直近の公式発表の内容を本セミナーではいち早くご説明し、進化を続けるStarlinkの“いま”と“これから”をお届けします。
「防災・BCP」や「圏外エリアでのDX」を支えてきた「Starlink Business」
今CMで話題の「au Starlink Direct」の提供エリア拡大、海外ローミング開始、衛星通信対応アプリ拡充のアップデートを。
さらには、SpaceX 社が発表した「Starlink Mobile向け次世代衛星」までStarlinkの最新のアップデートを詳しく解説します。
圏外や災害時、遠隔地といった通信環境の制約によって、業務の効率化やDX推進を諦めてはいないだろうか。山間部や海上、災害時の現場など、これまで通信インフラが十分に整備されていない環境では、業務継続に課題が生じるケースは少なくなかった。しかし、衛星通信の進化によって、その前提は大きく変わりつつある。KDDIの「au Starlink Direct」は、2025年の提供開始からすでに400万人以上 (注1) に利用されるなど急速に普及している。また、KDDIでは「Starlink」を活用し、IoTや閉域接続といった領域へ活用領域を広げている。本記事では、KDDIが進める「Starlink」を活用したサービスの最新動向と、企業にもたらす可能性を紹介する。
「Starlink」は、低軌道衛星を活用した通信サービスとして注目されている。KDDIではこの技術を活用したサービスを展開しているが、その取組は単発の新サービスではない。2022年に国内初 (注3) の「認定Starlinkインテグレーター (注4)」として「Starlink」サービスを開始して以来、今期で5期目を迎えている。
そのなかでも「au Starlink Direct」は、2025年4月の提供開始以降、すでに400万人以上に利用されている。この数字が示すのは、衛星通信が一部の先進導入企業だけのものではなく、実際の業務や生活の中で受け入れられ始めているという事実だ。
背景には導入ハードルの低さがある。「au Starlink Direct」は日本初 (注5) の衛星とスマートフォンの直接通信サービスであり、auの4G・5Gエリア外でも、空が見える場所であれば自動的に衛星モードへ切り替わる。au回線利用者は追加料金なしで利用でき、他キャリア利用者も専用プランを2枚目のSIMとして申込可能だ。
対応端末もAndroid各機種からiPhone、Apple Watchまで拡大しており、サービス開始当初と比べて対応機種数は大幅に増加している。
「au Starlink Direct」の価値は、つながる場所が増えることだけではない。これまで圏外だった場所でも、現場で利用するアプリやコミュニケーション手段の一部が利用できるようになった点にある。
ダムや山間部、海上などの現場では、auエリア外であってもメッセージ送受信や位置情報共有、緊急情報の受信が可能だ。さらに「KDDI SMARTアドレス帳」や「eYACHO」などの業務ツールも利用できるため、通信環境を理由に業務を中断する必要がなくなる。
また、衛星通信に対応したアプリは44種類に達している。Google マップ、LINE、Yahoo! JAPAN、YAMAP、ウェザーニュースなどの日常利用アプリに加え、法人向けでは「Nobi for Driver」、KDDIが提供する「ロケーション安否確認」、今後対応予定の「Buddycom」なども含まれる。
KDDIはアプリ事業者向けに技術要件の説明や試験環境の提供も行っており、衛星通信対応アプリの拡大を後押ししている。
通信サービスが現場で評価されるのは、理論上つながるかどうかではなく、現場で利用するツールが実際に機能するかどうかである。衛星通信を閉じた特殊用途にとどめるのではなく、既存の業務環境へ自然に組み込めるようにしている点は、企業にとって大きな導入メリットとなるだろう。
特に注目したいのは、「au Starlink Direct」が利用者数を伸ばしているだけでなく、継続的な機能アップデートによってサービス価値を高め続けている点である。
現在は以下のようなアップデートが進められている。
例えば国内接続エリアは、2026年1月の機能アップデートにより、海岸線から24海里までの接続水域へと拡大した。これにより接続可能エリアは約2倍に広がっている。海上利用においては、「au Starlink フェリーWi-Fi」と組み合わせることで、船内の通信環境に加え、圏外エリアにおいても通信手段を確保できるため、業務継続や緊急時の連絡手段としての活用が可能となる。
さらに2026年3月からは、アメリカ (注8) で海外ローミング接続を開始した。これは「Starlink衛星」とスマートフォンの直接通信における国際ローミングとして、連携事業者間では世界初の取組である。今後は対象国の拡大 (注9) も予定されており、衛星直接通信を国内向けサービスにとどまらない構想が見えてくる。
