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「2025年の崖」とは経済産業省のDXレポートに触れながらわかりやすく解説

「2025年の崖」とは
経済産業省のDXレポートに触れながらわかりやすく解説

2025 6/30
「2025年の崖」とは、経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」で言及された社会課題で、日本企業の競争力が著しく低下し、大きな経済的損失が生じ、世界的なデジタル競争の敗者となるリスクを指します。レガシーシステムのブラックボックス化、経営層のDX理解不足、データ活用の遅れ――。さまざまな問題が複合的に進行する中、このようなリスクを乗り越えるには、企業が今すぐDX化の変革に踏み出すことが求められています。本記事では、「2025年の崖」の具体的なリスクや経済産業省が提言する解決策、DXを支える人材育成のポイントまで、わかりやすく解説します。

※ 記事制作時の情報です。

1.2025年の崖とは?意味と背景をわかりやすく解説

「2025年の崖」とは、経済産業省が2018年に発表した「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的展開~」 (注1) において提起された、日本企業直面する深刻経営リスクを表す言葉です。本レポートでは、多くの企業が1990年代から2000年代初頭導入された、レガシーシステム依存し続けている実態警鐘が鳴らされました。

具体的問題となっているのは、システム老朽化維持管理費高騰、IT人材高齢化若手人材不足クラウドやAIといった新技術への対応の遅れなどです。これらの問題が積み重なることで、2025年を境に企業競争力が大きく損なわれてしまい、日本全体経済にも深刻影響を及ぼすと指摘されています。

つまり、「2025年の崖」は、単なるシステム更新問題ではなく、経営技術人材のあらゆる面で“変革しなければならない時期”を象徴する社会課題だといえるでしょう。

1-1. 「2025年の崖」がもたらす甚大な影響


日本地図と経済指標の折れ線グラフが示す、経済の下降傾向のイメージ画像

「2025年の崖」がもたらす影響は、一部大企業やIT業界のみでなく、中小企業個人にまで影響が及ぶ可能性があります。

大企業では、複雑化巨大化したレガシーシステム業務の足かせとなり、新たなサービス開発市場変化への対応に遅れをとるリスクがあります。グローバル企業との競争で大きな不利を被ることにもなりかねません。

一方中小企業地方企業では、DXの推進必要予算人材不足しているケースが多く、変革第一歩を踏み出せない可能性があります。その結果業務効率低下顧客離れ、人材流出といった経営課題表面化するでしょう。

個人事業主フリーランスにとっても、取引先企業がDXに遅れて業務非効率なままであれば、発注機会が減ったり、業界全体縮小したりすることも考えられます。

2.「2025年の崖」がもたらす7つの課題

「2025年の崖」の具体的課題は、「DXレポート」で指摘されています。

ここでは、企業直面する7つの主要リスク整理し、それぞれの具体的影響について解説します。

2-1. システムの老朽化とブラックボックス化

多くの企業では、1990年代から2000年代初頭導入されたレガシーシステムを今もなお使い続けています。
JUAS (一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会) の調査によれば、企業の約8割がレガシーシステムを抱えており、そのうち約7割が「デジタル化の足かせになっている」と回答しています (注2) 。また、「DXレポート」では、このままレガシーシステム維持された場合、2025年までに導入年数が21年以上経過したレガシーシステムは、全体の6割になると言及されています。

役8割の企業が老朽システムを抱えており、約7割の企業が、老朽システムが、DXの足かせになっていると感じている。出典:一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会「デジタル化の進展に対する意識調査」(平成29年) を基に作成

さらに、長年にわたって各業務への個別カスタマイズが繰り返されると、システム複雑化・ブラックボックス化が進行し、全体構造把握できない状況に陥りがちです。システム障害法制度変更への対応にも多大コスト時間を要するため、企業柔軟性競争力を大きく損なう要因となっています。

2-2. IT予算を「攻めの投資」に回せない

前述のとおり、レガシーシステム残存している企業では、IT予算大半既存システム維持管理に使われています。経済産業省調査では、約8割のIT予算保守運用に費やされているとされ、データ活用クラウド移行といった新たな付加価値を生み出すための「攻めの投資」に十分資金を回せないのが実情です。

こうした状態が続くと、技術的負債蓄積し、企業革新的成長を阻む要因となります。結果として、市場での対応の遅れや競争力低下などのリスクが高まります。

2-3. IT人材の高齢化・属人化と若手の人材不足


「DXレポート」によると、レガシーシステム保守運用を担ってきた社内技術者は、すでに高齢化が進み、若手人材不足深刻化しており、2025年までにIT人材不足が約43万人まで拡大すると言及されています。また、レガシーシステムは多くの場合文書化されていないノウハウ依存しているケースが多く、特定人物しかシステム理解対応できない という「属人化」が深刻問題となっています。

このまま世代交代が進めば、技術継承が行われずにノウハウが失われ、障害発生時迅速復旧ができないなど、事業継続性直結するリスクを抱える可能性があります。

加えて、長年同業務を担ってきた現場技術者の中には、ビジネスプロセスをすでに確立していることから、新たな技術業務フロー導入に対して抵抗感を持つケースも見られます。こうした現場からの抵抗は、最新テクノロジー導入を進める上での障壁となり、DXの実現困難にする要因のひとつとなっています。

