このページはJavaScriptを使用しています。JavaScriptを有効にして、または対応ブラウザでご覧下さい。

閉じる
閉じる
Smart Workコラム vol. 33

改正電子帳簿保存法でどう変わる?
帳簿と書類の保存方法

2022 7/1
2022年1月から施行開始となった改正電子帳簿保存法(以降、改正電帳法)。
その規定により、あらゆる企業のビジネス取引に関わる書類の取り扱いが大きく変わろうとしています。
何がどう変わるのか、どんな備えが必要なのか、いつまでにやらないといけないのかをITの知識も豊富な杉山会計事務所 税理士 杉山 靖彦 様に伺いました。
※ 記事内の社名、部署名、役職は取材当時のものです。

改正電帳法が定める3つの保存方法

改正電帳法は、企業などからの納税義務適切履行確保しつつ、帳簿や書類保存負担軽減するべく1998年から施行が始まった法律です。その後のテクノロジー事情を鑑み、数度改正を経て2022年からの施行法では、タイムスタンプ要件見直しなど一部要件緩和され、企業事務負担軽減する方向での改正がなされています。

ただ今回改正電帳法では、対応必要になるのは、電子帳簿導入希望する企業だけではありません。
中堅・中小企業を含むあらゆる働く人たちが関係する改正内容となっています。新制度はすでに2022年1月から始まっていますが、2021年末までの対応が難しかった企業配慮し、2年間猶予期間設定されているため、完全運用企業に求められるのは2024年1月からとなります。具体的改正電帳法において求められていることは、以下の通り3点となります。

  1. 電子帳簿など保存電子的に作成した帳簿や書類をデータのまま保存することができる。
  2. スキャナ保存紙で受領・作成した書類を画像データで保存することも認められている。
  3. 電子取引電子的に授受した取引情報はデータで保存しなければならない。

ここでの帳簿とは、決算書類 (貸借対照表損益計算書) 、主要簿 (仕訳帳総勘定元帳)、補助簿 (現金出納帳仕入帳売上帳など) が該当します。
一方書類該当するものは、資金や物の流れに直結連動するか否かで大きく重要書類契約書領収書請求書納品書など)と一般書類 (⾒積書注文書検収書など) に分類できます。

今回改正ポイントは、「電子電子、紙は紙か電子」になったことです。
まず、3番は選択余地なく、必ず電子保存するように求めています。「電子は紙か電子」から「電子電子」に変わったわけですから、これに該当するものを紙に印刷し、保存してはいけません。
また、2番はわかりやすく「紙は紙か電子」に当てはまります。要注意は1番でしょう。これを読んで、「書類印刷しなくてもよくなった!」と判断するのは早計で、これも場合によっては3番の「電子電子」に該当するケース発生します。
例えば、業務必要な本を個人クレジットカード購入を立て替え、後から経費精算処理するケースがあります。改正前は、ECサイトで何かを購入したときの領収書印刷し、経理提出していたことと思います。その書類経理部門保存していたわけですが、このやり方は認められなくなります。

これらの変更を踏まえ、今後対応を考える上で必要になるのは、紙と電子の2つの業務フローをどのように運用するのかの観点でしょう。紙を残す限り、現場業務負担確実に増えてしまうことは容易想像できます。となると、電子データ保存一本化する方向業務見直すことが現実的ではないでしょうか。


省スペース、検索の容易性、テレワーク可能…
法制度対応で得られるメリットは?

