生成AIに関連する各種サービスでお客さまのビジネスをサポートします。
<本稿は、「ダイヤモンド・オンライン」に掲載された記事を転載しています。>
少子化に伴う人手不足が深刻化しており、経営リソースの最適配置やビジネスプロセス変革などが急務となっている。KDDIは、日本企業のデジタル化を加速し、これらの社会課題解決を支援する「WAKONX (ワコンクロス)」というビジネスプラットフォームを提供している (詳細は末尾参照)。
特に注力する六つのテーマの中から、今回は「BPO (ビジネスプロセスアウトソーシング)」について紹介する。
団塊ジュニア世代が65歳以上を迎え、労働力人口の激減が予想される「2040年問題」。まだ先の話だと思いがちだが、その足音は確実に大きくなっている。足りない人手を補うため、ただでさえ先進国の中でも低い労働生産性をどのようにして高めるか。これは、ほとんど全ての日本企業に共通する深刻な課題だ。
「多くの企業において最優先で取り組むべき対策の一つは、コア事業への経営リソースの集中でしょう。現在、より多くの人材をコア業務に投入するため、バックオフィス業務やコンタクトセンター業務をアウトソースする機運が高まっています。専門性の高い受託業者にこれらの業務を託せば、ノンコア業務の生産性が上がるという利点も着目されています」
そう語るのは、KDDIグループのデジタルBPOサービス会社、アルティウスリンクの若槻肇代表取締役社長である。同社は、KDDIの完全子会社であった「KDDIエボルバ」と、三井物産の持分法適用会社であった「りらいあコミュニケーションズ」が経営統合して2023年9月に発足。「WAKONX BPO」の中核的な担い手となっている。
「『WAKONX BPO』は、デジタルコンタクトセンターやインサイドセールス支援といった『フロントBPO』と、各業界特有の課題解決を支援する業務やコーポレート業務支援、ITヘルプデスクなどの『バックオフィスBPO』の2軸で構成されています (図1)。いずれもAIなどの最新デジタルテクノロジーを駆使し、豊富な業務支援経験に基づくオペレーションと組み合わせて、効率的かつ高品質なデジタルBPOサービスを提供できることが強みです」
そこで提供される各サービスには、「WAKONX」の使命である「協調と競争」という考え方が反映されている。
つまり、生産性向上が求められる業務は、業界ごとに共通した課題を解決できるフレームを構築し、効率化を図る。一方で、各企業が自らの付加価値を高めるべき領域は、企業が保有するデータを活用して経営のスピーディーな意思決定を支援することで、競争力向上につながる価値創出を図る、というものだ。
では、サービスを利用する企業は、具体的にどのようなベネフィットを享受できるのか。「WAKONX BPO」の中核を担うアルティウスリンクの若槻社長に詳しく語ってもらった。
アルティウスリンクは24年5月、同社が推進するデジタルBPOサービスの新ブランド「Altius ONE」を発表した (図2)。
そのコンセプトは、「カスタマーサポート」「カスタマーサクセス」「マーケティング」「コマース (セールス)」の四つの領域を支援することで、顧客企業が抱える課題を包括的に解決し、BX (ビジネストランスフォーメーション) に貢献するというものである。
「弊社はこれまで、主にカスタマーサポートを中心とするBPOサービスを提供してきました。『Altius ONE』では、その領域をさらに広げ、カスタマージャーニーにおける顧客接点の高度化や、それに伴うバックオフィス業務を含めた業務効率化を図り、お客さま企業のバリューチェーン全体を最適化できるような支援を目指しています」
一般に、顧客接点の最前線を担うカスタマーサポートはコストセンターと捉えられがちだが、そこで得られる膨大な消費者の声をAIで分析し、事業戦略やサービスの改善に迅速に反映できれば、顧客ロイヤルティーが向上し、コストセンターがプロフィットセンターとしての価値を発揮するようになる。
若槻 肇
「かつて、電話やメールによる膨大な問い合わせを整理・分析するのは困難でしたが、音声認識やAIの急速な進化によって、瞬時の傾向分析や対策が可能になっています。こうしたテクノロジーの力と、国内約3万7000人の弊社オペレーターが蓄積した業種ごとの豊富なサポート経験を組み合わせて、お客さま企業ごとのBXを支援できるのが『Altius ONE』の大きなメリットです」
「Altius ONE」のサービス第1弾として24年5月に発表したのが、デジタルコンタクトセンター機能を備えた「Altius ONE for Support」である。これは、クラウドサービスを中心に構成されたオールインワンプラットフォームだ。
PBX (構内電話交換機)、チャットボット、音声認識、CRM、生成AI、データ分析など、デジタルコンタクトセンター運営に必要な機能が網羅されており、顧客企業に合わせて機能を柔軟に組み合わせることができる。
これらの機能によって、コンタクトセンターに集積する応対履歴などを分析し、課題の特定から改善施策の立案、目的に合わせたAI技術の活用、オペレーション設計、運用までをワンストップで支援する。
