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2024年の法改正で抑えておきたいのが、電子帳簿保存法・インボイス制度・残業規制の強化 (働き方改革関連法) の3点です。
これらの法改正が中小企業に与えた影響について、法改正の概要と具体的な影響の2つの視点から解説します。
電子帳簿保存法改正の主なポイントとその影響は、以下のとおりです。
法改正に伴い、電子取引データの保存が義務化されました。中小企業だけではなく、ほぼすべての事業者が対象となります。
電子帳簿保存法には「電子帳簿保存」「スキャナー保存」「電子取引」の3つの区分があり、このうち「電子取引」についての義務化が今回の改正により義務づけられました。
電子取引データの保存には、以下の4つの要件を満たす対応が必要になります。
電子帳簿保存法のこれらの要件を満たすには、タイムスタンプの付与や検索性の確保ができるシステムなどの活用が一般的です。これまでは電子保存の際には事前申請が必要だったシステムの導入ですが、今回の法改正で事前申請制度が廃止され、選定の自由度も大きく広がりました。
万が一義務違反があった場合は、青色申告 (注2) の取り消しや追徴課税 (注3) などの罰則を科せられることになります。またそれ以前に、法への対応を怠れば、事業の運営に支障をきたすおそれがあることも事実です。法改正によって帳簿保存を紙中心で行ってきた企業においても、デジタル化への対応が求められました。
一方で、税務申告に必要な事務処理はアナログに比べて容易になるため、申告負担の大幅な軽減が可能です。取引データの電子化によって日常業務の事務処理も行いやすくなり、事業全体の効率化を図れるなど良い影響もあるでしょう。
続いて、インボイス制度の概要と影響を見ていきましょう。
インボイス制度とは、複数税率の計算による請求書作成の誤りや不正を防ぐことを目的とした、消費税申告を正しく行うための制度です。正式名称を適格請求書等保存方式といい、インボイス対応には事前の事業者申請と、適格請求書 (インボイス) の保存が必要となります。事業者申請を行えば適格請求書 (インボイス) の発行ができ、そのうえで請求書保存義務などの要件を満たせば、控除を受けることが可能です。
一方でインボイス登録をしない場合は、控除を受けとることができません。取引先のインボイス登録状況によっては事業に支障をきたす場合もあるため、今後の取引を見据えた対応が必要となるでしょう。
インボイス制度で適格事業者になる場合の影響として、まずは法対応に伴う事務・経理作業負荷の増大があります。適格事業者には適格請求書の保存が義務づけられているため、適格請求書の内容チェックや分類に手間がかかることが一般的です。通常業務への影響を最小限にするためには、電子帳簿保存法と合わせて対応できる、請求書電子化システムの導入も良策でしょう。
また、適格事業者が免税事業者から仕入れを行う場合、法対応しなければ仕入税額控除の適応が受けられず、消費税分の負担がかかることになります。そのため、各取引先のインボイス登録状況を整理したうえ、サプライチェーン全体に対する取引条件見直しの打診も必要です。一方で適格事業者にならない免税事業者である場合は、法対応への負担は軽減されるものの、適格事業者との取引が減る影響がみられました。適格事業者にならない場合も法改正後の取引に向けた調整の実施など、法対応と経営方針の擦り合わせが求められることとなりました。
残業規制強化 (働き方改革関連法)の概要と影響は、以下のとおりです。
中小企業に対しては、2020年4月より時間外労働の上限規制が設けられましたが、2024年4月の改正では該当の対象事業・業務の適用範囲が広げられました (注4) 。
新たに対象となるのは、これまで5年間の猶予期間が与えられていた、以下の事業や業務です。
時間外労働の上限規制とは、時間外労働の上限を、原則月45時間・年360時間までとする法律規定です。これまでは大臣指導による上限のみ設けられていましたが、今後は法律で厳格に規制されることになります。2024年4月の改正によって適用範囲が広がり、ほぼすべての事業・業務において法に基づいた労働者管理の実施が必要となりました。
残業規制の強化に伴い、AIやIT活用が進んでいない労働集約型の現場においては、シフト管理方法の見直しや勤務時間の調整などが必要になります。また、時間外労働の上限が厳格に決められているため、新たな労働力不足が露呈することも少なくありません。複雑化する労働者管理を上手く調整できるよう、効率のよい運営体制の確立が求められます。