電子保存を進めるメリットは、大きく3つあります。


第一
に「保管コスト低減
紙で保存しなくてもよくなる分、省スペースになります。
これまでは税務的繰越欠損が10年まで認められることに関連し、企業は少なくとも10年分書類保存しなくてはなりませんでした。企業規模が大きくなれば、取引とそれに伴う書類も多くなります。
中には、法定期間を越えて全ての書類保管している企業もあり、膨大保管スペース維持コストがかかっていたことだと思います。
書類が多い企業ほど、保管コスト問題解決するメリットは大きいと言えるでしょう。もっとも過去書類法定保存期間がありますから、すぐに廃棄はできません。


第二
に「検索容易」なこともメリットです。
紙の書類大量にあれば、目当てのものを探すにも一苦労ですが、スキャナで読み込んだものはさておき、PDF形式ファイルであれば、文字列が埋め込まれていますから、「日付」「金額」「取引先」などでの検索容易にできます。
国税当局としては、大量スキャナ保存ファイルを見せられて、どこに何があるかがわからないようでは困るわけです。その意味で、少なくとも中堅以上企業は、求めに応じて迅速検索ができるよう、PDF形式保存することが望ましいと考えます。


第三
に「どこからでも参照可能」なことです。
紙の場合物理的保管場所に行かなければ、書類を見ることができません。電子化されていれば、自宅からでも外出先からでも参照できるので、テレワークとの相性抜群です。

よいこと尽くめに見える一方で、懸念事項もあります。それは何と言っても、これからの対応ノウハウ蓄積されていないことでしょう。「法改正はわかったけど、どこからどう準備すればいいのか?」と、多くの企業が困っているのは、自社に合うやり方を自分たちで試行錯誤しなければその方法を見つけられないからです。残念ながら、こうすれば良いというベストプラクティス確立されているわけでもありません。

加えて、会社規模が大きくなるほど、社員それぞれの感覚の違いにも配慮する必要があります。
冒頭要件を見て、「紙に印刷しなくていいんだ!楽になるな」と考える人がいる一方で、電子取引なのに「え?紙に印刷して保存しておくというのはダメなんだ!面倒になるな」と、正反対のことを考える人たちが出てきます。おそらく後者が多いと想像しますが、社員それぞれで受け止め方が全く違うことを前提に、感覚を揃えながらの試行錯誤必要になりますから、定着までには時間がかかると思います。
 

また、紙から電子データに変わることで、これまで想定していなかったリスクへの対応必要になるでしょう。紙が中心時代は、紛失リスク保管場所火事水害見舞われる災害リスクが主な懸念事項でした。
今後外部からの攻撃に備えることを含め、さまざまなセキュリティ対策を講じることも考えていかなくてはなりません。
例えば、どんな権限を持つ人がどのファイルアクセスできるのかを細かく設定できる権限管理機能を用い、「第三者がうっかりファイル上書きして消してしまった」などの事故防止する措置必要になります。


2つの保存要件を満たせるソリューションの選択を

リスクへの対策を講じつつ、メリット十分に得られる仕組みを作るには、理想経理部門リーダーになることです。経理部門がやりたいことを整理し、具体的実現手段をIT部門に考えてもらうやり方です。しかしながら、経理部門にITに詳しい人がいないと実現が難しいという問題はあります。よくあるのが、経理業務に疎いIT部門中心ツール導入し、ユーザーがとても使いづらい仕組みにしてしまうことです。これを避けるには、経理部門社内フローを考えながら設定ベース仕組みを作れるようなツールを使うことが望ましいと考えます。

ソリューション選定大前提は、改正電帳法が定める電子取引における「真実性要件」「可視性要件」の2つを確保した仕組みにすることです。別の言葉で言い換えると、前者は改ざんできない対策が講じられているか、後者は誰もが迅速確認できる対策が講じられているかを要求しています。この2つを念頭に入れた時、これから仕組整備に取り組む企業利用できるソリューションとして、以下のようなものが考えられます。
 

タイムスタンプ

タイムスタンプ

ある書類をいつ作成し、いつ更新したかを明確にする時刻証明機能で、真実性要件を満たす措置の1つになるソリューションです。
そもそも電子データでも、単純ローカルハードディスク保存するだけでは、その書類本物かを証明できません。
極端な話、パソコンの時計操作すれば、ファイル作成日操作することができてしまいます。
ですから、別途国税庁が認めたタイムスタンプサービスを使うなど、改ざんできない対策が講じられて初めて、ローカルハードディスクへの保存は認められるのです。


