2023年2月21日・22日に開催されたオンラインイベント「KDDI SUMMIT 2023」から、以下3つのセッションをダイジェストで紹介する。
セッションの冒頭、KDDIゼロトラスト推進部長の堀は、サイバー攻撃の動向や特徴、企業のITインフラの動向について紹介。
「近年の攻撃に対しては、社内ネットワークの内外を問わず全てのアクセスを都度検証するゼロトラスト型の防御が有効とされています。KDDIでは自らこのゼロトラスト型セキュリティを採用し、国内・海外の社員が使用するPC端末に展開しています」と説明した。
続く対談パートでは、日立製作所 サイバーセキュリティソリューション部長の圷 (あくつ) 毅様と日立グループにおけるゼロトラスト施策や取引先の
お客さま状況などについて、意見を交換した。
日立グループでは、2018年からITインフラ自体に抜本的見直しを進め、その取り組みが結果的にゼロトラスト・セキュリティにつながっている。
主眼に置いたのは、オンプレミスとWAN (閉域網) の利用を極力縮小しインターネットやクラウドを最大限活用していくということと、テレワーク中心の働き方への変化に伴いユーザーの利便性を大切にしながら、セキュアなITサービスを提供することだ。現在、日立のグループ会社・海外拠点も含め展開を進めている。
お客さまの状況について圷様は、「ゼロトラスト・セキュリティの引き合いは非常に増えていると思います」と印象を語る。
IT環境がクラウドにシフトするなかで、インシデント対応やセキュリティシステムの構築がより迅速かつ柔軟にできるゼロトラスト・セキュリティへの移行は自然な流れであり、今後はM&AやDX推進など、事業環境の変化へ対応する手段としてもゼロトラストへ移行するお客さまは増えてくるだろうと予見する。また、事業のグローバル化に伴い、海外拠点のセキュリティ対策を実現する手段としてもゼロトラスト・セキュリティは親和性が高いと評価している。
その上で、グローバルでゼロトラスト・セキュリティを実現する際には、ガバナンスやリテラシー、海外拠点のIT施策やネットワーク構成の現状把握、各国の法令対応などが問題になると指摘した。
堀は、「KDDI社内もゼロトラストをグローバルで展開しています。そのポイントは、各国のデータの取り扱いに関する法令に準拠する形でリージョンを分けてSaaS、IaaSの環境を設計したという点です」と紹介した。
KDDIでは一方で、取引先のお客さまに対してゼロトラスト展開の支援も行っている。
KDDIの強みについて圷様は、「高品質で安定した通信サービスと、システムインテグレーションのケイパビリティをグローバルで展開できること」を挙げられた。
セッションの最後で堀は、ITインフラ・セキュリティに関するKDDIの3つのオファリング
「コンサルティング」「システムインテグレーション」「運用支援」や、東芝グループ様への導入に触れ、システムのクラウド化とハイブリッドワークの実現のため、構想策定、セキュリティコンポーネントの構築及び運用業務の代行についてKDDIにて導入した事例を紹介した。
「今後もお客さまの業務事業課題や目指している未来に寄り添い、DXを強力にサポートしていく」と決意を語った。
KDDIネットワークサービス推進部長の中村のセッションでは、
KDDIが新しく取り扱いを開始した衛星ブロードバンドインターネットサービス「Starlink」について紹介した。
冒頭で中村は、働き方の変化や自然災害、社会情勢の変化など不確実性が高まるなかで、
企業や自治体が持続的に事業活動をするために強靭なネットワークの必要性を説明した。
KDDIは従来のアクセス回線に加え、Starlinkによる衛星通信アクセス、5Gによる無線アクセスといった複数のアクセス回線により、体感品質保証、ハイブリッドワーク支援、運用支援/マネージドを提供している。これらを総括し
「『いつでも、どこからでも、安全につなげる』ことをめざし社会に貢献してまいります」と続けた。
中村は、これまで60年にわたるKDDIの衛星通信の取り組みを説明した後、今回新たにサービス提供を始めたSpaceX社の衛星ブロードバンドインターネットサービスStarlinkについて紹介した。Starlinkの通信衛星は、高度550kmの低軌道上に配置され、地上からの距離が従来の静止衛星に比べて65分の1と近いため、大容量・高速低遅延の高速伝送を実現する。
中村 哲也
Starlinkには2つのサービスがある。
1つはStarlinkをそのままインターネット接続に利用する「STARLINK BUSINESS」(後段で詳説) 。もう1つがStarlinkをau基地局のバックホール回線 (基地局とコアネットワークとをつなぐ回線) として利用するソリューション「Satellite Mobile Link」だ。
