要であった。「Skydio X10」を活用することで、高所の資材確認も可能になり、安全性の向上だけでなく、作業効率も大幅に改善される。
「Skydio X10」はインフラ点検、災害対応などの幅広い分野で、業務の効率化と安全性向上を両立させる次世代ドローン技術として、会場でも多くの注目を集めていた。
現在、物流業界は深刻な人手不足という問題に直面している。国土交通省の調査 (注2) によると、すでに運送事業の求人倍率は全職業平均より約2倍と非常に高く、このまま具体的な施策を行わない場合、2030年度には輸送能力が約34% (9億トン相当) 不足すると予測されている。それに加え、近年は、燃料価格や自動車関連費用も上昇傾向にあり、物流のコスト増大に関しても問題視されているというのが実状だ。
椿本チエインとKDDIが2024年1月に共同で設立した「Nexa Ware」は、物流業界の人手不足、コスト増大の問題を解消するための物流倉庫DXの実現を目指す。倉庫内設備や人の動きなどの実績データを基に業務を分析・可視化し、効率的な運用を可能にする。さらに、自動化ソリューションの標準化と分散している拠点の共通運用を実現するため、リアルタイムシミュレーションやデジタル監視機能を提供している。
実際に「Nexa Ware」のソリューションに関しては2023年にKDDI物流センターで実証実験が行われており、作業効率を1.4倍に向上させる成果を上げ、2024年8月から商用導入されている。(注3) 今後、同社はデジタルツイン技術を活用した次世代型倉庫の構築を視野に入れており、24時間無人で稼働する全自動物流倉庫の実現に向けた取り組みを進めている。
展示会場では倉庫DXの全体ソリューション構想も展示され「次世代ドローン」による無人監視や「高精度カメラ×AI」による異常検知機能など、具体的な施策が紹介されていた。
フライウィール社が提供する「Conata Data Agent」は、企業内に分散する膨大なデータを迅速かつ的確に検索できるデータ活用アシスタントだ。
ビジネスパーソンの業務時間のうち「調べもの」に費やす時間は多いと言われている。とくに社内で複数のシステムにまたがった複雑な構造の物流管理システムのなかでは、該当の資料を探すのにも苦労するだろう。
「Conata Data Agent」は質問を入力するだけで、構造化データはもちろん非構造化データ (PDFや画像を含む) も横断的に分析し、まるで専属のデータアナリストのように精度の高い回答をすばやく提供する。例えば「お客さま名 提案資料 サービス」で検索すれば、過去の提案資料から該当の提案書、類似提案書などを検索結果として簡単に出力できるのだ。社内の膨大なFAQやマニュアルの中から、その都度回答を探す手間が省けることで、今まで従業員が情報探索に費やしていた時間を大幅に削減でき、業務効率化と生産性向上が実現できる。
「KDDI Video Management Service」(以下、KVMS) は、各種デバイスから取得した映像データを、閉域ネットワークで接続されたセキュアなクラウド環境で統合管理・可視化・解析できるプラットフォームサービスだ。
従来、映像管理システムは拠点ごとに設備を整える必要があったため、設備投資やデータ管理のコスト、情報漏えいリスクが膨らんでしまう課題があった。KVMSを導入すると、本部で一括管理ができるようになるため、サービスに適合したカメラ設備への変更や、データ格納用のサーバーを各拠点で準備するなどといった初期投資も不要になり、大幅なコスト削減が可能になる。さらに、情報漏えいリスクも最小化できるため、安全性の高い運用が実現する。
また、各拠点で監視カメラの映像管理をしている企業の多くは、拠点でのみ映像を確認できる構成のため、外出時やリモートワークなどで現場を離れていると有事の際に拠点の状況をリアルタイムで把握できない点も課題となっている。
KVMSは倉庫や工場などの夜間の不審者侵入や火災発生などを遠隔監視できるほか、災害などで有線回線が断絶してしまった場合でも、Starlink回線で映像が確認できる。さらに、スマートフォンからでも現場の状況がリアルタイムで把握できるアプリケーションや、スマートフォンのカメラを監視カメラとしてクラウドに取込み、共有することができるユニークな機能も有しており、有事の際であっても現場の状況を迅速に把握し、共有できる点が高く評価されている。KVMSは14,000機種 (2025年1月現在) を超えるカメラやデバイスに対応しているため、既存のカメラ設備を最大限に活用できる点も導入しやすいポイントである。
KVMSは物流業界を含むさまざまな分野でDXを推進する技術として、各企業から多くの期待が寄せられていた。
KDDIのエッジAIソリューションはAI解析を活用して車両番号の認識や危険エリアなどへの侵入検知などを行うことで、業務現場での安全性や効率性の向上、コスト削減を実現するソリューションだ。
特に物流分野では「特定エリアへの人物の出入りを検知して、安全管理を強化する」「車両の入退場管理をAIが効率化し、車両待ちの行列を削減する」など多くの業務で効果的に活用できる。
また、解析用のAIは複数モデルをラインアップ。企業のニーズに合わせたデータ解析を行いながら、従業員の安全確保や業務効率化、コスト削減に向けた施策の立案や効果検証をサポートする。
今回の「スマート物流 EXPO」では、物流業界が直面する課題に対して、最新技術を駆使したさまざまなソリューションが紹介された。物流DXが注目される背景には物流コストの増加、現場の人材不足といった現実的な課題がある。これらの課題に対応するためのAIやIoT、ロボット技術などの最新技術や革新的なアイデアが展示会場に集結し、来場者はその実現可能性を確認した。また、会場では現場の課題解決をテーマとしたセミナーも開催され、具体的な導入事例や実績が共有された。
イベント全体を通じて、物流業界におけるデジタル技術の活用が、今後の競争力を左右する重要な要素であることが強調された。データの統合管理やAIによる映像解析、自律飛行ドローンなど、先進的なソリューションが物流の現場を大きく変革するだろう。
KDDIグループは、本イベントで最新の物流DXソリューションを紹介し、業界関係者に新たな選択肢を提供。これからもデジタル技術の力で物流業界を支援していく姿勢を示した。KDDIグループの取り組みは単なる技術提供にとどまらず、企業の事業成長と社会課題の解決を両立させることを目指している。