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カーボンニュートラル達成に向けIT活用は必須!  働き方改革が社会貢献につながる時代へ
Smart Workコラム vol. 39

カーボンニュートラル達成に向けIT活用は必須!
働き方改革が社会貢献につながる時代へ

2023 3/30
世界的な気候変動への対応に向け、近年よく聞かれるようになったのが「カーボンニュートラル」というキーワードだ。
カーボンニュートラルとは具体的にどのような取り組みで、企業は何をしなければならないのか。
サステナビリティ経営やESG投資に関するコンサルティング事業を手掛ける株式会社ニューラル 代表取締役CEOの夫馬 賢治 (ふま けんじ) 様に聞きました。
前後編に分けて、ご紹介いたします。
※ 記事内の社名、部署名、役職は取材当時のものです。

そもそも「カーボンニュートラル」とは?

―この数年カーボンニュートラルという用語ニュース新聞ビジネス現場でよく聞かれるようになりました。
 そもそもカーボンニュートラルとはどのような取り組みなのでしょうか。

まず前提である気候変動から説明しましょう。
日本では「温暖化」と言われてきましたが、その原因温室効果ガスということが科学的特定されています。
温室効果ガスとは、地表の熱を吸収して温室効果をもたらす二酸化炭素メタン一酸化二窒素フロンガスなどのこと。
これらが温暖化原因であることは「疑う余地がない」というレベルになっています。
その「温暖化による気候変動を止める」ための目標として「カーボンニュートラル」という言葉が出てきます。

カーボンニュートラルとは、経済活動を行ううえでどうしても排出せざるを得ない温室効果ガスについて、その排出を広い意味ゼロ (ニュートラル) にしようという取り組みです。広い意味とは、温室効果ガス排出自体ゼロにすることではなく、排出したガス森林植物吸収除去し、全体を差し引きゼロにすることです。


世界では「2050年までにカーボンニュートラル状態達成しよう」ということが国際目標となっています。

カーボーンニュートラルとは
カーボンニュートラルとは

—なぜ2050年なのでしょうか。

2015年のパリ協定で「2100年までに気温上昇を2度にとどめる」という目標採択されました。
これは1850年から1900年までの産業革命期の50年間気温平均値を0度と設定し、2100年にはそこから2度までの気温上昇にとどめるという意味です。
ですがその後、それでも2度の上昇では著しい社会的打撃予想されることから、2021年の国連気候変動枠組条約締約国会議 (COP) で「1.5度の上昇にとどめる」という目標に引き上げることが決まりました。

これを達成するためにシミュレーションをしていくと、2050年ごろに世界全体でカーボンニュートラル達成し、温室効果ガス排出量プラスマイナスゼロにしなくてはならないことがわかりました。
それ以降排出量より吸収量が多い状態にしなければ、気温上昇を1.5度にとどめられないんです。

そこで国際的に「2050年までにカーボンニュートラル達成」という目標が掲げられ、日本政府もそれに準じている形です。
2050年までのカーボンニュートラル宣言した国連加盟国は、2019年12月時点で121カ国だったのに対し、現在は140カ国以上となり、加盟しているすべての国のGDPを合計すると世界全体の91%に相当します。
 

カーボンニュートラルを表明した国
カーボンニュートラルを表明した国

カーボンニュートラルを実現する
グリーントランスフォーメーション

カーボンニュートラル同時グリーントランスフォーメーションという用語もよく聞かれるようになりました。
 このグリーントランスフォーメーションとはどのような概念なのでしょうか。

カーボンニュートラルが「気温上昇気候変動を止める」ということのゴールだとすると、グリーントランスフォーメーション手段といえます。トランスフォーメーションとは大規模抜本的変革意味しますが、なぜグリーントランスフォーメーションと言われるかといえば、並大抵努力では2050年のカーボンニュートラル達成し得ないからです。

達成が難しいその理由は何か。産業革命期以降経済急激成長が起こって社会が豊かになり、それに連れて排出量が増えてきました。さまざまな途上国もこれからまさに経済成長期を迎えようとしています。こうしたことを考えると、これまでの努力では気温変動太刀打ちできません。

産業のあり方自体抜本的変革させない限り、カーボンニュートラル絶対達成できない。そこでカーボンニュートラルに向けて企業事業内容産業自体根本から変えていく取り組みを「グリーントランスフォーメーション」と呼んでいます。

株式会社ニューラル 代表取締役CEO

夫馬 賢治 様

具体的にどのような取り組みなのでしょうか。

温室効果ガス排出量吸収除去量を差し引きゼロにするということは、まずこれまで当たり前のように排出してきた莫大温室効果ガス量自体を減らす必要があります。極限まで減らしたうえで、どうしても排出せざるを得ない分と同等吸収除去展開しなくてはなりません。

