働き方改革関連法案の施行により、今、日本では多様な働き方を重要視する声が数々登場しています。
背景には、フルタイムでの勤務がベストな働き方ではなかったり、台風や洪水、地震などの自然災害が発生したことでオフィスに集まることが困難だったり、直近では感染症の拡大を防止するためのテレワークが推進されているなどが考えられます。とはいえ、テレワークを行うことが初めての場合、なぜテレワークが必要なのか、テレワークを十分に推進するための方法など不安点が数多くあることでしょう。
今回は、テレワークの必要性や整備におけるポイントなどを解説します。
内閣府男女共同参画局によると、テレワークとは『ICTを活用し、場所や時間を有効に活用できる柔軟な働き方のこと』を指します。
個人の生活に合わせた働き方であると同時に、2020年に国内で感染者が多発している『新型コロナウィルス感染症』のような、危険性を示されている感染の拡大を防止する役割もテレワークにはあります。
特に、都会であればオフィスに通うために混雑する通勤電車やバスなどを乗り継ぐ人は多いもの。人との接触が増えると感染リスクが高まるとされ、危険を防ぐためには、テレワークによる在宅勤務を推奨するのが妥当とも考えられます。実際、新型コロナウィルス感染症対策本部からは、テレワークや時差出勤の推進の呼びかけがなされました (注)。
また、テレワークの推進は、レピュテーションリスクの回避にもつながります。感染症の拡大が危惧されている中での出社義務の保持は、従業員を危険な目に合わせるものだと判断され、大幅に企業の信頼を落とすこともあるからです。
企業側はテレワークの推進を行うことで、従業員やその家族だけではなく、周囲からの評価を守ることにもつながるかもしれません。
テレワークが企業にもたらすメリットは数多くあります。顕著なのは、優秀な人材の採用につながることではないでしょうか。今の時代、場所にとらわれずに働きたい、子育てや介護と両立しながら働きたいと望む人は多く存在します。
オフィスへの出社義務があることで、そういった希望を持つ人々の採用機会を逃す可能性もあります。自社に必要な優秀な人材を採用できない、離職率が上がるということにもなりかねません。
またテレワークによって柔軟な働き方が可能になると、すでに働いている従業員にもメリットがあります。来客対応や雑談などによって阻害されていた業務を集中して行えるようになり、業務効率が向上することも考えられます。
さらに通勤時間が削減されるため、今まで通勤に当てていた時間を別の趣味やリフレッシュなどに当ててワーク・ライフ・バランスを保つことにもつながります。
厚生労働省は、テレワークの整備にあたり、6つの分類とぞれぞれの留意点や内容をまとめています。
これを基に整理すると、テレワークの導入にあたって意識するべきなのは3軸となります。『セキュリティの見直し』『制度の整備』『ツールの整備』です。順番に見ていきましょう。
セキュリティの見直し
テレワーク時は、既存の社内ネットワークではなく、社外から社内情報にアクセスすることになります。この際、情報の漏えいを防ぐためのセキュリティの強化や、パソコンや社用スマートフォン紛失に対応するための、デバイス管理の見直しが必要です。
制度の整備
初めてテレワークを導入する際は、社内制度やワークフローなどの見直しをまず行います。業務時間の変更や、通勤・退勤申請の仕組み、業務時間管理など、企業や働く従業員によって、整えるべき制度はさまざまです。新しく制度を作る必要があるのかどうか検討します。
ツールの整備
テレワーク時には、オフィスで日々顔を合わせていた従業員ともチャットツールでコミュニケーションを進めます。そのため、社外のみならず、社内で活用できるツールの導入が必要です。
他にも、ファイルや資料の共有ツール、オンライン上で会議を行うためのツールなど、社外からでも日常業務が滞りなく行える、「Microsoft 365 with KDDI」「G Suite (TM)」など『グループウェア』を整えなくてはなりません。現在の業務のうち、何がツールを必要とするものなのか洗い出しながら、必要なツールを厳選します。
また、グループウェアを導入してテレワークを行う際、一番齟齬が発生しやすいのがコミュニケーションです。言葉足らずだったり、情報が正しく伝達できていなかったりと、慣れないことが初期は多いはず。
そのため、チャットツールで何気ない雑談をできる環境を作ったり、オンライン会議で顔が見える時間を作ったりと、ツールを駆使しながら快適な環境を生み出すことが必要です。
実践していく中で要望や課題が見えてくるので、全てを完璧に整えてからテレワークを導入するのではなく、随時整える心持ちでいるのがよいでしょう。
次回のコラムでは『中小企業が考えるべき従業員や関係者の安全確保』について、解説します。
日本企業にとって非常時の対応策は、事業継続のために欠かすことができない最重要経営課題です。非常事態発生時の対応策についてご紹介します。