AIの活用が世界中で加速する中、データセンターには高性能な計算処理能力だけでなく、デジタル主権への対応やエネルギー効率の向上など、新たな価値が求められている。こうした変化を受け、KDDIグループのデータセンターブランド「Telehouse」は、各地域でAI対応インフラの強化を進めている。本記事では、フランスとカナダにおける最新の取り組みを通じて、AI時代のデータセンターに求められる役割の変化と、それに応えるTelehouseの取り組みを紹介する。
生成AIの急速な普及により、データセンターに求められる役割は大きく変化している。これまでデータセンターは、企業のシステムやデータを安全に保管・運用する基盤として発展してきた。AI時代においては、膨大な計算処理を高速かつ安定して実行できるコンピューティング基盤としての重要性が一段と高まっている。
生成AIをはじめとするAIワークロード (注1) の拡大に伴い、GPUを搭載した高性能サーバーの利用が進み、従来以上の電力供給能力や冷却性能が求められる。また、企業が保有する機密データを活用するケースでは、デジタル主権やセキュリティへの対応も重要な課題となる。さらに、AIインフラの消費電力増加を背景に、環境負荷低減やエネルギー効率向上への取り組みも欠かせない要素となっている。
こうしたAI時代の要請に応えるため、Telehouseは、高性能なAIインフラの整備を進めるとともに、デジタル主権やサステナビリティにも対応した次世代データセンターへの進化を世界各地で推進している。
欧州では生成AIの利用拡大に伴い、デジタル主権への関心が高まっている。こうした中、高性能なAIコンピューティングとデジタル主権の両立を実現するインフラの整備が進められている。
こうしたニーズに応えるため、Telehouseは、フランス・パリ郊外の「Telehouse Paris Magny」において、高性能AIコンピューティングに対応した約2MWの高密度モジュールの稼働を開始した。本モジュールは、AI用途の拡大に伴う高性能コンピューティング需要に対応するために設計されている。
さらに、本モジュールはフランス国内に設置され、フランスおよび欧州の法制度の下で運用される。高性能なAIワークロードへの対応とデジタル主権への配慮を両立する基盤として、欧州におけるAIインフラの強化を支える役割を担っている。
企業がAIを本格的に活用するためには、高いコンピューティング性能に加え、重要なデータを安全に活用できる環境の整備も欠かせない。こうした課題に対応するため、Telehouseは2026年7月、AIクラウドサービスを提供するCirrascaleと戦略的パートナーシップを締結した。これにより、「Telehouse Paris Magny」にCirrascaleのAI推論プラットフォームを導入し、フランス国内のTelehouseデータセンターをご利用のお客さまは、機密データを外部GPUプロバイダーへ移送することなく、データが保管されている場所の近くでAI推論を実行できる環境を利用できるようになる。
また、既存のコロケーション環境やホスティング構成を大きく変更することなく、低レイテンシかつ高いセキュリティを維持しながらAIを活用できる点も特長である。これにより、お客さまは機密データを外部へ移送することなく、安全かつ低レイテンシなAI推論環境を利用できる。2026年7月からはトライアル提供も開始され、商用展開に向けた検証が進められている。
高密度AIインフラに加え、安全かつ柔軟なAI推論環境を提供することで、Telehouseはデータセンターを単なる設備提供の場から、企業のAI活用を支えるプラットフォームへと進化させている。
AI向けインフラの高性能化が進む一方で、その性能を安定的に支える冷却技術の重要性も高まっている。GPUを搭載したサーバーは従来と比べて発熱量が大きく、空気だけで冷却する方式では性能や電力効率に限界があるためだ。
こうした課題に対応するため、Telehouseは、トロント中心部に位置するデータセンターにおいて、カナダの都市型コネクティビティデータセンターにおける直接液冷の導入として初 (注2) となる直接液冷技術を導入した。直接液冷技術は、サーバー内部へ冷却液を直接循環させることで効率的に熱を除去する技術であり、サーバーから発生する熱の最大80%を取り除くことができる。これにより、最大120kW/ラックという高密度環境への対応を実現した。また、トロント中心部という立地を生かし、低レイテンシかつ高い相互接続性を備えた環境を提供している点も特長である。
さらに、回収した熱は地域エネルギーシステムへ供給され、都市インフラとして再利用される。高性能なAIワークロードへの対応に加え、エネルギー効率の向上や水使用量の削減にも貢献し、高性能化と環境負荷低減を両立する仕組みとなっている。
今回紹介したTelehouseの取り組みから見えてくるのは、AI時代のデータセンターには、高性能なコンピューティング環境を提供するだけでなく、デジタル主権への対応や環境負荷低減といった多様な価値が求められているということである。
フランスでは、高密度AIインフラの整備とデータを移送することなくAI推論を実行できる基盤の提供を通じて、安全かつ高性能なAI活用を支援している。一方、カナダでは、高密度AIワークロードを支える直接液冷技術を導入し、高性能化とサステナビリティの両立を実現している。
これらは個別の取り組みではなく、Telehouseが各地域で進めるAI対応インフラ強化の一環である。AIの活用が広がる中、自社のデータをどこで、どのように活用し、その基盤をどう構築していくのかは、企業の競争力を左右する重要なテーマになりつつある。AI活用の成否を左右するのは、AIそのものだけではなく、それを支えるインフラである。自社のAI活用を見据えたとき、どのような基盤が求められるのか――Telehouseの取り組みは、その問いを考える一つのヒントになるだろう。
Telehouseは今後も、世界各地でAI時代を支えるインフラの高度化を進め、お客さまのAI活用とデジタルトランスフォーメーションを支えていく。