また、24時間365日対応の「au Starlink Direct SOSセンター」も新たに提供されている。圏外で遭難や事故が発生した際には、テキストで送信されたSOS情報をセンターが受信し、警察や消防などへ代理通報する仕組みだ。
このように、利用エリアや利用シーン、対応サービスを広げることで、「au Starlink Direct」は単なる圏外対策サービスから、より実用的な通信基盤へと進化を続けている。
KDDIの「Starlink」を活用したサービスにおいて特に注目したいのが、IoTと閉域接続の領域である。
「au Starlink Direct for IoT」は、国内初のIoT向け直接通信サービスとして提供されている。KDDIは20年以上にわたりIoT回線を提供してきた実績を持ち、累計回線数は6,000万回線 (注10) を超える国内最大規模の基盤を構築してきた。その知見を活かし、これまでモバイル通信が届かなかった山間部や島しょ部でも、IoTデバイスと衛星の直接通信を実現している。
想定用途は、水道やガスの検針、物流、集荷、防災、獣害対策など幅広い。これらの分野では、通信環境の制約から現地巡回や目視確認が必要となるケースも少なくなかった。しかし、人口減少や人手不足が進むなか、インフラ維持の効率化は社会的な課題となっている。衛星IoTは単なる通信エリア拡張ではなく、こうした課題解決を支えるインフラとして期待されている。
さらにKDDIは、「Starlink」によるインターネットを経由しない専用ネットワーク (閉域網接続) サービスを日本で初めて提供している。これは「Starlink」通信を閉域ネットワークサービス「KDDI Wide Area Virtual Switch」を介して、企業や自治体のイントラネットワークへ直接接続するものだ。
インターネットを経由しないため、官公庁、自治体、病院、電力、交通など、高いセキュリティや安定性が求められる環境でも活用しやすい。すでにサービス提供は始まっており、今後はギガビット対応 (注11) も予定されている。
このIoTと閉域接続の二つは、KDDIの先行優位を象徴する取組といえる。KDDIは2020年からSpaceXと連携しながら取組を進めてきた実績を持つ。単に衛星回線を提供するのではなく、企業システムや業務アプリ、セキュアなネットワーク環境まで含めて設計していることが、他社より先行的に提供しているKDDIの大きな強みとなっている。
ここまで見てきたように、KDDIの「Starlink」を活用したサービスは、スマートフォン向け直接通信だけでなく、IoTや閉域接続といった領域にも広がりを見せている。さらに、用途に応じたさまざまなサービスやソリューションを展開している点も特長だ。
例えば、「au Starlink Station」、「au Starlink イベントWi-Fi・au Starlink フェスWi-Fi」、「au Starlink フェリーWi-Fi」といったサービスに加え、利用シーンに応じた関連サービスとして「オフグリッド公衆Wi-Fi」、「小型携帯電話基地局『auフェムトセル』」「船舶向けソリューション『ShipLINK (注12)』」などのソリューションも提供している。
このようにKDDIは、「Starlink」を単体の通信サービスとしてではなく、さまざまな利用環境や業務課題に対応する通信基盤として展開している。
企業にとって重要なのは、衛星通信を導入するかどうかではなく、自社の業務課題に対してどのように活用するかである。スマートフォン、現場のWi-Fi環境、海上通信、災害対策、IoT監視、閉域接続までを一体的に検討できるようになることで、業務継続や人員削減、遠隔監視などの実現につながり、企業にとって大きな導入メリットとなる。
とりわけ、短期間で400万人規模の利用実績を積み上げた「au Starlink Direct」と、国内初となるIoT向け直接通信サービスや「Starlink」の閉域網接続サービスの展開は、衛星通信が実証や話題先行の段階を越え、企業の事業運営を支える実用的な通信基盤へと進化していることを示している。
山間部や海上、災害時、インフラ監視など、従来は「つながらないこと」を前提に運用せざるを得なかった業務は少なくない。KDDIの「Starlink」活用サービスは、その前提そのものを変えようとしている。
KDDIは、業務継続や社会インフラの維持という観点から通信環境を拡張するとともに、スマートフォン向け直接通信、IoT、閉域接続といった領域へ活用範囲を広げることで、衛星通信を企業活動に組み込める段階まで引き上げているのだ。
通信環境が理由で諦めていた業務やサービスはないだろうか。これまで通信の制約によって実現が難しかった業務運用も、衛星通信の進化によって選択肢が広がりつつある。自社の業務に当てはめたときに何が変わるのか、検討してみる価値は大きいだろう。