オンラインストレージ

オンラインストレージ

改ざん防止措置を講じた仕組みという意味では、オンラインストレージ検討すべき選択肢と言えるでしょう。
タイムスタンプサービスを使う以外にも、真実性要件確保する手段はあります。要するに、訂正削除記録が残る仕組み、あるいは訂正削除が全くできない仕組みであれば、問題ないのです。
ローカルハードディスク保存する場合とは異なり、オンラインストレージクラウド上でファイル保存するだけでなく、いつ誰が作成し、変更
参照ダウンロードしたかなどのファイルに関するあらゆる行動記録しています。管理者コンソールからログレポートで、保存場所に求められる真実性証明できますし、検索便利です。
つまり、2つ目の「可視性要件」も確保できることになります。
さらに、権限設定機能利用すれば、承認ワークフロー設計することも可能です。


ワークフロー

ワークフロー

中堅規模企業ともなれば、社内稟議プロセス運用しているはずです。いつどんな書類がどんな経緯承認されたのか、手続きの全てが記録されるので、法要件を満たすことができます。帳簿取引関係する書類保存方法に関する法規制対応が求められていることから、ワークフローベンダー会計システムベンダー対応強化している領域です。

経理が取り組みのリーダーになる場合は、利用中会計システム経費精算システム対応状況確認してみることです。留意点もあります。例えば、有給休暇申請など、他の部門が別のワークフローツールを使っていることがあります。ユーザーは、財務会計経費精算労務管理と、目的に応じてツールを使い分けなければならず、使い勝手改善する仕組みを別途検証する必要が出てきます。

一方ワークフローツールを使う場合前述オンラインストレージワークフロー作成する場合は、いずれもどんなフローにするか、承認ルールシステムに落とし込む準備必要になります。


電子契約

電子契約

冒頭で述べたように、契約書重要書類分類されますから、経理が扱う帳簿書類とは別に法務部門管理していることだと思います。電子契約ツールにもタイムスタンプ機能が付いていますし、締結までのフロー記録していて、検索機能にも優れているので、法要件を満たしたソリューションと言えるでしょう。


これから取り組む場合はインボイス制度への対応も同時に

改正電帳法完全運用開始は2024年1月からではありますが、基本的オンライン取引関係するものは、全て法対応対象となります。確実に言えるのは、現状のままではいられないと言うことです。猶予期間はまだ残されていますが、整備がまだ終わっていない場合は、社内承認ルールプロセス見直しから始めることをおすすめします。

もっと言うと、個人的には2023年10月から始まるインボイス制度への対応に合わせ、同時対応することが負担を減らすためにも良いと思います。インボイス制度でも、取引証憑保存に関する厳密規定がありますから、こちらに対応するにもリソース必要となります。何より、改正電帳法への対応期限が2023年12月末インボイス制度への対応期限が2023年9月末と、3カ月しか変わらないわけです。だとすると、2023年9月末目指し、同時並行準備を進めた方がいいというのが私の見解です。

これから取り組むからこそ、できるだけ負担の少ないやり方を選択することが必要です。リソース制約があるならなおのこと、両方対応するアプローチをお勧めします。

プロフィール

杉山 様

杉山 靖彦 様

1967年東京生まれ、早稲田大学卒

1994年マイクロソフト株式会社 (現日本マイクロソフト株式会社入社
営業経理を経て、 1995年より製品マーケティング部門でOfficeとPowerPointのプロダクトマネージャとして、Mac Office 4.2、Office 95、Office 97のリリース担当
1997年8月退社。​
1998年4月に会計事務所開業東証マザーズ公開会社タリーズコーヒージャパン株式会社取締役や監​査役歴任するほか、複数ベンチャー企業取締役監査役早稲田大学非常勤講師を勤​める。​

また、IT関連執筆活動展開している。著書に「『あるある』で学ぶ 忙しい人のためのパソコン仕事術」 (インプレス) など多数。​

最新のスマートワークコラム




ピックアップ