木製のブロックと線でつながれた人のアイコンが描かれたネットワーク図のイメージ画像

2-4. 経営層のDX理解不足により本質的な改革が進まない

DXは単なるITの導入ではなく、ビジネスモデル組織そのものを根本から再構築する変革プロセスです。しかし、現実には新しいツールを入れたことをDXと誤解し、経営層がその本質的意味十分理解しないまま取り組みを進めている企業が少なくありません。

表面的デジタル化にとどまらず、本質的変革を進めるためには、経営層旗振り役として明確ビジョン意思決定を示すことが大切です。

2-5. ベンダー依存により、自社で進捗や品質管理ができない

自社内にITやプロジェクトマネジメントスキル蓄積されていない企業では、システム構築をすべて外部のIT企業 (ベンダー) に委託しがちです。その結果自社進捗品質管理できず、トラブル発生時には責任所在曖昧になるという構造的問題が生じます。

さらに、運用に関するノウハウ技術的知見社内に残らないため、将来的なDX推進の妨げにもなります。

2-6. データ分断が進み、全社的な情報活用が進まない

レガシーシステム影響各部門業務ごとに独自システム導入し、次第システムブラックボックス化が進行すると、部門間データ共有されず、社内情報断絶サイロ化」が生じてしまいます。

このような状態では全社的情報活用が難しくなり、経営判断必要データが集まらないため、DXの基盤であるデータドリブン経営実現も遠のいてしまいます。

2-7. セキュリティ・災害リスクの増加

老朽化したシステムほど、サポート終了アップデート未対応によるセキュリティ脆弱性を抱えやすくなります。また、サイバー攻撃自然災害などの非常事態に備えたバックアップ体制や、復旧手順が整っていないケースも少なくありません。

セキュリティ対策が整っていない状態で、攻撃システム障害発生すれば、情報漏えいや業務停止などの深刻経営リスク直結します。

3.「2025年の崖」を克服する6つの解決策

経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」では、日本企業が「2025年の崖」を克服するために取るべき具体的な6つの解決策提示されています。
以下に、DXレポートに基づいた対応策解説します。

3-1. DX推進のためのガイドラインを策定する


ペンでチェックマークをつけながら、書類とポリシーを確認しているイメージ画像

企業がDXを進める際には、基本方針設定不可欠です。

「DXレポート」では、「DX推進システムガイドライン(注3)策定提言しています。これは経営者取締役会株主などがDXを推進する場合チェックポイントを示したもので、コーポレートガバナンスやIT経営評価とも連動する指針となります。

3-2. ITシステムの「見える化」指標と診断スキームを構築する

経営者自身がIT資産状態把握するための「見える化」指標整備と、中立的診断スキーム整備されていることが重要です。

老朽化複雑化したレガシーシステム常態化していると「なにが問題で、どこから手をつけるべきかわからない」といった状況に陥りやすくなります。そのため、技術的負債データ活用状況組織実行力客観的評価判断できる仕組みを整えることが求められます。

3-3. システム刷新におけるコスト低減策を策定する

システム刷新には、多くのリスクコストが伴います。

コスト低減対策としては、刷新前不要システム廃棄軽量化徹底し、マイクロサービス導入検討することが有効です。また、業界課題ごとに共通プラットフォーム構築してコスト分散や、税制支援などの公的支援活用推奨されます。こうした取り組みにより、効率的システム刷新コスト削減実現できます。

3-4. ベンダー企業と共創・協業する

日本企業は、ベンダー企業との関係従来依存型から、対等協働できる関係転換する必要があります。システム・ソフトウェア開発内製化を進めつつ、アジャイルやDevOpsを採用し、柔軟対応力を高めることが求められます。

具体的には、ユーザー企業不足している技術知見プロジェクトマネジメントスキルベンダー企業補完し、逆にベンダー企業ユーザー企業業務プロセスビジョンを深く理解することで、より本質に迫った提案可能になります。必要に応じて、出向ハイブリッド開発体制などの柔軟連携方法検討するとよいでしょう。

こうした協働を通じて新たな価値創出し、長期的協力関係を築くことが、持続可能なDXを実現する鍵となります。

3-5. アジャイル開発に対応した契約モデルを整備する

DXの実現にはスピード柔軟性が求められるため、あらかじめ全工程を決めて進める従来の「ウォーターフォール型開発」では限界があります。

「DXレポート」では、こうした現状を踏まえ、アジャイル開発共同設計に適した契約モデルへの見直しが提言されています。例えば、進捗に応じて仕様変更可能とする「段階的契約」や、実際成果に基づいて報酬が決まる「成果連動型契約」など、開発現場実態に即した仕組みが必要とされています。
また、プロジェクトにおけるトラブルへの備えとして、ADR (裁判外紛争解決手続) を契約内容に含めることも推奨されています。