一例として電力を考えてみましょう。事業必要電気を使いながらカーボンニュートラル達成するには、温室効果ガス排出量がきわめて少ない電源トランスフォームすることが不可欠なので、たとえば太陽光風力発電のような再生可能エネルギーを使うことで「電気転換する」というやり方があります。

それ以外に「そもそも電気を使わなくても済む状態に変えていく」ということもグリーントランスフォーメーションになります。排出量ゼロ、もしくはきわめて少なくて済むシステム仕組みを作り出すこともグリーントランスフォーメーションです。
非常に広い概念なので、いまお話しした以外分野でもグリーントランスフォーメーション必要になります。


脱炭素社会に向けた世界の動き・日本の動き

非常困難目標であるカーボンニュートラルですが、世界ではどのような動きをしているのか教えてください。

先ほども説明したように、世界のGDPの91%を占める国々でカーボンニュートラル国家目標として掲げられています。
これはつまり、「各国産業でグリーントランスフォーメーションをしていかなければならない状況になっている」と言い換えることができます。それは言うなれば、新たな産業革命を興すということです。使うエネルギー素材ビジネス提供仕方物流も変えていくレベル革命です。

そのためには資金必要です。そこで日本を始めとする各国では、研究開発のための政府補助金減税措置などで対応しようとしていますが、当然それだけでは足りません。金融機関投資家が持っている民間資金がグリーントランスフォーメーションに向かうよう、環境整備支援規制を作っているのが大まかな流れです。先進国だけでなく途上国でも同じような動きが始まっています。


—日本での取り組み状況はいかがでしょうか。

日本カーボンニュートラルという言葉が大きく広がったきっかけが、2020年10月に当時菅義偉首相が行った所信表明演説です。多くの方にとって予見しなかったタイミングで、「我が国は、2050年までに、温室効果ガス排出全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル脱炭素社会実現目指すことを、ここに宣言いたします」と表明
これを機に各省庁政策一斉にカーボンニュートラルに傾き、企業のカーボンニュートラル宣言も2020年10月から急激に増えました。それまであった地球温暖化対策推進法という法律改正され、2050年のカーボンニュートラル明記されました。

これによりカーボンニュートラル目指すことが日本政府責務となり、各省庁からの新政策加速しました。
2022年4月に再編された東証プライム市場上場企業に対して求められている気候関連情報開示もその一環です。
この開示ルールにより気候関連財務情報開示タスクフォース (TCFD) に基づく開示が求められるようになりました。


サプライチェーン排出量を構成する
Scope1、Scope2、Scope3

具体的企業カーボンニュートラル達成に向けて行うべき取り組みのなかで、Scope1、Scope2、Scope3というキーワードがあります。これはどのようなものなのでしょうか。

国際的に定められているGHG (Greenhouse Gas) プロトコルのことで、原材料調達から製造物流販売廃棄など一連事業プロセス全体から発生する温室効果ガス排出量定義したものです。これは世界共通です。

サプライチェーン排出量
サプライチェーン排出量

Scope1は自社排出している温室効果ガス直接排出量です。
自社燃料を燃やしてエネルギーを得ている際の直接排出がScope1に当たります。

Scope2は自社で使っている電気・熱です。電力会社から供給された主に電気使用に伴う間接排出です。

そしてScope3がScope2以外取引先からの間接排出です。
非常範囲が広いので15のカテゴリ分類されていますが、原材料調達であったり、従業員通勤出張であったり、商品輸送加工購入した製品サービスなど、取引先すべてにまたがる排出量を指します。

Scope3 15のカテゴリ分類とは

カテゴリ 活動例
1. 購入した製品・サービス 原材料の調達、パッケージングの外部委託、消耗品の調達
2. 資本財 生産設備の増設 (複数年にわたり建設・製造されている場合には、建設・製造が終了した最終年に計上)
3. Scope1,2に含まれない 燃料及びエネルギー活動 調達している燃料の上流工程 (採掘、精製など)
調達している電力の上流工程 (発電に使用する燃料の採掘、精製など)
4. 輸送、配送 (上流) 調達物流、横持物流、出荷物流 (自社が荷主)
5. 事業から出る廃棄物 廃棄物 (有価のものは除く) の自社以外での輸送 (注1) 、処理
6. 出張 従業員の出張
7. 雇用者の通勤 従業員の通勤
8. リース資産(上流) 自社が賃借しているリース資産の稼働
(算定・報告・公表制度では、Scope1,2 に計上するため、該当なしのケースが大半)
9. 輸送、配送(下流) 出荷輸送(自社が荷主の輸送以降)、倉庫での保管、小売店での販売
10. 販売した製品の加工 事業者による中間製品の加工
11. 販売した製品の使用 使用者による製品の使用
12. 販売した製品の廃棄 使用者による製品の廃棄時の輸送(注2)、処理
13. リース資産 (下流) 自社が賃貸事業者として所有し、他者に賃貸しているリース資産の稼働
14. フランチャイズ 自社が主宰するフランチャイズの加盟者のScope1,2 に該当する活動
15. 投資 株式投資、債券投資、プロジェクトファイナンスなどの運用
その他 (任意) 従業員や消費者の日常生活
  • 注1) Scope3基準および基本ガイドラインでは、輸送任意算定対象としています。
  • 注2) Scope3基準および基本ガイドラインでは、輸送算定対象外としていますが、算定いただいても構いません。
  • ※ Scope3の15のカテゴリ分類 (出典:環境省のウェブサイト) 外部サイトへ遷移します。