「24年9月には、東京大学発のAIベンチャーであるELYZAとKDDIが共同開発した業務特化型LLM (大規模言語モデル) アプリケーションを『Altius ONE for Support』の標準機能として提供開始しました。業務ごとの特性に合った電話・メール応対内容の要約、応対履歴作成における必要事項の抽出、回答メール文章の草案作成などによって、業務の効率化や付加価値の高い顧客対応が可能となります」
「Altius ONE」は、実際どのように活用されているのか。一例として若槻社長が挙げたのは、あるエネルギー企業の導入ケースだ。この企業は、コンタクトセンターが電話で受けた内容を要約する作業に多大な時間を費やしていることに課題を感じていた。
そこで、コンタクトセンター業務に特化したLLMを活用してAIが通話内容を要約することで、人手による業務時間が約50%も減少 (注1)。
また、メール対応業務における問い合わせ内容のスクリーニングや回答作成にもAIを活用している。メールの下書き作成を生成AIとRPA (Robotic Process Automation) を使って自動化。生成AIが問い合わせ内容をスクリーニング・分類し、不足情報の入力や、ナレッジを参照して1次解決を行う仕組みを構築することによって、オペレーターの業務工数は約50%も削減された (注2) 。これらの業務効率化の取り組みにより、問い合わせから回答までの迅速な応対が可能となり、業務も均質化されて、顧客体験の改善につながっている。
今では、生成AIを活用した応対データから要望・ニーズの抽出・分析に取り組み始めており、サービスやオペレーションの改善を図っている。
コンタクトセンター業務を大幅に効率化するアルティウスリンクのサービスは、KDDIグループ内部でも活用されている。
個人の携帯電話サービスに関する問い合わせや、法人の電話回線や各種サービス関連の問い合わせを受け付ける「KDDIお客さまセンター」は24年11月、提供サービスの拡充と高度化を図るプロジェクトをアルティウスリンクと共同でスタート。その一環として、音声認識ツールを活用し、オペレーターの全音源の応対評価を自動化した。
「以前は録音された応対内容をスーパーバイザーが耳でチェックして評価していましたが、自動化によってスーパーバイザーの業務負荷は6割近く削減されています (注3)」
また、両社のDX (デジタルトランスフォーメーション) 知見を生かした新サービスの開発に向けて、実証実験を行うパイロットセンターの構築も進めている。すでに複数の企業が見学に訪れており、25年度以降には実証実験のデモを体験できるショールーム化を目指している。
他にも、アルティウスリンクの社内ヘルプデスクにおける電話受付完全廃止や、FAQとチャットボットによる経営管理業務の効率化など、社内DXを推進し、そのノウハウを企業へ提供する取り組みも積極的に進めている。
「グループ内における成功事例を基に、お客さま企業にもより良い支援サービスを提供していきたい」と若槻社長は抱負を語る。
アルティウスリンクは「Altius ONE」のもう一つのサービスとして、データ活用プラットフォームの「Altius ONE Data Platform」を提供している (図3)。KDDIグループのデータソリューションプロバイダーであるフライウィールと共同開発したデータ分析・可視化のためのプラットフォームだ。
「コンタクトセンターをはじめとした顧客接点を中心に、企業内外のデータを掛け合わせて、多面的な分析ができるのが大きな特長です。問い合わせ実績やお客さまの声はもちろん、企業内の顧客情報や購買情報、外部の気象データ、人流データなども掛け合わせ、高度な相関分析ができます。例えば、過去の問い合わせ実績データを基に統計やトレンドを分析することで、精度の高い呼量予測が可能です。オペレーションの最適化につながり、お客さま企業におけるコストの見直しにも貢献できると考えます」
アルティウスリンクは、企業のデータ活用を、高い分析力と技術力、データ活用ノウハウをもってトータルに支援するフライウィールや、LLMを活用した生成AIの社会実装に取り組むELYZAといったKDDIグループのケーパビリティに加え、三井物産グループのアセットも活用しつつ、「WAKONX BPO」の中核を担う「Altius ONE」の提供を通じて、フロント業務からバックオフィス業務までワンストップのBXを支援、顧客企業の課題解決に貢献していく考えだ。
「『そのつながりを、もっとつよく。うつくしく。おもしろく。』という弊社のパーパスに沿って、お客さま企業とその先にいるお客さまや社会とのつながりを促し、互いの価値や満足感を高め合えるような世の中の実現に貢献していきます」と語る若槻社長。アルティウスリンクの取り組みが、日本企業のBX促進と競争力向上に寄与する未来に期待したい。
WAKONXとは
WAKONXは、KDDI VISION 2030「『つなぐチカラ』を進化させ、誰もが思いを実現できる社会をつくる。」の実現に向け、日本のデジタル化をスピードアップするというコンセプトから生まれたブランドであり、三つの機能群を有するAI時代のビジネスプラットフォームだ。WAKONXを通じて、最適化したネットワークの設計・構築やデータの蓄積・融合・分析を行う。また、AIが組み込まれたサービスやソリューションを各業界に最適化して提供することで、企業・組織の事業成長と社会課題の解決を支援する。