3-6. DX人材を育成・確保する

DXを持続的推進していくには、IT人材育成確保不可欠です。
「DXレポート」では、アジャイル開発実践を通じながら、事業部門人材がITスキルを身につける環境整備していくことが提案されています。
また、必要スキル明確定義した「スキル標準」や学び直し、「第四次産業革命スキル習得講座認定制度」(経済産業大臣認定を受けたうえで、厚生労働省の定める基準を満たし、厚生労働大臣指定を受けた講座は、受講料最大7割を給付) と連携した取り組みなど、人材育成仕組みや教育基盤整備することも欠かせません。

4.DX人材の育成方法

DXを本質的推進していくためには、最新のITスキル業務変革視点を持つ「DX人材」の存在不可欠です。

具体的育成方法を3つの視点から整理し、現場における実践的アプローチ紹介します。

ビジネスの場で握手を交わす3人のビジネスマンのシルエットのイメージ画像

4-1. 守りの人材を「攻めのIT領域」へシフトさせる

保守運用業務長年従事してきたIT人材は、業務への深い理解ノウハウを持つ貴重戦力です。

こうした人材クラウドデータ活用、AIといった「攻めのIT領域」に再配置することで、変革中核を担う「DX人材」への転換可能となります。

4-2. 現場でDXスキル獲得する

アジャイル開発事業部門社員参画することで、ITスキル実践の中で身につけられます。
このような「現場で育てる」スタイルは、座学中心研修よりも実務直結しやすく、組織全体デジタル理解効果的底上げする方法として注目されています。

KDDIでは、デジタル人財育成一環として「実践型DXプロジェクト」を実践しています。

4-3. スキルマップと社内認定制度で人材育成を「仕組み化」する

属人的人材育成ではなく、スキルマップ企業社内独自に定めた認定制度によって人材育成を「仕組み化」することも重要です。

スキル定義評価基準明確になれば、成長ステップ可視化され、人材自律的学習企業計画的育成両立可能になります。

以下記事ではデジタル人財育成トータル的に支援するKDDIの取り組みについて紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

5.企業がDX推進する際の3つの注意点

「2025年の崖」を乗り越えるためには、企業によるDXの推進が欠かせません。ここでは、DX推進現場でありがちな3つの注意点について説明します。

5-1. 「形だけのデジタル化」に終わらないようにする

DXという名のもとにシステムツール導入しても、既存業務プロセス組織構造を変えないままでは意味がありません。

紙の書類電子化しただけ、ハンコをなくしただけ、というような「形だけのデジタル化」では、本質的価値創出にはつながらず、かえって現場混乱を招くこともあります。デジタル化はあくまで手段であることを理解し、業務そのものの再設計セットで考えることが大切です。

5-2. 成果が出る前に評価を急ぎすぎない

DXは、中長期成果見据えるべき取り組みです。短期的成果やKPIにこだわりすぎると、「効果が見えない」「うまく進んでいない」と判断され、取り組みが頓挫してしまうリスクがあります。

初期段階では費用対効果も見えにくく、予定どおりに進まないことが多いため、DXは小さな実験を重ねながら改善を進める「仮説検証型」のアプローチ効果的です。

この際、成果評価するタイミング非常重要です。早すぎると十分効果が得られず、遅すぎると改善機会を逃すことになります。したがって、適切タイミングでの評価柔軟見直しが、最終的成果左右します。

5-3. 社内で危機感や目的意識を共有する

DXが進まない背景には、社内での目的意識危機感共有不足が少なくありません。担当者一部部門必要性を感じていても、他の部門経営・マネジメント層が「困ってない」と感じていると、温度差が生まれ、プロジェクト進行が妨げられることがあります。

全社変革推進するためには、「なぜ今DXが必要なのか」「DXを行わなければどうなるのか」といった未来像危機感を、全社員共有することが必要不可欠です。

6.まとめ

「2025年の崖」の問題放置すれば、競争力低下事業継続危機につながりかねません。今こそ、企業はDXを経営全体課題として捉え、全社的変革に取り組むことが求められています。適切現状把握段階的改革確実に進めることで、企業全体対応力向上し、急激環境変化にも柔軟適応できる組織基盤が築かれます。今後経営戦略を考えるうえで、「2025年の崖」への対応は避けて通れないテーマなのです。

KDDIはDXの実現を多種多様なサービスでサポートします

KDDIは戦略立案からシステム構築人材育成までを一貫して支援し、企業のDX推進幅広サポートしています。働き方改革業務生産性向上支援する「コーポレートDX」、デジタルの力で経営課題社会課題解決する「ビジネスDX」、さらにこれらを円滑に進めるための「事業基盤サービス」(データセンター・コールセンターなど) に取り組み、お客さまのビジネスサポートしています。

2024年5月に始動したAI時代の新たなビジネスプラットフォーム「WAKONX」は、KDDIの顧客基盤、AI、クラウド大規模計算基盤、さまざまなネットワークなどのアセット活用し、日本企業デジタル化を加速させ、お客さまの事業成長社会課題解決支援します。

DXをご検討の方は、KDDIにぜひご相談ください。


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