ここからは、上記に併せて知っておくとよい法改正の主なポイントと、影響について、一部業界をピックアップして解説します。
工場への省エネ設備設置や導入にコストがかかることが、法改正による顕著な影響です。すでに設備設置をしている場合も、環境規制に対応しているものであるかを含めた、事前確認が必要になります。これから省エネ設備を導入する場合は、設備選定にかかる人的コストと設備コストを考慮しておくことが大切です。
また、残業規制強化(働き方改革関連法) によって労働力不足が明らかになった場合は、新たな採用や人手不足を補うITサービスの導入など、法改正に向けた対策も必要になります。対策とともに製造の効率化を図れるよう、体制の見直しを検討することも良策でしょう。
景品表示法改正に伴い、販売・在庫データの管理をより正確に的確に行う必要があるため、これまでに比べて管理や体制見直しの負担が増加することが予想されます。景品表示法への理解を組織全体で深めるとともに、効率の良い運用体制の構築が求められるでしょう。あわせて、法改正による顧客対応時のトラブル防止対策も重要な課題です。新たな対応マニュアルの作成や体制の整備にも、時間を割くことをおすすめします。
このほか、電子帳簿保存法や残業規制強化 (働き方改革関連法) への対応・調整も必要となるため、法対応を助ける SaaSシステムなどを上手く活用したいところです。法対応を行うべき範囲が非常に広くなるため、業務フローや人員の見直しなどを含む、組織全体の効率化を図るのにもよい機会となります。
物流業に関連する主な法改正としては、トラックドライバーなどにも適応される残業規制強化 (働き方改革関連法) (注4) が挙げられます。ドライバーを対象とした年間時間外労働時間の上限を960時間とする上限規制は、物流業界が抱える大きな課題です。2024年4月より本格施行となったこの法改正は、業界を中心に2024年問題とも呼ばれ注目されてきました。
このほか、2024年10月1日より道路運送法の見直し (注7) が実施され、自動車運送事業者に対する行政処分の基準改正や、酒気帯び運転に対しての処罰が厳格化されました。このほか、電子帳簿保存法への対応として、運送契約書や請求書のデジタル管理が求められています。
ネットショッピングなどの増加により物流量が増える一方で、2024年問題や道路運送法などの法改正によって労働時間の適正化が進み、さらに人手不足が進んでいます。ドライバー不足への対応策として、運行の効率化は必須事項となるでしょう。
また、電子帳簿保存法への対応策として、運送契約書や請求書のデジタル管理が可能な SaaSシステムなど、事務作業を支援するツールの導入も検討したいところです。より効率的な事務処理と運行管理体制の確立や、業務効率化の見直しにもよい時期だといえるでしょう。
法改正に伴い、より環境や安全性に配慮した施工が求められるため、新たな建材の確保や方針の策定が必要となる場合があります。2025年には耐震基準変更もあるため、今後の法改正を見越した各法規定の再確認や工事の進行スケジュールの調整など、早期の対応が良策です。工法を変更するなどの対応も必要となるため、柔軟に施工できる体制づくりにも注力する必要があるでしょう。
また、法改正に対応しつつ施工を進めるためには、人材確保と安全管理の強化は必須事項です。勤怠管理や事務処理などはITサービスなどを活用し、業務負荷を減らし、現場の採用に注力することも人材不足解消の一手となります。今後の法改正を見据えたうえで、IT技術を活用した業務効率化にも着手し始めたいところです。
直近の法改正の概要と対応策をご紹介しましたが、対応漏れや見直しが必要なポイントは見つかったでしょうか。特にほぼすべての中小企業で対応が必要な「電子帳簿保存法」と「インボイス制度」、「残業規制強化」については、未着手の場合はできるだけ早期の対応が必須です。請求書などのデジタル化や、残業時間管理をサポートするSaaSの導入を行えば、法対応の負担も軽減されます。あわせて業務効率化を図ることもできるため、法対応後の体制を見直しとしても良策です。
また、直近の法改正を振り返りつつ、今後の法改正への対応を見越して、SaaSシステムなどを活用した、中長期的なデジタル戦略を事前に計画しておくことをおすすめします。AIやIT技術によって働き方も大きく変わりつつある昨今。デジタルの効果的な活用を含めた法改正への対応が、事業を後押しする原動力となります。