—Scope3の範囲は非常に広いですね。

そうなんです。自社努力だけではどうにもならない、他社排出量まで含めた削減策必要になります。
しかも報告ルールではScope1、2、3の排出量算出して開示しなくてはなりません。
そこで現在日本政府排出量算出方法提示しています。

ただ自社から見たときはScope3でも、その事業者にとっては自分自身のScope1、Scope2になります。
現在プライム市場上場企業のみに報告義務が課されていますが、サプライチェーン全体で取り組むべき問題ですから、自社排出量把握開示することはどの事業者にとっても必要なことだと思います。


企業は脱炭素社会の実現に向け何をするべきか?

—現在企業はどのように取り組んでいるのでしょうか。

基本的にはScope1と2をまずセット算出し、次にScope3の算出という順番で行い、現状把握することから始まります。
その後に、排出量削減できるところを見極めていきます。


—カーボンニュートラルの取り組みにあたって理想的な進め方があれば教えてください。

まずはScope1、2、3それぞれで排出量算出を行い、どの順番削減を進めていくか優先順位を付けます。
その際は排出量が多い分野で、そのための対策ソリューションが見えているところから手を付けていくことが効果的です。スケジュール感としては、日本政府が掲げている「2030年までに『2013年の排出量と比べて46%削減』」が目安になりますが、この目標全事業者対象なので、大企業は先んじて取り組む必要があります。ですので、大企業政府目標より高い数値目標を立てて進めていくとよいでしょう。

では具体的にどうやって削減を進めていくべきか。そこで特に期待されているのがITやデジタル活用です。


デジタル化がカーボンニュートラルの鍵となる

—ITの活用はカーボンニュートラル達成にどのように貢献できるのでしょうか。

たとえばテレビ会議導入して通勤出張負荷を減らせば、電車タクシーなど移動に伴う排出量を減らすことができます。紙文書電子化すれば、紙の調達に関わる製紙工場印刷工場間接排出量を減らせます。もちろん電気を使うことになるのでゼロにはなりませんが、実際移動するよりはるかに削減効果があります。このようにITを活用することで削減できる領域多数あるのです。

またITサービス提供する企業に目を向けると、通信も含めて電気消費量は増えていきます。それをカーボンニュートラル化していくには、サービス提供する際の電気そのものを再エネ化して排出量削減していったり、あるいは再エネ循環を回して排出量ゼロに近づけるという状況目指すことになります。そこまでをワンセットとしてカーボンニュートラルソリューションとなるでしょう。


—コロナ禍で加速したリモートワークや働き方改革がカーボンニュートラルにつながるわけですね。

そうですね。感染症対策としてのリモートワークではなく、カーボンニュートラルという文脈からその効果について理解が進んでいるのが現状だと思います。人が移動する時、徒歩自転車以外手段だと莫大エネルギーを要することになります。リモートワーク移動を減らせば大きな効果期待できます。実際米国では二酸化炭素排出量削減するため2010年ごろからテレビ会議活用が進んできました。

電子署名導入カーボンニュートラル一環といえます。コロナ禍で進んだ電子署名ですが、請求書1つだけで考えても、紙の出力配送などで大量エネルギー消費するので、電子署名に置き換えることでその分の排出量削減できます。


—カーボンニュートラルの達成においてデジタルの力が期待されているんですね。

IT化については排出量の見える化やリモートワークなどさまざまなレベルがありますが、近年特進化が進んでいるのがAIの領域です。ここまでいくと削減領域一気に広がると見られています。

たとえば電力についてもAIを使ってデータセンターサーバー最適に動かし削減につなげるといったことが期待されていますし、工場製造ライン排出される過剰な熱などもコントロールできるかもしれません。物流効率化需給予測精緻化なども非常に大きな削減効果が望めます。デジタル化やAIとカーボンニュートラル非常相性がいいんです。

いずれにしろ、ITを使わず大規模排出量削減を行うことは不可能でしょう。ITがそこで果たす役割非常に大きいと考えています。

企業デジタル化やリモートワーク社会貢献につながるのですね。貴重なお話ありがとうございました。
後編では、KDDIが実践するカーボンニュートラルの取り組みについてご紹介します。



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