ここから中村は、法人のお客さまにも大きなメリットを提供するSTARLINK BUSINESSの詳細を紹介した。
STARLINK BUSINESSでは、お客さまのオフィスにアンテナ (ターミナル) と通信端末を設置。アンテナを通じて衛星通信を行い、Starlinkの地上局を介してインターネットに接続する。また、サービス仕様について「最大220Mbpsの下り速度を実現しており、ダウンロード時間が格段に速く、映像もストレスなく見ることができました」と中村自身の体験を語っている。
さらに、サポート体制についてもStarlinkの標準サービスに加え、KDDIによる電話やメールでの24時間365日の受付サポート、故障時の代替端末、端末のケアサポートなどが提供されている点を説明した。
STARLINK BUSINESSのユースケースとして中村は、以下の4つの活用方法を挙げた。
1. 企業・自治体のBCP (注1) 対応:事業活動や公共サービスの維持・継続
2. 通信環境の改善:山・川・道路など保守現場の通信整備
3. 自然災害対応:被災地や避難所の通信確保
4. イベント対応:通信環境構築、通信混雑回避
中村は特に1. に関連して、既存の通信環境にStarlink を組み合わせたBCPパッケージを紹介した。企業オフィスにおけるインターネット接続には光ファイバー回線の利用が一般的だが、このパッケージを導入することにより非常時に光ファイバーの有線回線が切れても、設定変更や接続変更などをすることなく衛星経由での通信が可能になる。
「KDDIはSTARLINK BUSINESSを中心に、先述したBCPパッケージ、災害時に利用できる非常時電源パック、クラウド電話と合わせた音声パッケージ、イントラネットサービスと合わせた利用方法など、お客さまの多様なご要望に応えられるようサービスを広げてまいります」(中村)
なお、セッションの後半では、実際にアンテナや通信機器を使って、オフィスでStarlinkによる衛星通信をしている様子が紹介された。
KDDIネットワークサービス推進部 副部長の新井のセッションでは、クラウド電話、音声環境、音声DXソリューションについて紹介した。
新井は、出社を前提とした従業員共通の環境である「オフィス中心」から、どこでも同じように働ける「働く人中心」への変化に注目し、その環境を整備することは、ダイバーシティやBCP、人材確保の観点でもメリットが大きいと語った。
また、コミュニケーション環境の見直しが重要な要素になることも指摘している。
新井 武
そして、多様な働き方を認め、1人1人が
生産性を高めながら働けるコミュニケーション環境の実現に向け、KDDI音声基盤と「Cisco Webex」や「Microsoft 365」を相互接続したクラウド電話サービス
「Webex Calling」や「Cloud Calling for Microsoft Teams」、さらに、今回新たに加わった「Cloud Calling for Zoom Phone」を紹介した。
「Cisco Webex、Microsoft 365、Zoomがオフィス向けクラウド電話におけるグローバルベストな商材。
この3つをそろえているKDDIは、それぞれのよさや違いを理解しています。新型コロナウイルスが発生した2020年以後クラウド電話の導入が一気に加速し、
2年間で累計開通数は10倍以上になっています。クラウド電話の導入は今後ますます増えてくるでしょう」(新井)
また、オフィスだけでなくコンタクトセンターもクラウド化しているとして、次の2つのサービスを紹介した。
オンプレミスで利用中の設備も電話回線もクラウド化できコスト削減につながる「Genesys Cloud CX」と、簡単なセットアップで新たなコンタクトセンター環境を導入でき、在宅コールセンターもクイックに実現できる「Amazon Connect」だ。
そのほか、コンプライアンス対策やクレーム対応にあたり会話の記録を統合的に管理したい、電話内容の可視化分析により営業活動や応対品質を向上させたいといった音声DXに対する要望に応えるソリューションとして、
KDDIの通話録音と「KDDI Voice Viewer」を紹介した。
新井は「音声の活用は今後ますます広がります。通話内容の翻訳、要約、AIによる自動発信や自動応答など、KDDIは多様化する働き方が広がるなかで、音声を活用したDXにより業務効率化を推進してまいります」と今後の展望を示し、セッションを締めくくった。