多くの企業がデジタルトランスフォーメーション (DX) を推進しているものの、変革を実現するためのデジタル人財をどのように育成していくかという課題を抱えている企業はいまだ少なくない。しかし、業界ごとに課題が明確化する中で、各企業においても積極的な取り組みが進んでいると、ディジタルグロースアカデミア (以下、DGA) の代表取締役社長 豊川 栄二 氏は語る。
今回は、日本の人財育成の現状やDGAが果たす役割について伺った。
――長きにわたり日本経済の低迷が続いています。しかし、そのような中でも、日本企業が競争力を強化し、持続的に成長していくためには、どのような対応が必要だとお考えでしょうか。
豊川氏 多くの企業がデジタル技術を活用した事業変革、すなわちDXを推進し、競争力強化に向けた取り組みを進めています。各社の中期経営計画には、「AI」や「DX」、あるいは「デジタル変革」というキーワードがほぼ必ず盛り込まれており、さまざまな施策が進行中です。しかし、満足のいく成果は得られていないと感じている企業が一定数存在するのが現状です。
その要因の1つとして、日本の雇用形態の在り方が挙げられます。海外企業とは異なり、日本企業は業績改善を目的とした人員整理が難しいため、課題解決には一人ひとりのスキルアップやリスキリングが重要です。しかし、日本企業が社員の教育や育成にかけるコストは限られており、ある調査によれば、日米のGDPにおける企業の人財育成費用の比率は、アメリカと日本で倍以上の差があるとされています。(注1)
豊川 栄二 氏
さらに、新たな事業に適した人財のキャリア採用も海外に比べて圧倒的に少なくなっています。専門性の高い人財を採用したとしても、会社の文化に馴染めずに離職する例も多く見られます。
このような課題を克服し、持続的な成長を実現するためには、企業としての戦略的なアプローチが不可欠です。
――KDDIは、AI時代のビジネスプラットフォーム「WAKONX」を通じて、日本企業の課題解決を支援しています。KDDIグループの一員であるDGAは、WAKONXにおいてどのような役割を担っているのでしょうか。
豊川氏 WAKONXの本質は、通信・ネットワークを基盤に、お客さまとの接点やエンゲージメントを高めることで、お客さまとKDDIグループ双方が成長していく仕組みにあります。重要なポイントは、ネットワークを活用し、AIやデータ分析などを包含したWAKONXの機能群を最大限に活かすことです。これにより、お客さまの課題解決と事業成長に確実につなげていくことを目指しています。
しかし、このプラットフォームの力を最大限に引き出すためには、デジタル技術を活用できる人財の育成が不可欠です。課題を明らかにし、効果的な解決策を導き出すためには、ビジネススキルとデジタルスキルの両方が求められます。
したがって、こうしたスキルや知識・能力を身につけたデジタル人財を育成することが、DGAの重要な役割となります。
人財育成と一口にいっても、私たちが提供するサービスは単なる研修や教材の提供にとどまりません。まずは、お客さまが属する業界を深く理解し、その中でお客さま企業の状況や課題を整理します。そうした情報に基づいて、目指すべき方向性やゴールを設定するために、お客さまと徹底的に議論を重ねるのです。
次に、「目標を達成するために、どのような人財が不足しているのか」「その人財に必要なスキルは何か」「スキルを習得するためには、どのような方法やプログラムが最適か」といった重要な問いを定義します。また、全社で統一されたマインド、スタンス、そしてリテラシーを確立することも重要です。さらに、DXを定着させるためには、「人財育成に必要な文化や土壌が整っているか」も重要なファクターとなります。このため、風土づくりを含めて伴走しながら変革を進めていくケースもあります。
その後、設定した目標に基づいて、DX人財育成プラットフォーム「みんなデ」のeラーニングや、お客さまごとにカスタマイズしたリアル研修を受講していただきます。さらに、学びを継続し、スキルや知識を定着させるための仕組みも提供しています。
これらの人財育成サービスに加え、私たちはスキルや知識、能力を身につけたデジタル人財が実務の中で活躍し続けるための伴走支援も行っています。このように、企画からプログラムや仕組みの提供、さらには伴走支援まで、デジタル人財育成に必要なサービスをワンストップで提供していることが、DGAの大きな強みだと自負しています。
――どの業種からの問い合わせが多いのでしょうか。
豊川氏 ほぼすべての業界でデジタル人財が求められていますが、特に競争が激しい業界や、規制緩和の影響を受けて事業の多角化を積極的に進めている業界からのニーズが顕著です。
例えば、金融業界では銀行法の改正に伴い事業の幅が広がった一方で、他業種からの新規参入も増加し競争が激化しています。
この厳しい競争環境の中で勝ち残るためには、変革が不可欠であるという危機感が業界全体に広がっていると感じています。
2024年度に限っても国内メガバンク含む10行以上にDGAの変革人材のプログラムをご提供しています。
製造業については、人手不足が大きな課題です。デジタルを活用することで人員数を抑えつつ、より付加価値の高い商品の開発や提案を行う企業への変革を目指している印象があります。こうしたお客さまを多数ご支援してきた実績もあります。
さらにIT業界では、営業力強化を目的とした人財育成に注力しています。単に商品を販売するのではなく、さまざまなソリューションを組み合わせてコンサルティングができる営業人財の育成が進められています。
例にもれず、KDDIも営業部門におけるプロ人財の育成に力を入れています。法人営業部門の社員には、お客さまに提案中の案件からモデルケースを選定し、その案件のクロージングまで伴走する取り組みを行っています。単なる座学にとどまらず、事業に密接に関連した実践的な育成プロジェクトとすることで、高い育成成果が得られているとの評価を受けています。
――企業の事業成長にAIが不可欠と言われますが、実態として問い合わせは多いのでしょうか。
豊川氏 問い合わせは多く、期待の高まりを感じています。AIに関連する人財育成については、生成AIの登場以前から取り組んできましたが、生成AIが普及してからはさらに需要が高まり、さまざまな企業に対して生成AIの活用をテーマにした講座などを実施しています。AIの研修は、AIエンジニアの育成やプロンプトエンジニアリングといった技術的な話だけでなく、お客さまのビジネスに合わせてAI活用をどう進めていくかといった内容の人財育成研修も実施しています。
――最後に、DGAが目指す世界についてメッセージをお願いします。
豊川氏 DGAは、デジタル人財育成専門の会社として、設立以来多くのお客さまにサービスを提供してきました。一方で、DGA自身もデジタル変革の必要性を強く認識しており、これまでにeラーニングプラットフォーム事業の展開に加え、IT書籍専門の編集プロダクション企業との合併などを進めてきました。この合併により、卓越した執筆能力や豊富な編集ノウハウを活用し、学びを最適化するための、より幅広いコンテンツサービスを提供できる体制が整いました。
DGAは「デジタルを武器に、人と企業が成長し、日本に変革をもたらす。 」という企業理念を掲げ、デジタル人財育成の最適な学びを提供することで、日本のすべての人と企業がデジタルを活用した成長を実現できる世界を目指しています。AIをはじめとするデジタル人財育成に課題を抱えるお客さまは、DGAにぜひお問い合わせください。